- 驚愕するほど読みやすい文章
- 構成はシンプル。ダムを舞台に男が暴れまわるのみ
- 小説がオリジナルだが、映画版のノベライズのような作品
- おススメ度:★★★☆☆
本作は、厳冬期のダムを乗っ取ったテログループに立ち向かう一人の男の孤独な戦いを描いたサスペンス小説だ。過去、織田裕二主演で映画化もされ、和製ダイハードなどと呼ばれていたが、確かに物語の図式はそっくりだ。テロのグループと舞台が違うだけで、このまま翻案してダイ・ハードの続編としてもいいのでは、と思うぐらいである。
私も以前「アクション映画を小悦で表現できないか?」と、考えたことがあるので、この小説の表現したかったことは本当に良く分かる。そして、グイグイ読ませる力もある。しかし、最後まで読んでみると、これは「ダイハードのようなアクション小説」ではなく、「ダイハードのようなアクション映画の脚本の小説化」のような、微妙にずれたものになっているような気がした。
と、いうのも、誰もが読む前に期待するであろう「テログループに立ち向かう孤独なヒーロー」というものに対して、本当に「一人でテログループをやっつける」という答えしかないからだ。一応、テログループのテロの動機、親友とその婚約者とのドラマなども絡めているが、はっきり言ってなくてもあまり変わらない。本当に、ダムを舞台に男が暴れまわる、それ以上でもそれ以下でもないように思う。
テログループが安っぽいとか、ただのダム職員が小銃を乱射するとか、実質ヒロイン不在で盛り上がらないとか、他にも色々不満もあるが、600ページを超えるにも関わらず、驚くほどすんなり読めてしまう点は驚愕に値すると思う。これは皮肉ではなく、あまり内容の深くない長編作品を、これほど読ませるバランスの取れた文章力は、これはこれで凄いものだ。
(きうら)
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