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まとめ

2019のまとめ【きうら編】

投稿日:2019年12月31日 更新日:

はじめに
今年も何となく振り返りの記事でも書こうかなぁ、と思って過去記事を読み返していると、時間の不確定さに驚いた。つい最近読んだと思っている本が春だったり、最近読んだ本を忘れていたり。時間とは滔々と流れるものではなく、強い変化が時間を支配し、私の記憶を形成している。創造性しか変化を生めないし、それは凄く主体的なものだとも思う。ホラーで始まった本サイトも様々な変遷を経て、わりと自由に記事を書いている。一時期、月刊3万ほどいらした訪問者も今は4,000人前後。どちらにしても、私を文字を書きたいし、読んでもらえるのは嬉しい。この文章を読んだ人にとって良きことがありますように。喜びこそが伝播しますように。ありがとう、感謝でいっぱいです。

怖い話も読んでいた

最近は脱線しているが、サイトを立ち上げた当時のコンセプトであるJホラーやモダンホラーもそれなりに読んでいた。まず印象的なのはその力技で無理な設定でも読ませてくれるチューイングボーン。金のために電車に飛び込む人を撮影する高額バイトの顛末が描かれる。スピード感があってとてもワクワクするがオチでガクッとくるいつものパターン。感染領域は、最近紹介したが、人ではなく植物を「殺す」という発想のホラー。穴だらけの設定だが、その分楽しく読める。いいでしょうJホラー。そりゃ為になるようなものでは無いが、この無意味で面白いところに惹かれる。スイート・リトル・ベイビーなど、設定だけなら脱力必至だが、それなりに楽しめる。要は舞台を移しつつ、同じパターンを繰り返している。だから、Jホラーが衰退するのも分かる気がする。ただ、人はまた忘れる生き物。面白いものは面白い。

そういう意味では、瞬殺怪談 業などはその典型。こういうショートショート系怪談はほとんど決まったパターンがあって多少目先を変えて出してくるだけ。これも無意味と言えば無意味だが、連続して読むと変な高揚感が味わえたりして、読むドラッグとしていかがだろうか? 寝る前とか電車の待ち時間に最適。

一方、スティーブン・キングのビッグドライバーも典型的なアメリカンモダンホラー。レイプされた女性が逆襲して犯人をハントするという内容だが、エロティックと言うよりは寒々とした復讐劇になっている。キングやクーンツの小説を読むと、毎度毎度首が飛んだり、腕が飛んだり、もしネタを思いついたとしてもよくここまで熱心に書くなぁと感心した。ちなみにこの作品にはスーパーナチュラルな要素が皆無なのでキング作品好きな方には珍しい作品でもある。

嫌な気分になる

ホラーと言うと違和感があるが、間違いなく同じ領域をシェアしているのが、赤目四十八瀧心中未遂。「私が今年読んだ本」という非常に狭いタグの中では最も印象的な作品だ。インテリ崩れの主人公が因業ババアの依頼で一日中暗い部屋でモツ(内臓)の串打ちを行うという何とも言えない設定。登場人物全員が狂人的な上、筆力が高いので、軽くトリップしてクラクラする。曽根崎心中のような美しい道行きでは無く、トコトン人の腐った部分が掘り下げられる。間違っても密かに好意を寄せている女性などには読ませたくは無いが、鬱々とした気分をさらに鬱屈させてくれるという意味で、捻くれた爽快感があった。

蚤と爆弾はいわゆる戦時中の731部隊の人体実験を扱ったノンフィクション風の作品で、嫌な気分と言えば、これ以上無いくらい嫌な気分が味わえる。私はノンポリなので、太平洋戦争の正義についてはどうでもいいのだが、間違いなく人は大勢死んでいて、この部隊が存在したかどうかは関係なく、人体実験が世界のどこかで行われたのも間違いない。そのことに、とにかく吐き気がする。ホラーは「お話」だからいいのであって、現実に侵食してくると、途端に嫌になる。現実では主客は逆だとしても、わざわざこんな嫌な話は読みたくないが、どうして読んだのだろう? 劇画ヒトラーも同系列で、どちらも残虐な描写は控えめだが、戦争という人が生み出せる最大の恐怖を感じることができる。「一人殺せば悪党で、百万人だと英雄だ。」というチャップリンの言葉を引くまでもなく、やはり戦争は最低だ。好きな奴はケーベツする。闇営業だの上級国民だの薬物逮捕など、一回聞けばいい話を繰り返しする奴も同類だ。君たちの頭の中はアンハッピーセットか?

