- 霊が見られる霊能士の短編小説集
- 幻想的な作風で怖くない
- 読後感は爽やかだが求めてたものとは違う
- おススメ度:★★☆☆☆
日本人の皮膚感覚を逆なでするようなデビュー作「ぼっけえ、きょうてえ」が、極めてよくできた不気味な怪談だとすれば、本作品は、虚実と現実が交錯する幻想小説だ。「愛人に切り付けられ片目を失い、霊が見られるようになった女霊能士」という設定こそ猟奇的だが、全体的には明治期の岡山のちょっと奇妙な事件を描いた短編連作小説になっている。
前述の「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山弁の語り口に引き込まれ、最後の最期で鳥肌が立つような感覚を味わいましたが、こちらは最後までクール。霊が日常的に出てくるところなど、むしろ漫画的だと思う。読後感も爽やかというか不思議な感じがして、文学的とも言えるような気もする。
とはいえ、ほとんどの人は作者特有の「怖い話」を期待していると思うので、肩透かしを食らい、満足度が必要以上に低くなるだろう。逆に言えば、ホラーや怪談だと思わなければ、そこそこ興味深く読めるのではないだろうか。
求めていたものではないが、これはこれでありかも、と言うのが率直な感想だ。
(きうら)
![]() 岡山女【電子書籍】[ 岩井 志麻子 ] |