- ファンタジー要素のある青春小説
- 類型的なキャラクター設定だが展開が早くて上手い
- 読みやすい文体で内容と併せ軽い読書向き
- おススメ度:★★★☆☆
恩田陸のデビュー作となる「六番目の小夜子」は、ジャンルとしては青春小説・ジュブナイル小説だが、当初はファンタジーノベルとして刊行されていた。確かに、ある種のファンタジー要素が含まれていて、最後まで読むと納得できる。
導入部は、とある高校にやってきた美少女転校生、その高校には奇妙なゲームが受け継がれており、それは、3年に一度、サヨコと呼ばれる謎の存在が選ばれるというものだった……と、これだけではよく分からないが、高校3年生の1年間を通じ、青春時代特有の喜びや苛立ち、もどかしさが盛り込まれている。
読み始めた当初は、たいへん否定的な印象を持った。何しろ美少女転校生に、天性の秀才である主人公、爽やかなスポーツマンの友人、ひがみっぽいいかにもな役回りのクラスメイトなど、あまりに型通りの人物造形だったからだ。また、青春小説特有の「恥ずかしい」感じも少しあって、ヒネたホラーファンには厳しいものがある。
ただ伏線をあまり引っ張らないのは好感が持てるし、一つひとつのエピソードに山場があって飽きずに一気に最後まで読み通せる。特に、学園祭の描写が良く、この部分は不気味で印象に残る。また、一見ミステリーや青春小説の形を借りながら、ジャンル小説に囚われない不思議な雰囲気が漂っている。
とはいえ、未消化のまま終わる伏線もあったりし、不満点がないわけではないが、普段このサイトで紹介しているような血生臭い怪談に飽きたら一読をお勧めしたい。
(きうら)
![]() 六番目の小夜子 [ 恩田陸 ] |