3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

玉藻の前 岡本綺堂伝奇小説集(岡本綺堂 /原書房)

投稿日:2016年12月23日 更新日:

  • 妖怪をテーマにした悲恋
  • 古典調だが読みやすい
  • 予想以上に二転三転する物語
  • おススメ度:★★★★☆

玉藻の前といえば、妖怪ファンにはお馴染みの九尾の狐、そして那須の殺生石。文学全集にも名を連ねる岡本綺堂がそんな妖怪を題材にどんな小説を書くのか。結構ワクワクして読んだ。

出だしは地味な展開だが、これが実に面白い。古文調だが、読みやすく、すぐに物語に引き込まれる。基本的な物語構造は悲恋で、立場の違う二人が惹かれあい、やがて悲劇を迎えるロミオ&ジュリエット方式だ。

物語の展開は非常に不安定で、現代的な予定調和を見ないところがいい。地味な展開が続くかと思うと、突然、妖怪が跋扈する幻想的な描写が入る。主人公が破滅しそうになると救われ、救われそうになると破滅する。大団円に落ち着くと見えて、まだ何転かする。偉大な先達にこんな言い方は失礼だが、小説の作りが非常に上手い。

九尾の狐、陰陽師、術比べなど、ライトノベル的要素を内包しながらも、これほど奥の深いエンターテイメントに仕上げるとは、岡本綺堂は恐るべき作家だ。妖怪好き、奇譚好きには是非オススメ。ちなみに青空文庫でも読める(玉藻の前のみ)。

(きうら)


-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

ブラッドボーン(PS4/フロム・ソフトウェア)

ホラーアクションRPG 細部までこだわった世界美術 遊べば遊ぶほど良さがわかる おススメ度:★★★★☆ (あらまし)19世紀ヴィクトリア朝をモチーフにした血みどろアクションRPG。このシリーズでは「ダ …

みちびき地蔵(まんが日本昔ばなしより)~話の全容(ネタバレ)と感想

親子が体験する津波の恐怖 死の前日に祈りにくるという地蔵の前に無数の亡霊が…… 静かに、深く、恐ろしい おススメ度:★★★★☆ はじめに 令和早々に扱うに相応しい明るい話も考えてみたのだが、そもそも「 …

アマニタ・パンセリナ (中島らも/集英社文庫)

著者の実際の「ドラッグ」体験をつづるエッセイ集 酒からガマのアブラ、ベニテングダケまで、様々なドラッグが登場 一つひとつがリアルで「面白い」 おススメ度:★★★★☆ この本は先に書いたようにホラー小説 …

ザ・スタンド(1) (スティーヴン・キング/文春文庫) ~あらすじとおススメ度

強力なインフルエンザの蔓延を描くパンデミック系 様々な登場人物が入り乱れる群像劇 全五巻中の一巻。導入は入り込み辛いが、この先は面白い おススメ度:★★★★☆ 強力なインフルエンザ・ウイルス<スーパー …

凍 (沢木耕太郎/新潮文庫)

ヒマラヤの難峰を登った山野井泰史のドキュメント 超高峰の極寒状態での究極サバイバル ドキュメントとしても傑作。読後の深い感動と清涼感 おススメ度:★★★★☆ この作品の主役である山野井泰史氏は世界の8 …

アーカイブ