3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

神鳥―イビス(篠田節子/集英社)

投稿日:2016年12月17日 更新日:

  • 「発狂する謎の絵」「過去の惨劇」などの魅力的な設定
  • 個性的なキャラクター造形。好みが分かれる。
  • オチは賛否両論。文章は読みやすい。
  • おススメ度:★★★☆☆

本作品の大筋は、古典的な怨念モノのプロットを辿る。しかし、設定が魅力的だ。「変死した女流画家が書いた絵の謎」「その謎を追った人間はことごとく発狂」「村人が消えた村」「過去の惨劇」と、まさにこの手の小説好きのツボを突く内容。謎解きがされる後半まで、ワクワクして読み進めた。

一方、キャラクターの造形は非常に個性的だ。何しろ主役の二人が、32歳の美少年専門イラストレーターと、禿げ気味で太ったエロ&バイオレンスを得意とする流行作家という設定。作者は、この辺に強いこだわりがあるのだろうか。ユニークすぎて共感はできないが、とにかく「ありきたりでない」という点は評価したい。

個人的な難点は、作者の恋愛観が生々しすぎること。男性側から見ると、女性の身も蓋もない述懐はちょっと辛いものがある。リアルはリアルだが、男性はどこかで女性というものを理想化している部分があるので、もう少し美しく書いてあげて欲しい。

物語の肝であるネタには、賛否両論があるかもしれないが、サスペンスはミステリーと違い、種明かしまでの過程が楽しいもの。そういう意味では十分楽しめる作品だ。文章の読みやすさも大きなプラス点。とにかく最後まで楽しませようというパワーは感じた。

(きうら)


神鳥(イビス)【電子書籍】[ 篠田節子 ]


-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

ゴドーを待ちながら(サミュエル・ベケット[作]、安堂信也・高橋康也[訳]/白水uブックス)

ゴドーを待ちながら、あれこれする二人組。 その二人に絡む変な人たち。 原作だけではこの演劇の良さは分からない、かも。 おススメ度:★★★☆☆ 先日の「アニメに出てくる本」でいうと、この『ゴドーを待ちな …

夜までに帰宅(二宮敦人/角川ホラー文庫)~あらすじと感想、中程度のネタバレ

やや近未来の高校生たちが遭遇する「夜」の恐怖 興味深い設定だが、詰めが甘い気がする 読みやすい&ラストがなかなか おススメ度:★★★☆☆ (あらすじ)少し先の未来、第3次オイルショックがきっかけで夜間 …

禍家(三津田信三/角川ホラー文庫)~紹介と感想、軽いネタばれ

家と森にまつわる因縁。 結構単純な怪異の連続だが、結構怖いです。 とにかく主人公の少年がスーパーなメンタルの持ち主。 おススメ度:★★★☆☆ 多分、三津田信三を読むのはこれが初めてだと思います。「ホラ …

リアル王様ゲーム~女子高生.com (しろいちじく/竹書房文庫) ~ややネタバレ気味

「真面目な」サスペンスミステリ 時代を感じる設定(2010年) 面白いような、恥ずかしいような…… おススメ度:★★★☆☆ なんか、ゴメン……基本的に読む本を選ぶときは、内容はあまり確認せず、タイトル …

東京伝説―うごめく街の怖い話 (平山 夢明/竹書房文庫)※ネタバレあり

幽霊系を排除した実話(的)オンリーの短編怪談集 まあ、面白くは読める 事実っぽいものがあったり、創作っぽいものがあったり おすすめ度:★★★☆☆ 同じ怪談集のシリーズを2週連続読むのは初めてかも知れな …

アーカイブ