- タイトル通り「質問」と「答え」だけで構成される小説
- 正体不明の大惨事が多数の視点から描かれる
- オチは弱いがゾッとする恐怖を味わえる
- おススメ度:★★★★☆
作者のデビュー作「六番目の小夜子」に続いての紹介となる本作は、あるショッピングセンターで起こった大惨事(死者69名、負傷者116名)をめぐる物語だが、タイトル通りQ&A形式(質問とその答え)で進み、一般的な小説にある場面描写などがない。
とはいえ、それほどトリッキーな印象もなく「正体不明の大惨事」という興味深いテーマがあるので、序盤から引き込まれる。次第に質問者と回答者も変化すが、一つひとつのシーンが短編小説風にラストに落ちがつくので、単調な印象もない。
物語が動くのは中盤からで、ネタバレになるので詳しくは書けないが、通常のサスペンスと逆方向に物語が転回する。この「Q&A」は物語が収束するのではなく、拡大していく。読んでいる時はそれほど分からなかったのだが、読み終えて振り返ってみると、作者の狙いがよく分かった。
一言で言えば、一つの惨事から拡大再生産されていく恐怖、これこそ、この小説のテーマかなと思う。これは現実社会にある恐怖に近く「何となく不安」な気持ちがどんどん積み重なっていくようで、新鮮な感覚だった。
惜しいのはラスト、結末が弱いと感じるし、あの設定は必要なかったようにも思う。どちらにしても、水準以上の「ぞっとするような恐怖」を味わえるので、一度手にとってみてはどうだろうか。
(きうら)
![]() Q&A【電子書籍】[ 恩田陸 ] |