★★★★☆

アマニタ・パンセリナ (中島らも/集英社文庫)

投稿日:2017年3月1日 更新日:

  • 著者の実際の「ドラッグ」体験をつづるエッセイ集
  • 酒からガマのアブラ、ベニテングダケまで、様々なドラッグが登場
  • 一つひとつがリアルで「面白い」
  • おススメ度:★★★★☆

この本は先に書いたようにホラー小説ではない。かといって直接的な「恐怖」を扱ったものでもない。むしろ、読後感の感想は「面白い」だ。しかし、間接的に様々な「怖さ」を提起してくれるお気に入りの一冊だ。

この本は、以前紹介した「人体模型の夜」や「ガダラの豚」など、ホラー要素のあるエンターテイメント小説に長けた中島らも氏の実録「ドラッグ」体験だ。それはもう、リアルかつ、面白おかしく解説されている。

扱われるドラッグは「睡眠薬系統」「咳止めシロップ」「有機溶剤(いわゆるシンナー)」といった身近なものから「幻覚サボテン」「毒キノコ」「ガマ」と言った珍妙なもの、「シャブ」「アヘン」「LSD」「大麻」など、本格的にヤバいものまで様々だ。それを、ほんとど、著者が実際に「試す」か「知人に聞いた」話がほとんどで、おカタい解説書でもなければ、ドラッグの警告本でもない。特に「幻覚サボテン」や「ガマ」などは爆笑した。

しかし、最後のテーマが「アルコール」。ご存知の通り、中島らも氏の死因は、泥酔による階段からの転落氏。そう考えると、私もアルコール大好きではあるが、これほど身近で恐ろしいドラッグもない。しかも、テレビやメディアの大口スポンサーで、どんどん「アピール」してくる。酒は百薬の長とは言われるが、やはり肝臓で分解される毒には変わりなく、統計的なアルコール依存症患者は一千万人近い。もちろん、適正飲酒量を守って飲めばメリットもある。

ゲラゲラ笑って読める非常に面白い本だが、その根底には深遠な問題を提起しているように思える。人はなぜ「ドラッグ」を求めるのか。日常からの「解脱」はなぜ必要なのか。なかなか怖い話である。
ちなみに、作者のアルコール依存症験を綴った「今夜、すベてのバーで 」や、同じ体験を扱った吾妻ひでお氏のマンガ「失踪日記」もオススメだ。どちらも名著だが、ほとんどの男性が身につまされるはずだ。私も同じだ。

(きうら)


アマニタ・パンセリナ【電子書籍】[ 中島らも ]


-★★★★☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

江戸の刑罰(石井良助/吉川弘文館) ~内容の紹介と軽いネタバレ

江戸の刑罰と牢屋に関する、古典的名著。 処刑の記述や、牢屋内でのドキュメントは結構おそろしい。 刑の執行や牢屋内の取り決めは、かなり細かい。 おススメ度:★★★★☆ 著者は、「日本法制史」の研究者で、 …

中世騎士物語 (須田武郎/ 新紀元文庫)

中世フランス騎士の実像を概観する 物語性は低いが入門書としては秀逸 ゲームや小説で騎士に興味のある人に オススメ度:★★★★☆ 最初に。本書はホラーとは全く無関係である。普通、怖い本とも呼ばれないだろ …

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(フロムソフトウェア/PS4)

ストロングな和風3Dアクション 美麗な絵、軽快な動き 社会人殺しの難易度 オススメ度:★★★☆☆ ホラーを読むと言っておきながら、ゲームのレビューになるのだが、このゲームには言いたいことがいっぱいある …

妖怪ハンター 1 地の巻(諸星大二郎/ヤングジャンプコミックス) ~あらましと感想

独自の世界観と画風のホラー漫画 民俗学的知識が下敷きになっている ホラーにとどまらない深みのあるストーリー おススメ度:★★★★☆ かの「漫画の神様」手塚治虫が「僕は誰の絵もまねて書くことができるが、 …

山月記(李陵・山月記より) (中島敦/新潮文庫) ~ネタバレ感想

中島敦屈指の名文 物語は分かりやすく、論旨は明瞭 身につまされるような話 おススメ度:★★★★☆ 皆さんは小中学校の教科書で読んだ文学作品を、一部でも覚えておられるだろうか? 私にとっては、おぼろげに …

アーカイブ