- 「発狂する謎の絵」「過去の惨劇」などの魅力的な設定
- 個性的なキャラクター造形。好みが分かれる。
- オチは賛否両論。文章は読みやすい。
- おススメ度:★★★☆☆
本作品の大筋は、古典的な怨念モノのプロットを辿る。しかし、設定が魅力的だ。「変死した女流画家が書いた絵の謎」「その謎を追った人間はことごとく発狂」「村人が消えた村」「過去の惨劇」と、まさにこの手の小説好きのツボを突く内容。謎解きがされる後半まで、ワクワクして読み進めた。
一方、キャラクターの造形は非常に個性的だ。何しろ主役の二人が、32歳の美少年専門イラストレーターと、禿げ気味で太ったエロ&バイオレンスを得意とする流行作家という設定。作者は、この辺に強いこだわりがあるのだろうか。ユニークすぎて共感はできないが、とにかく「ありきたりでない」という点は評価したい。
個人的な難点は、作者の恋愛観が生々しすぎること。男性側から見ると、女性の身も蓋もない述懐はちょっと辛いものがある。リアルはリアルだが、男性はどこかで女性というものを理想化している部分があるので、もう少し美しく書いてあげて欲しい。
物語の肝であるネタには、賛否両論があるかもしれないが、サスペンスはミステリーと違い、種明かしまでの過程が楽しいもの。そういう意味では十分楽しめる作品だ。文章の読みやすさも大きなプラス点。とにかく最後まで楽しませようというパワーは感じた。
(きうら)
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