- 孤独な殺し屋と不幸な少女の純愛ストーリー
- リュックベッソン奇跡の一本
- 主演二人の出世作
- おススメ度:★★★★☆
最近、やたらと古い映画が観たくなる。先日は「Shall we ダンス? [DVD]」なんて観ていたし「ロボコップ」なども、もう何回目になるか分からないが見直し、「やはりポール・バーフォーベンは偉大な変態紳士だ」と実感せずにはいられない。そういう流れで、本作の紹介に入る。
(あらすじ)凄腕だが、私生活は質素で孤独な生活を送っている謎の暗殺者・レオン(ジャン・レノ)、彼は少し「足りない」のをいいことに、町のマフィアにいいように使われている。一方、麻薬に手を出すチンピラを親に持ったマチルダ(ナタリー・ポートマン)は、ある日、家族を皆殺しにされ、隣の部屋に住んでいたレオンに助けてもらうのだが、彼女も「殺し屋」になりたいと言い出し……というストーリー。居間で堂々と観ていたら、子どもが怖がったので、家人に注意された。確かに、ゲイリー・オールドマンが散弾銃をぶっ放して冒頭から人を殺しまくるんだから、小学生が観ていい映画ではないだろう。
とはいえ、映画の主題はレオンとマチルダの心の交流なので、殺人シーンやアクションシーンはあくまでも必要な時だけ展開される。この映画の魅力は、凄腕の殺人者だが、子どものような純粋な心を持ったレオンと、大人びたマチルダの疑似的な親子と恋人の間の関係性に尽きる。両者とも、この演技しかないというほど「ハマった」演技をしており、ストーリーそのものはそれほど複雑ではないものの、ついつい見続けてしまう魅力がある。
それにしても今を時めくナタリー・ポートマンを見出したのが、リュック・ベッソン監督の最大の功績だろう。彼の映画は後に何作も観たが、この作品だけが特別で、あとはそれほど傑作揃いというわけでもないので、まさに三人が奇跡の融合を果たした一作と言える。こんなことを書いては怒られると思うが、監督もやはりある程度のロリコンであるのは間違いないだろう。WASABIで広末涼子を口説いたという話は有名だ。ある種の変態気質がプラスに作用して、本作のような「奇跡の一本」が生まれたと推測される。
特別編となっているのは、公開時にカットされたシーンが入っているためで、主に印象に残っているのは、レオンとマチルダの交流の場面だろう。これは後から考えると、なくてもいいかなと思わないでもないのだが、二人に感情移入している観客にとってはいいシーンかもしれない。最高に切ないラストシーンへの伏線となっているので、必要かもしれないが個人的にはやはりなくてもいい。
とにかく、男性視点で見ると、ナタリー・ポートマンの演技が素晴らしい。「タイガー・モス」号に乗り込んだラピュタのシータのように、時には大胆に、時には女性らしく振舞うさまは永遠にスクリーンの中に残り続けるだろう。今の自分が一番泣けるシーンは、冒頭のナタリーの「大人になっても人生は辛い?」という質問に「辛いさ」と答えるジャン・レノの何気ないセリフ。人生、本当にそうだよな。そういったディティールの良さも含め、いい映画だと思う。
「怖い本」的には結構直接的な殺人シーンがあるので、間違っても家族と一緒に見たりはしないほうがいいと思う。性的なシーンも若干ある。しかし、そんなナタリー・ポートマンも立派な女優になった。なかなか感慨深いものがある。
(きうら)