映画も観た

主に若き日の郷愁に誘われて映画館で映画も観た。ゴジラターミネーターの新作。どちらもブロックバスターと呼ばれる大作映画だが、内在するテーマがブレブレで「CGで名作をリマスターしてみた」以外の何物でもなく、実にダメだった。ゴジラの来る夜にというゴジラ評論本も読んだが、とにかく、初代以外のゴジラは全て劣化コピー(異論は認める)。渡辺謙という日本人に原爆抱かせてゴジラをリブートさせるなんて、さてはアメリカ、今でも日本人が大嫌いだな? 放射線の特性と害悪については是非とももっと学ぶべき。ターミネーターはまだ観られるが、結局、核戦争をネタにしてるだけでやってることは戦争そのものという分かってないと大火傷するようなネタ。個人的には黒い液体金属は汚らしいので、せめて元の銀色に戻して欲しい。あと、マチネの終わりにという恋愛映画を映画館でリアルタイムで観るという人生で初の体験をしたが、鬱屈したセレブギタリストの悲惨な恋を観た、という以上の感想はない。

今年はサブスクリプションが使いやすくなったので、過去の映画も観た。バックトゥザ・フューチャーのような何度観ても癒される映画もあるが、だいたいが映画館で観る機会を逃したような作品ばかりで、あまりポジティブな印象はない。
君の名は。」は私にとって最低の映像体験だった。とにかく早く終われと思いながら我慢して観た。「世界の中心で愛を叫ぶ」以来の嫌悪感を味わった。これは批評では無く、単に好みの問題なので、クドクド悪口を書いたりしないが、「幼いが激しい男女の愛欲をひたすら美化し続ける」というのは、気持ち悪くないのか? うーむ、こんなものが流行った理由が本気でわからない。

インクレディブルファミリー」「パシフィックリム アップライジング」も典型的な前作を超えられない続編のパターン。Mr.インクレディブルは能力者の悲哀をたっぷり描いてから、全てのフラストレーションをラストで解放する名作だが、今作は無駄にキャラが増えて、それが薄まってしまった。ジャック・ジャックの能力開花はもっとラストで派手に観たかったなぁ。パシフィックリムは監督が降りたので、当然別物。ギレルモ・デルトロ監督の代わりをやれと言われても無理だろうとは思うが。「初代を除けば最高傑作」と読んで観た「ゴジラvs.ビオランテ」も厳しい映画だった。とにかく退屈で滑稽だ。シン・ゴジラもダメだと思ったが、あれより酷いとは。やはりゴジラは人間の味方でも、キングオブモンスターでも無く、ただの厄災として描かれないといけない。一作目のホラーな雰囲気に回帰して欲しい。

アニメも観たしゲームもやった

流行り物には乗ってみろということで「鬼滅の刃」のアニメは全部観た。結構グロいのでビビったが、今の小中学生はあれぐらいの表現はOKなのか? キャラが「立ちすぎて」鬱陶しいシーンも多々あったが、主人公の竈門炭治郎の驚異的なポジ思考は確かに魅力的。恋愛要素をバッサリ切ってるのも良かった。これぐらいのエネルギーが欲しい。「僕のヒーロアカデミア」は2話だけ無料なので観たが、よく出来ているとは思うものの先が長いなと止まってしまった。面白いとは思うけどあと一歩が出ない。

私は家庭用ゲーム機が大好きなので、今でもゲームの情報を収集するのは大好きだ。主に可処分時間の問題で、買うことは少ないが、それでも40半ばのオッサンが年間3本定価でゲームを買ってるので、ゲーム好きは名乗りたい。

セキロ……もう2度と触りたくない激辛アクションアドベンチャー。ビジュアルや操作感は最高に素晴らしいが、ゲームをやってて「ここが自分の限界か!?︎」などと心折れそうになるのは、我ながら間違っていると思った。詳しくはレビューを参照頂きたいが、久しぶりに男の意地を見せてクリアした。思わず、ザ・スーパー忍を思い出してしまったよ。

ゼルダの伝説 夢を見る島(Amazon)は、コンパクトかつ完成度の高いゲームボーイの傑作アクションアドベンチャーのリメイク。のべ5回はクリアしているが楽しかった。低性能な白黒ゲーム機・限られた容量だからこそ、アイデア勝負で構築された最高の箱庭。Switch版は全部3Dレンダリングで擬似2Dということをやっているが、本質は同じ。来年の任天堂の切り札、動物の森の新作の為の技術試験として作られたと思うのは深読みしすぎか?

