- 「崩壊後」の世界が緻密に描かれる
- 魅力あふれるキャラクターが次々登場する
- 作品屈指の名シーンあり。必読
- おススメ度:★★★★★
ほとんどの人間が<スーパーフルー>という強力なインフルエンザで死に絶えたアメリカを舞台に、生き残った人々の葛藤をじっくりと描く長編小説の第2巻。途中で1部が終わり、2部に入るが、基本的に話は続いているので、特に意識することはない。多彩な登場キャラクターのそれぞれの旅立ちを描くのが本書のメインストーリーだ。
以下は、一応、スティーブン・キング好きで1巻を読まれていると仮定して紹介してみたい。
前半の山場はやはり、シンガーのラリーと生き残った女性が、都市から脱出する時に入るトンネルのシーン。このシーンに対する力の入れ方は相当のもので、これほど「トンネル」が怖いと思ったことはない。全編を通しても、一つのハイライトと言えるシーンだ。ぜひ、一度、じっくりとそのシーンを読んでみてほしい。
中盤からは、重要なキャラクターが次々登場する。何でもない人々のそれぞれの事情が描かれていた1巻に比べ、アウトブレイク後の世界で、それぞれの本性が露になる。善人から悪人、その中間の人間まで様々だ。この2巻では、非常に理性的な人間からそうでないもの、そして、明らかな悪役までかなりのページを割いて描写されるので、次が気になって仕方ない。ただ、登場人物が非常に多いので、多数の視点が入り乱れる小説が苦手な方は注意が必要だ。
私はやはり、聾唖のニックと軽い障害を持ったトムの組み合わせと、ラリーと「野生児」を連れたナディーンの存在が面白かった。特にナディーンは神秘的な魅力があり、その危うさも含め、行く先の気になるキャラクターだ。その他、「世界が滅亡したらやってみたいこと」をやってしまう「ゴミ箱男」など、見所満載。途中、かなりキツイ描写も多いが、それも含めてじっくりと楽しみたいところだ。
「どうやら世界が破滅したらしい」状況で、人々はどのように考え、何をしようとするのか。緻密に描かれるその世界は恐怖と興味に満ちている。最近の「ゾンビ系映画」の原型を見るような情景はまさに完璧なディストピア。今後、登場人物がどういう運命をたどっていくのか。次の第3巻もぜひ、紹介したい。
(きうら)
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