★★☆☆☆

狐火の家 (貴志祐介/角川文庫) ~簡単なあらすじの紹介と感想

投稿日:2017年2月21日 更新日:

  • 作者の前作「硝子のハンマー」に続く短編集
  • 前作を読んでいることが前提なので注意。
  • 作者の持ち味と作品のテーマがずれている気がする
  • おススメ度:★★☆☆☆

前作・密室の謎を解く正統派ミステリー「硝子のハンマー」で活躍した弁護士・青砥純子&防犯ショップ店長(実は泥棒?)・榎本径が活躍する短編集。表題作以外に「黒い牙」「盤端の迷宮」「犬のみぞ知るDog knows」の4篇を収録。作者がインタビューで語っていたが「知的遊戯としての」直球推理小説集だ。

独立した短編集であるが、主人公達の設定部分がかなり省かれているので「硝子のハンマー」を読まないと主人公達のキャラが掴みきれない。基本はトリックで勝負しているので、無理に読む必要はないが、それでもやはり前作を読んだほうがスムーズだ。

パターンとしては、死人が出て二人が推理するパターンの繰り返し。テーマ的には「狐火」は田舎の暗い家、「黒い牙」は蜘蛛、「盤端」は将棋、「犬のみぞ…」はアングラ演劇になっている。前半二つはホラー調の要素があるが、それ程怖くはない。

貴志祐介はかなりの寡作だが、その分一つひとつのクオリティが高い。以前紹介の「新世界より」もオリジナルティがある上に娯楽としても面白いかなりの力作だった。それに比べると本作品は、肩の力が抜けているというか、ワン・シチュエーションで勝負するミステリーというか、要するに作品に重さがない。読後、かなり拍子抜けしてしまった。

さらに、貴志祐介は人間そのものの怖さとサスペンスフルな展開が持ち味だが、この短編集は、軽妙さとトリックそのものが売り。これでは作者の長所とこの作品の作風が合っていない。決して読めないほど下らなくはないが、これぐらいの話なら別の作家でもいいと思えるレベルになってしまっている。「黒い牙」は設定自体は秀逸なのだが、この内容ならもっとドタバタコメディ化してもいいと思う。逆に「犬のみぞ知る」は無理に砕けすぎて、笑いどころの分からないコメディになってしまった。どこか狙いと効果がちぐはぐで空振り気味なのだ。

不満ばかり書いてしまったが、裏を返せば癖のない仕上がりになっているので、気軽な読書向きといえよう。読んだ後しばらくその世界から帰って来られない本ばかりでも苦しいし、ディティールはいつも通り緻密なので十分楽しい一冊である(タランチュラには本気で興味が湧いた)。ただ、作者の実力はこんなものではないはずだ。

(きうら)


狐火の家 [ 貴志祐介 ]


-★★☆☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

グルーム (ジャン・ヴォートラン (著) /高野優 (翻訳)/文春文庫) ~感想と概要

心を病んだ青年ハイムの妄想と犯罪 ノワール小説の鬼才の作品(紹介文より) 面白いような、そうでないような おススメ度:★★☆☆☆ 松の内も明けない内にこんな不気味な作品を紹介するのは気が引けないでもな …

本当の魔法と魔法瓶(北川商店) ~【特別編PR的寒い感想】

・今回は怖い本の紹介ではないので怖い話を読みたい人はスルー ・怖いというより寒いかキモイ。というか、滅茶苦茶でアホ ・なぜ、特別編でスルーかは下記の説明を読むとよくわかります おススメ度:★★☆☆☆ …

「エンドレスエイト」(『涼宮ハルヒの暴走』)(谷川流[原作]・京都アニメーション[制作]/角川スニーカー文庫) ~アニメ版のホラー的鑑賞について

アニメ版を一気に観るとホラーになります。 私の当時の感想を主に書いています。 こんなくだらない事は、あまりお勧めしません。 おススメ度:★★☆☆☆ 最初に書いておきたいのですが、今から紹介するのは、ア …

つばめや仙次 ふしぎ瓦版(高橋由太/光文社)

本当に不思議な小説 薬種問屋の次男坊のえーと 久しぶりによく分からない おススメ度:★★☆☆☆ 江戸を舞台に、本所深川の薬種問屋つばめやの道楽息子・仙次の活躍(?)を描く。彼は怪しい話専門の瓦版売りで …

地図にない谷(藤本泉/徳間文庫)

謎の風土病がテーマの伝奇ミステリー 恋愛・歴史要素あり 謎解きはあっさり。 おススメ度:★★☆☆☆ その谷に住む住人は「いきなり病」という正体不明の風土病によって、次々と死んでいく。その原因はいったい …

アーカイブ