ポケットモンスターソード/シールドはシールドをプレイ中。コアなファンからは賛否あるようだが、潤沢な予算と人的リソースを割かれたと思われるゴージャスな出来栄え。奇しくも夢を見る島と同じゲームボーイ生まれだが、よくもここまで綺麗になったもんだ。とは言え、このゲームに時間がなかなか取れない。

好きな作家

前にも公言したが、私にホラー・ミステリの面白さを教えてくれたのは京極夏彦と貴志祐介。特に青年期に読んだ「姑獲鳥の夏」の衝撃は忘れ難く、今でも新作を追っている。「ヒトでなし」は実に捻くれた救いを描く小説。「ヒトごろし」は新撰組の土方歳三を魅力的に描くダークな歴史小説。どちらも楽しく読めた。今さら語ることはないのだが、これが「好く」ということで、先程の新海誠とは綺麗に対照的だ。椎名誠の本も読んでいるが、作者の高齢化により若き日のパワーは無くなった。とはいえ、波長の合う作家の作品はなんだかんだで読めてしまう。
ボクシング漫画「はじめの一歩」は連載中の連続したストーリー漫画としては最長の部類だと思うが、そのため、一度タメに入るとひたすら冗長な展開になる。作者自身の衰えも感じる。今は主人公が引退して復帰するかどうかというネタをひたすら引っ張っているが、もはや、この展開が正しいのかどうかさっぱりわからない。ただ、新刊が出たら必ず読む。なので、このまま未完で終わるのだけは避けて欲しい。ベルセルクもほぼ同じ傾向で、画力は上がったがテーマも変わってしまった。バカ姉弟が復活したのは嬉しかった。こういうストレートで静かなギャグ漫画は必要だ。
今さら「日常」にハマって漫画を揃えたりもしたが、後続作品のCITYは微妙に合わない。おお、結構漫画も読んでいた。

痩せた撮った書いた、飼おう


以上で、作品のまとめは終わり。何だかんだで週に1、2冊は読んでいた。今後もペースは落ちても続けていきたい。と言うわけで、来年もよろしくお願いします。ちなみにプチバズったのは随分前の「まんが日本昔ばなし」の紹介記事。どこかで紹介して頂いたのだろうか?

以下、私自身の一年の振り返り。
まず、痩せた。ある日突然飯が食えなくなって、3ヶ月で73キロあった体重が一時期57キロになってしまった。今は60キロくらいだが、去年とは見た目が違う。友達に本気で心配されてしまった。詳しくはこの記事で。

また苦しい不眠との戦いの毎日でもあった。90分以上連続して眠れず、悪夢に苦しむ。寝ることが安らぎでなければ、どこで休めばいいのだろうか。その為、思想的には安らぎ=眠り=死が連結し、病んだ思考に苛まれている。世界中の不眠症の人に安らかな眠りを。私も同じです。

創作面では長編ファンタジーを書いたが例によって、完璧に否定され、そのことにも慣れてしまった。今は少し小説は休んで方向性を考えている。このブログでも怪談っぽい創作もしたりしたが……。

反対にMVのディレクションという人生初の体験をした。頼まれて作ったが、お金は受け取って無いので、完璧な趣味だ。3ヶ月間はこれに没頭したので色々滞ったのは間違いない。ただ、その分、世界が広がった。また来年もやる予定。やりますよ!

他にも人に言えないこともしていたり、色々と変革の一年であった。やはり都会で働くようになって、交流が増えたのが大きい。このまま転がる所まで転がってみたい。「生きてることなんて死ぬまでの暇つぶし(ジユウニナリタイ/斉藤和義)」

で、明日から猫を飼う。これも人生初の試み。動物嫌いの私がなぜ宗旨替えしたのかというと、朝の6時、通勤途中に出会う猫が私を見てニャーと笑った(確かにそうだ)からだ。忘れた頃に現れては、立ち止まって私を見て笑う。ただそれだけ。それを繰り返すうちに、その微妙な距離感が何だか無性に愛しくなった。

と言うわけで、来年は猫の記事ばかりのブログに変わっているかも知れない。そして、できうる限り期待を裏切ってみたい。いつか、一瞬、全てを撃ち抜いて、見知らぬ場所に手をかけたい。

良いお年を。

(きうら)


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