- 掲示板の書き込みのまとめ
- 50篇の短編怪談集の体裁
- 怪談はどこから生まれるか?
- おススメ度:★★☆☆☆
本作はパラノーマルチャンネルという2チャンネルの書き込みのまとめサイトを運営者が、その書き込みの中から50篇を選んで、本の体裁にしたもの(Kindle版)で、いわゆる自主出版に近い。随分とセンセーショナルなタイトルなので、検索すると割と上位に表示されるが、中身は完全に掲示板の書き込みであるので、話の展開やオチはもとより、文体もバラバラで、果たして一つの作品として評価していいのかどうか、少し躊躇があった。
例えば、いくつかタイトルを挙げてみよう。「【不気味】踊る友人」、「ドッペルゲンガーを見てからお婆ちゃんがおかしくなった」、「クモババア」、「【心霊ちょっといい話】お稲荷様」などバラバラである。そうかと思えば、「放火殺人」「隣の奴がとにかくうるさい」「不気味な電話対応など普通の犯罪じゃないか」というタイトルから、「【笑える霊体験】幽霊にもいろんな奴がいる」というユーモアを題材にしていたり、良く分からない選び方だが、それだけ元の話が滅茶苦茶だということだ。
ただ、やっぱり取り上げてみようと思ったのは、今、有名になっている怪談や妖怪の話にしても、元は人のうわさ話や勘違いなどから発生しているものも多いと思う。そういう意味でいうと、これは怪談の「素材」を読んでいることになり、そういう意味では興味深い。
例えばわかりやすいので「クモババア」を例にとってみると、
なんとそれは、クモみたいに四つん這いで歩く婆さんだった。服装は農作業の時に着るような服で、頭に手ぬぐいを巻いている。
という描写があって、そのあとは、消息不明のお婆さんがいたという話と、その時怖かった、という印象が語られているだけである。正直に言うと、50篇最後まで読んだが、ほとんど内容を覚えていない。程度の差こそあれ、「現象」そのものはショッキングな題材が多いが、起承転結で言えば「起」か「結」しかないような内容なので、致し方ない。元が多数の人に読んでもらおうと思って推敲を重ねたような話ではないので、これは非難しないが、全体的にこの調子なので、必要以上に期待して読むとがっかりするだろう。
ただ、やはり怪談の発生源としては興味深いので、上記の「クモババア」にしても、キャラクターに肉付けをしていけば、ちょっとした短編怪談にはできるはず。また、作家的な作為的な部分がないので、却って「リアル」に感じるということはあるだろう。
とはいえ、しょせん素人の怪談風ゴシップなので、正直、管理人のサイトで元の怖い話を読む方がいいのではないかと、身も蓋もないことを考えてしまった。こうして考えてみると、人はとかく「恐怖」に支配されやすいものだと実感する。Kindle Unlimitedで読めるので、興味があれば暇つぶしにどうぞ、という程度の内容である。
※成城比丘太郎氏が所用のため、きうらの連投となっています。成城氏の批評を期待されていた方はあしからずご了承を。
(きうら)