ブッチャーズ・クロッシング(ジョン・ウィリアムズ、布施由紀子[訳]/作品社)
火星の人(アンディ・ウィアー、小野田和子[訳]/ハヤカワ文庫SF)
- 読書メモ(18)
- 19世紀アメリカの大自然での経験
- 火星にとり残されたら、どないしたらええねん
- おススメ度:★★★★☆
【どうでもいいお知らせ】
最初にお知らせからです。個人的な事情により、しばらくブログ書きの時間が取りにくくなったため、しばらく(2~3ヶ月くらい)の間、簡単な感想のみになります。本は読んでるのですが、長い感想が書けないというだけです。もしかしたら、本の感想どころか、まったく関係のない話題について書くかもしれません(アニメや競馬や音楽などについての感想)し、休むかもしれません。
というわけで、(本当に)どーだっていいお知らせでした。
【大自然でバッファロー狩りに向かう青年】
『ブッチャーズ・クロッシング』は、19世紀のアメリカが舞台です。自然にあこがれたアンドリューズという青年が、とんでもなくスケールのでかい大自然に思いもよらずに直面して、最後には大人になることが示唆されるという読み方もできる作品です。四人の(癖のあるものを含む)男たちが、バッファローの群れを見つけに行くわけですが、その道中は、冒険小説と読むこともできます。エンタメ的なものとして読むこともできるということです。小説というのは、やはりエンタメ要素もなければおもしろくないですし(あくまで、エンタメとして読もうと思えばできるというだけです)。
圧巻は、何といっても、バッファローの集団に出会ってから、それらを狂気のごとく淡々と大虐殺していくシーンでしょう(そうするのは一人だけなのですが)。そして、そのあとのバッファローの皮剥ぎと解体を、アンドリューズが体験するところが読みどころです。彼のこの体験には、大自然に対するひとかけらの生命という対比を見てとりました。これが良かったです。この虐殺の光景は、「訳者あとがき」にあるように、幾通りもの解釈はできますが、まずはそのまま味わってもらうのがいいのではないかと思います。
ほんでもって、様々な自然の脅威に見舞われる一行なんですが、そこに何か超自然的なものを見たり感じたりすることはないように思いました(ひとりだけいるようですが)。例えばブラックウッド『ウェンディゴ(過去記事)』のように、大自然への怪異的な脅威を感じとることはありません。
そして、とある人物だけが、明らかにヤバイフラグをばんばん立てていて、それはわかりやすくておもろかった。
ところで、『ストーナー(Ama)』といい、本作品といい、近年になってこの著者が(再)評価されたのはどうしてなんだろう。そのことについて、あまり解説とかはされてなかったし、その理由を調べたことはないですが、どうして同時代に評価されなかったのだろう。全く見当がつかない。そのときには受け入れる素地がなかったのか。という割には、非常に読みやすい作品なんですがね。本作が唯一読みにくいのは、主人公の感情が、時にブレるようなかんじがあるような気がするんですが。急に、彼が(大人への)怒りをその身におぼえると書かれていて、その唐突さと理由の示されなさが、落ち着かない部分ではあったけれども、それはとくに何の瑕疵でもないし。よくわからん。『ストーナー』のよくある世評としては、平凡な男の一生とあるのですが、私からしたら、平凡どころか平凡以上だと思うんですが(むしろうらやましい)。『ストーナー』を平凡って言える人は、どんだけ非凡な生活を送ってんねん、と思ってしまうのですよ(読み違い)。しかしそれは欠点ではないし。もし、日本でこれらの作品が発見されて翻訳されていたら、おそらくアメリカよりも先に熱狂的に読まれたのではないのか、そうではないのかどうなのか。まあ、その日本では、過去の名作(売れた作品)を、その作者の死後しばらくすると忘れる傾向があるように思うのですがね。
【火星サバイバル】
この前の記事が長くなったので、『火星の人』については簡単に。この本は、3年前に読んだので、細かい内容は忘れてしまった。ただ、これが原作の映画『オデッセイ』を最近観たので、この映画の感想を含めて書きたいです。
『火星の人』は、火星に独り取り残されてしまった、植物学者マーク・ワトニーの話。映画版もおもしろかったが、原作のダイジェストといったかんじでした。映画を観て面白かった人には原作を是非ともよんでほしい。ベストセラーの域に入っているので何も書くことはないですが、SFが苦手だ、という人も楽しく読めるものになっています。
内容は、火星版ロビンソン・クルーソーですが、こちらは地球(人間)と交信できるという違いがあります。しかし、ロビンソンさんよりある意味絶望感はあるかもしれません。原作・映画とも、そのような感情はなさそうなのですがね。彼がどのように生き延びたかというところが読みどころですが、もうひとつは、近未来におきそうな感じの出来事というのもおもしろいです。
ところで、近年(2006年)になって、火星に塩の一種(硫酸塩)が発見され、かの地に海があったことが示されましたが、原作で、塩を作りだしていたかはおぼえてません。この本とは別に、火星に関する本(写真)を見ていると、色んな地形やらがあっておもしろい。人面岩や人魚の像とかあるらしい。ただし、ゴンドラ乗りの像とかはなさそうですが。
【さいごに】
どちらも、荒涼の地でのサバイバル的な面があります。『ブッチャーズ・クロッシング』は、『火星の人』よりも、やはりまだ身近な感じがします。『よりもい』を観たからでしょうか。
(成城比丘太郎)