- SF要素のあるホラー小説集
- 異常だが、面白く説得力のある設定が多い
- 特に「くだんのはは」がオススメ
- おススメ度:★★★☆☆
本作品は、SFホラーとでも言うべきジャンルで、伝統的な怪異譚にSF的な要素がミックスされた短編小説集。SF的な味付けがあるとはいえ、科学的・論理的に怪異が説明されるわけではなく、不思議な力が「ある」ことが前提の作品だ。
内容に関しては純粋に設定が面白いのと、異常な設定常でも、そのベースに人間の持つ根源的恐怖を見据えているような深さがる(「すぐそこ」「骨」など)。また、戦中派らしい戦争の恐怖も織り込まれていて、こちらの方が個人的には怖かった(「くだんのはは」「召集令状」)。特に、「くだんのはは」は、戦争・空襲・広島・秘密の奥座敷・血の包帯・異臭など、とにかく不気味な設定で、この一編を読むためにこの本を買ってもいいのでは、と思わされるほどだ。
短編集なので、作品の質はバラバラだが、毎日少しずつ楽しむにはぴったりだ。ぜひ「くだんのはは」だけでも手に取って読んでみてほしい。これだけなら、評価をもう一つ上げたい。
本書の紹介とは直接関係ないが、私は中学生の頃はどちらかというとオカルト信奉者で、自分でピラミッドパワーなるものを試したり、怪しい呪文の本を読んだり、色々と痛い行動を取っていたのだが、今改めて振り返ってみると「超常的な力はない」という結論だ。また、幽霊・化け物・妖怪の類についても「いない」と思っている。ただし、それぞれの個人や状況に限れば「見える」ことは十分にあるし、正しいやり方の呪いも十分に「効く」とも思っている。
こんなブログを書いているのも、今でも幽霊やお化けが「ひょっとしたらいるかも」と思えるぐらい「上手く騙して欲しい」という思いを持っているからだろう。できるなら本書にあるような怪異も一度も見てみたい。
(きうら)
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