★★★☆☆

ホワイトアウト(真保裕一/新潮文庫)

投稿日:2017年1月24日 更新日:

  • 驚愕するほど読みやすい文章
  • 構成はシンプル。ダムを舞台に男が暴れまわるのみ
  • 小説がオリジナルだが、映画版のノベライズのような作品
  • おススメ度:★★★☆☆

本作は、厳冬期のダムを乗っ取ったテログループに立ち向かう一人の男の孤独な戦いを描いたサスペンス小説だ。過去、織田裕二主演で映画化もされ、和製ダイハードなどと呼ばれていたが、確かに物語の図式はそっくりだ。テロのグループと舞台が違うだけで、このまま翻案してダイ・ハードの続編としてもいいのでは、と思うぐらいである。

私も以前「アクション映画を小悦で表現できないか?」と、考えたことがあるので、この小説の表現したかったことは本当に良く分かる。そして、グイグイ読ませる力もある。しかし、最後まで読んでみると、これは「ダイハードのようなアクション小説」ではなく、「ダイハードのようなアクション映画の脚本の小説化」のような、微妙にずれたものになっているような気がした。

と、いうのも、誰もが読む前に期待するであろう「テログループに立ち向かう孤独なヒーロー」というものに対して、本当に「一人でテログループをやっつける」という答えしかないからだ。一応、テログループのテロの動機、親友とその婚約者とのドラマなども絡めているが、はっきり言ってなくてもあまり変わらない。本当に、ダムを舞台に男が暴れまわる、それ以上でもそれ以下でもないように思う。

テログループが安っぽいとか、ただのダム職員が小銃を乱射するとか、実質ヒロイン不在で盛り上がらないとか、他にも色々不満もあるが、600ページを超えるにも関わらず、驚くほどすんなり読めてしまう点は驚愕に値すると思う。これは皮肉ではなく、あまり内容の深くない長編作品を、これほど読ませるバランスの取れた文章力は、これはこれで凄いものだ。

(きうら)


ホワイトアウト [ 真保裕一 ]


-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

深海のYrr〈上〉(フランク・シェッツィング(著)、北川和代(訳)/ハヤカワ文庫)~概略と軽いネタバレ感想

世界の海で起こる異常事態を描くSF海洋ディザスター系 謎のゴカイ、人を襲うクジラなど「海」が人を襲う 3分冊の第1冊目なので、全体のプロローグに過ぎない内容 おススメ度:★★★☆☆ 結構前に上巻と中巻 …

「承認欲求」の呪縛(太田肇/新潮新書)~読書メモ(44)

読書メモ(044) 「承認欲求」のネガティブ面を捉える 何でもかんでも「承認欲求」から読み解く おススメ度:★★★☆☆ 【本書について】 最近よく聞く「承認欲求」というワード。これはたとえば、「あいつ …

書物と電気自動車について(成城比丘太郎のコラム-03)

書店のディスプレイは編集力の見せ所? 「千夜千冊」の再編集? 本と自動車産業の未来を横断的に語りたい(無理) おススメ度:★★★☆☆ 4年に一度おこなわれるものとはなんでしょか、と訊いたとしたらおそら …

本の雑誌血風録 (椎名誠/朝日文庫)

椎名誠たちの黎明期を描く 馬鹿げに満ちた壮大なプロローグ 著者が好きな方には勧めたい おススメ度:★★★☆☆ 本書は、小説家・エッセイスト・映画監督・タレント・編集者と、様々な顔を持って活躍していた3 …

ゴドーを待ちながら(サミュエル・ベケット[作]、安堂信也・高橋康也[訳]/白水uブックス)

ゴドーを待ちながら、あれこれする二人組。 その二人に絡む変な人たち。 原作だけではこの演劇の良さは分からない、かも。 おススメ度:★★★☆☆ 先日の「アニメに出てくる本」でいうと、この『ゴドーを待ちな …

アーカイブ