- 著者の実際の「ドラッグ」体験をつづるエッセイ集
- 酒からガマのアブラ、ベニテングダケまで、様々なドラッグが登場
- 一つひとつがリアルで「面白い」
- おススメ度:★★★★☆
この本は先に書いたようにホラー小説ではない。かといって直接的な「恐怖」を扱ったものでもない。むしろ、読後感の感想は「面白い」だ。しかし、間接的に様々な「怖さ」を提起してくれるお気に入りの一冊だ。
この本は、以前紹介した「人体模型の夜」や「ガダラの豚」など、ホラー要素のあるエンターテイメント小説に長けた中島らも氏の実録「ドラッグ」体験だ。それはもう、リアルかつ、面白おかしく解説されている。
扱われるドラッグは「睡眠薬系統」「咳止めシロップ」「有機溶剤(いわゆるシンナー)」といった身近なものから「幻覚サボテン」「毒キノコ」「ガマ」と言った珍妙なもの、「シャブ」「アヘン」「LSD」「大麻」など、本格的にヤバいものまで様々だ。それを、ほんとど、著者が実際に「試す」か「知人に聞いた」話がほとんどで、おカタい解説書でもなければ、ドラッグの警告本でもない。特に「幻覚サボテン」や「ガマ」などは爆笑した。
しかし、最後のテーマが「アルコール」。ご存知の通り、中島らも氏の死因は、泥酔による階段からの転落氏。そう考えると、私もアルコール大好きではあるが、これほど身近で恐ろしいドラッグもない。しかも、テレビやメディアの大口スポンサーで、どんどん「アピール」してくる。酒は百薬の長とは言われるが、やはり肝臓で分解される毒には変わりなく、統計的なアルコール依存症患者は一千万人近い。もちろん、適正飲酒量を守って飲めばメリットもある。
ゲラゲラ笑って読める非常に面白い本だが、その根底には深遠な問題を提起しているように思える。人はなぜ「ドラッグ」を求めるのか。日常からの「解脱」はなぜ必要なのか。なかなか怖い話である。
ちなみに、作者のアルコール依存症験を綴った「今夜、すベてのバーで 」や、同じ体験を扱った吾妻ひでお氏のマンガ「失踪日記
」もオススメだ。どちらも名著だが、ほとんどの男性が身につまされるはずだ。私も同じだ。
(きうら)
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