- カードローン破産がテーマの本格サスペンス
- 時代設定は古くなったがテーマは不変
- 無駄のない緻密な文章と展開
- おススメ度:★★★★☆
今更といえば余りに今更だが、本書を読み終えて「これぞ本物のサスペンス小説」という思いがこみ上げてきた。クレジットカードが作れないことをきっかけに失踪した女性を追って、細かな手がかりを手繰り寄せて真実にいたる道程がなぜこんなに面白いのか。無駄のない展開で、到底登れないと思っていた山に着実に登っていくような快感があった。血肉の通った人物の描写も見事。
物語のテーマはクレジットカード・ローン破産の悲惨さとその「日常性」。約20年以上前の作品なので、時代設定が古くなってしまっているが、今も誰かが確実につまづいているローン・クレジットの罠がリアルに描かれている。私も車をローンで買った経験があるが、とにかく毎月の固定費が増える息苦しさというのは独特のものだ。生活してみるとよく分かる。
サスペンス=読者の不安感や緊張を煽るものであるとすれば、このジャンルのど真ん中に位置する作品。ミステリに本格ミステリという呼び名があるが、これはまさしく本格サスペンスと呼べるだろう。
(きうら)
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