「拝み屋」を営む著者の実話怪談集
魅力的な登場人物と秀逸なストーリー
単なる実話系会談集の枠を超えた傑作
おススメ度:★★★★☆
憑き物落としや安全祈願などを生業とする拝み屋を営む著者が、自らの奇怪な体験をまとめた実話系の怪奇譚。「花嫁が必ず死ぬ」という旧家と著者の関りが「花嫁の家」「母様の家」という二つの連作を通して語られる。
本作は「実話系」の会談集の系譜ではあるが、いわゆる「本当にあった怖い話」とは決定的に違う点がある。全体に大きなストーリーが流れていてる点と、著者をはじめ師匠の拝み屋や依頼者など、確立されたかキャラクターが存在している点だ。それによって、単なる会談の寄せ集めではなく、一つの小説として完成されている。
「花嫁の家」「母様の家」という二つの連作が互いに深く関連しながら、ストーリーは時間や空間を超えて想像もしない方向に延びていく。怪談の枠を超えた人情話や謎解き、果ては拝み屋同士のバトル要素まで、実に多彩だ。こんなパターンをたどる怪談は読んだことがなく、読み慣れていればいるほど意表を突かれるだろう。
お話としても大変面白いし、文章も読みやすい。ちょっと大げさかもしれないが実話系会談の新しい可能性を感じた。
ちなみに著者は2016年の12月現在、この作品以外に3篇の著作を発表している。どれも面白いが、私はこの「花嫁の家」が一番だと思う。
(きうら)
![]() 拝み屋郷内 花嫁の家【電子書籍】[ 郷内 心瞳 ] |