★★★☆☆

ランゴリアーズ (スティーヴン・キング/文春文庫)

投稿日:2017年1月6日 更新日:

  • 11人を残し乗客が消失したジャンボジェットというイントロ
  • 異世界に迷い込んだ人々の恐怖が精緻に描かれる
  • キング作品好きなら、読んで損はない一冊
  • おススメ度:★★★☆☆

飛行中のジャンボジェットの乗客が11人を除いて全て消失してしまう。しかも、飛行機は、街の明かりさえ見えない謎の空間を飛行している。残された乗客たちの運命は……。と、いうスティーブン・キングらしい読まずにはいられない素晴らしいイントロダクション。例えれば、楳図かずおの「漂流教室」のような、突然、異空間に飛ばされる系のお話である。

乗客消失から着陸までの流れは非常に良くできていて、リアリティがあって引き込まれる。物語の開始時点では、表題の「ランゴリアーズ」の意味も分からず、何が起こるかわくわくする。そして、ある場所に到着してからの異空間の様子も中々斬新で、「悪いことしか起こる気がしない」という雰囲気はキング作品独特のものだ。

ただ、謎に対して科学的、合理的な説明がされるかというとそうでもなく、あくまでも異常なシチュエーションを楽しむための小説で、その辺は割り切って読まないと、こんな筈ではなかったという思いが残るだろう。ランゴリアーズの正体は、個人的には斬新だと感じたが、何が出てくるかは「お楽しみ」。予想以上でも以下でもないと思う。

ちなみに、表題作以外に「秘密の窓、秘密の庭」という「自分の小説を盗作した」と不条理な言いがかりをつけられる作家の恐怖を描く中編も収録されているが、個人的には毛色が違いすぎて、あまり好みではなかった。「ランゴリアーズ」だけでも十分満足できるとは思うが。

(きうら)


スティーブン・キングのランゴリアーズ [ パトリシア・ウェティグ ]

-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

櫛の火(古井由吉/新潮文庫)

死んだ女性を裡に秘めつつ、生きる女性と交わる 『行隠れ』の発展的変奏 古井文学的には過渡期にあたるものか おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 本書は、古井由吉が出した単行本としては、『杳子・妻隠(過 …

イルカと墜落( 沢木耕太郎/文春文庫)~紹介と感想

著者が実際に乗った「飛行機の墜落事故」のレポート 前半はブラジルでの少数民族に関するドキュメント 冷静な文章で読みやすい。むしろユーモアも。 おススメ度:★★★☆☆ 前回紹介した「クライマーズ・ハイ」 …

ホラー小説大全 ドラキュラからキングまで(風間賢二/双葉文庫) ~内容の紹介

文化論も含む硬質な欧米ホラーの概観 歴史、3つモンスター、おススメ本100冊の3つのパート ガイドブックというよりは、正統派の評論としての性格が強い おススメ度:★★★☆☆ 怖い本の紹介サイトで、さら …

レキシントンの幽霊

暗い印象を残す7つの短編集 著者独特の文章を味わうタイプ 落ちが不可思議だ オススメ度:★★★☆☆ 村上春樹が1990〜1996に断続的に書いた短編が改稿された上で一つにまとめられたもの。1996年1 …

未来の年表(河合雅司/講談社現代新書)

止められない少子化(人口減少)の実情と、それへの「処方箋」。 「静かなる有事」という、人口減少による(日本)社会崩壊の危機。 日本の「おそるべき未来を時系列にそって、かつ体系的に」ときあかす。 おスス …

アーカイブ