- 実話の短編エピソードを100話収録
- 玉石混交の内容で、軽い話も多い
- バラエティ豊か。気軽な読書に
- おススメ度:★★☆☆☆
百物語(参加者が順番に怖い話を披露する会)を開催している著者が実際に聞いた話をまとめた直球型実話怪談集。この作品の特徴は、本当に100のエピソードが収められていること、そのため、一話一話がとても短いことだ。電子書籍版で、文字の大きさにもよるのだが、1ページで終わるものもあるし、多くても5ページ程度だ。時間にして1分~5分くらいでワンエピソードが終わる。
中身は、伝文調の「本当にあった怖い話」系だが、これが実に玉石混交で、いい話とそうでもないものの差がけっこう大きい。私見だが「玉」の方が少なく、実際に現場で聞いたら怖いかもしれないが、オチもなく怖くもない話も多い。と、思って著者の「あとがき」を読むと「本にする際にこぼれてしまった様々な体験集を中心に編みました」と、あるので、捨ててしまうには惜しいが、何か足りなかった話が多いのも納得だ。
その中でも、もちろん印象に残るエピソードもある。例えば、妙な後味が面白い、大学生が学生時代に電車の中で体験した奇妙なエピソード「砲丸」、産婦人科で働く看護師のエピソード「まとわりつく」は、結構嫌な後味がある、逆にちょっと感動系の「生まれ出づる悩み」は、奇妙だが心が温まる話だ。他にもユーモラスな「戻ってきた話」や「そんな日常」、不気味で恐ろしいカラスにまつわるエピソード「ガラスの瞳」など、打率でいえば一割程度だが何か心の琴線に引っかかるものがある。
とはいえ、ほとんどは「ふーん」で終わる話だが、この本の売りは「実話」かつ「短い」ことで、例えば電車などでの短い読書や百物語のシミュレーションには向いていると思う。あと、非常に珍しいことだが、著作権が「表示-非表示」ライセンスに準じるということで、朗読やコミック化は著者名と書作名を明記すれば自由とあるので、マンガのネタ本としても使えるだろう。
現在のところ「Kindle Unlimited」対応なので、プライム会員の方は気軽に読まれてはどうかと思う一冊だ。
(きうら)