★★☆☆☆

死国 (坂東真砂子/角川文庫)

投稿日:2017年1月18日 更新日:

  • オカルト要素ありの愛憎劇
  • 四国の文化についてはあまり深く突っ込んでいない
  • 女性視点の性的なモノローグなどの描写あり
  • おススメ度:★★☆☆☆

【ネタバレあり注意】
四国にある八十八ケ所の霊場を死んだ者の歳の数だけ逆から回ると死者が甦えるという、本来は禁じられている「逆打ち」を行った恐怖の物語……という、物語の導入本の裏の紹介から想像できる程度のネタバレだが、気になる方は以下は読まずに、実際の読書をお勧めしたい。

その昔「猫殺し」の一件で話題になった坂東氏による映画化もされたこの「死国」は、死者の甦りと四国の土着文化をテーマにしており「伝奇ロマン」と紹介されている。問題はこの「伝奇」と「ロマン」の比重だが「ほとんどロマン」といった感じで、三角関係がテーマの恋愛物になっている。

この三角関係の一角が死人という点がこの本の売りだと思うのだが、正直、ドキドキするホラーを期待していたので、見事に肩透かしを食らった感じだ。また「霊魂が存在する」ことが前提になっているので、少々リアリティを失ってファンタジーにも思える。

死者を蘇らせる話としては「猿の手(Wikipedia)」という有名なお話があるが、基本的にこの手の話は、死者への切ない思いと冒涜行為が交錯して悲劇的な結末を生む、というのが基本的なプロットで、多かれ少なかれこの流れを含む。本作もそういった要素もあるが、甦った死者が取った行動が「ヒロインとの男の取り合い」な所が、トホホ感いっぱいで「けっきょく痴話喧嘩かよっ!」と、思わず突っ込んでしまった。

また、作者の個性だと思うが、登場する女性の内面の醜さやあからさまな性的欲求を描写することが多く、嫉妬心や性的なモノローグに何か居心地の悪さを感じる描写も多かった。もう一つの売りの四国の土俗的文化についても、それほど突っ込まれておらず、中途半端感は否めない。期待して読んだだけに、どうにも人に薦めにくい一冊というのが今回の感想だ。

(きうら)


死国 [ 坂東眞砂子 ]


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