3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★☆☆☆☆

死の泉(皆川博子/早川書房)

投稿日:2016年12月24日 更新日:

  • ナチスドイツ、去勢といった興味深いテーマ
  • 描写が中途半端で、テーマのピントはボケたまま
  • 感情移入できない登場人物の変態性
  • おススメ度:★☆☆☆☆

本作の題材は非常に興味深く、ナチスドイツの人体実験、カストラート(去勢)と、危ない予感を感じる要素が満載だが、期待外れの内容だった。上記テーマの描写が実に中途半端だ。こういった小説の場合リアリティが重要なので、核心部分には目を背けたくなるような描写(倫理的に正しいかどうかは別として)がないと、ホラー小説として重みがない。ところが、描写が妙に幻想的というかフワフワしていて、肝心の部分の描写が淡白すぎてガッカリする。

その代わりに、変態(?)ドクターやその妻の心理描写にページが厚く割かれているが、これが全然面白くない。変態すぎて感情移入できないので、読み進むのがかなり苦痛だ。それでも描写が丁寧な1部はいいとして、2部、3部と物語の視点が目まぐるしく変わり、読書の辛さは倍増する。さらに超がつくほどのご都合主義的展開も相まって、ラストは良く分からないまま終わる。

残念ながら常にピントがぼやけた感じが最後まで続く、これがこの作品の印象だった。また、男性の同性愛志向があるのも、好みが分かれるところ。読後の虚脱感は保障できるが……。

(きうら)


死の泉 [ 皆川博子 ]

a_id=671790&p_id=932&pc_id=1188&pl_id=12503&guid=ON” target=”_blank”>

-★☆☆☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

ヘブンズ・フラワー (長谷川エリカ /無双舎F文庫 は 1-1)

暗殺者の少女がディストピア的近未来で自分探し 設定、キャラ、テーマ、すべてが横滑りする ドラマのノベライズであることを読んでから知る おススメ度:★☆☆☆☆ 読み終わってドラマのノベライズだということ …

怖い話を集めたら 連鎖怪談 (深志美由紀/集英社文庫) ~ややネタバレあり

怪談を集める作家に降りかかる災難 5つの呪いの顛末 個人的に苦手な作風 おススメ度:★☆☆☆☆ あらすじは簡潔だ。官能的な携帯ノベルで一度だけ当てた30代の女性作家が、知り合いの元編集から「怪談アプリ …

バースデイ ( 鈴木光司/角川ホラー文庫)

リングの完結編と銘打たれた短編集 著者による二次創作レベル けっきょく何なんだというおはなし おススメ度:★☆☆☆☆ 予想はしていたがそれを上回るくだらなさ。だいぶハードルを下げたつもりだが、それでも …

犬鳴村〈小説版〉(保坂大輔(著)・清水崇/久田樹生(脚本))

自らの血統にまつわるホラー 古典的手法と聞きなれた展開 ちょっとトレンドを取り入れてみたり おすすめ度:★☆☆☆☆ 映画「呪怨」の監督で有名な清水崇の新作映画の小説版。これだけで、私たちのようなホラー …

iPhoneを巡るユニバース-2022秋

※写真はiPhone13 史上最弱のアップデート お値段、上がりました 俺はカメラマンじゃない おススメ度:★☆☆☆☆ ガジェットマニアとしてちょっと乱暴だが、iPhone 14/Plus、iPhon …

アーカイブ