- 有名な四谷怪談を京極夏彦風にリブート
- 元ネタが有名なので意外性がある設定
- 怖いというより非常に美しい物語
- おススメ度:★★★★☆
有名な「四谷怪談」を京極夏彦が独自の解釈を加えて、再構築した作品。映画風に言うと、リメイクというよりリブートという風になるのではないか。
小説の設定はよく知られているは四谷怪談(醜い顔のお岩が夫に災いを為す)なのだが、その動機や展開はかなりオリジナルとは違う。元ネタが人間の醜さゆえの悲劇を語ったものとすれば、本作は人間の美しさ故に悲劇に至るという構図で、いわば真逆だ。よく知っている話だけに、逆に話の展開に意外性を感じて面白い。
作品の文体はこれぞ京極夏彦といった内容で、少々堅めの文章だが読みやすい。京極堂シリーズなどが好みであれば、全く違和感がないだろう。読後感も恐ろしいというよりは、非常に悲しい。繊細で美しい作品だ。
他にも「番町皿屋敷」を扱った「数えずの井戸」、「復讐奇談安積沼」をもとにした「覘き小平次」もあるが、このシリーズは総じて質が高い。興味があればこの2冊もお勧めしたい。
Amazon:
嗤う伊右衛門 (角川文庫)
楽天:
嗤う伊右衛門 [ 京極夏彦 ]