- 元禄時代に現れた怪獣と人々の戦いが真面目に描かれる
- 登場人物は多いが、丁寧な描写。残酷表現もあり
- 感想は「ギャーかいじゅうぅ!」に尽きる
- おススメ度:★★★☆☆
本の帯に書かれていた文句は「東北小藩の山村が一夜にして壊滅する。゛怪物″はなぜ現れたのか? 北の民はどう立ち向かうのか?」しかも作者は宮部みゆきで「大型時代エンターテインメント!」となっていた。今現在、文庫にすらなっていないので、約2000円の本。悩みに悩んだが購入して読んでみた。
物語の導入は最高だ。怪物に襲われて逃げる子供、一人の男とに出会うがそれもどうやら「犠牲者」になってしまったようだ。子供は九死に一生を得るが……という謎めいたもの。そこから元禄時代を舞台に、二つの藩の抗争や謎の風土病などの要素が複雑に絡み合い、やがて、怪物と対峙していく……というのが、大まかなプロットだ。
荒唐無稽な怪物さえ出てこなければ、オカルト要素のある時代小説と言ったところだが、とにかく「それ」が出てくるので、話はだんだん混とんとしてくる。読者は怪物の正体とそれをどうやって倒すのかを期待して読み進めるのだが、綿密な描写も手伝って、怪物登場までは非常に緊張感のある展開が続く。
登場自分が多いのも特徴で、一種の群像劇になっており、好みのキャラクターも出てくるが、逆に感情移入が難しかったりもする。文章自体は作者の力量通り、読みやすくて明瞭だ。心理描写も多いのも特徴。
しかしこれはあくまでも、
「怪獣小説」
なのであり、初代ゴジラ張りにゆっくりと登場する破壊神と人々との闘いを楽しむ小説だ。個人的にはもう少し、怪獣の存在についての論理的補足が欲しかった。非常に真面目に作られた小説で、テーマもあるし泣けるシーンもあるが、期待以上でも以下でもなく、できればもうひとひねり欲しいというところだ。上記の要素が好きな方は、一度読まれてはどうだろうか。
(きうら)
![]() 荒神 [ 宮部みゆき ] |