自殺者が幽霊となって100人の人間を救助
幽霊という題名だが、ホラーではなくエンタメ小説
まったく怖くはないが、面白い
おススメ度:★★★★☆
この本は上記の通り、設定こそ「幽霊」という単語が出てくるが、ホラーではなく、どちらかというと、ギャグ要素のあるファンタジー・ハートフルストーリーに近い。怖い本を探している方は、スルーして頂いた方がいいと思う。ただ、面白いのは確かなので、紹介してみたい。
あらすじ-受験失敗で自殺した主人公・裕一は、神様から「自殺した命の償いのために、幽霊になって100人の自殺者の命を救え。そうすれば天国に行かせてやる」と、言われ、同じ立場の他の二人と共に、自殺者の救助に奔走するというもの。時間制限つきだ。
まず、3人の幽霊のキャラクターが面白い。大学生、やる気のないOL、任侠ヤクザの親分。主に彼らの掛け合いで小説が進むのだが、純朴な青年Xやる気のない女X下品なヤクザのおっさん、という組み合わせで色んなパターンで笑わせてくれる。感動もする。
次に、多少ネタバレになるが、自殺者を助けるために、形のあるものに直接、触れたりはできない。ただ、自殺者を見分けて、心に働きかけることができる。具体的には「呼びかける」とすこし「反応がある」という程度だが、その力で自殺者を救う。例えば、リストラされて死にたい孤独なサラリーマンなどの対象を。
この小説の面白さは、その助け方に工夫があるところで、思わず笑ってしまうものから、しんみりさせるものまで様々だ。その助け方が面白く、最初の一人を助ける所を観たら、次も読みたくなると思う。全殺しを目的とする「バトルロワイヤル」とは逆の発想だ。
オチなどを期待する小説ではないが、楽しい展開で、非常に面白い。エンターテイメント小説としては完成されていると言っても過言ではない。ただ、何度も書いてしまうのだが、直接的なホラーではないので、ご注意を。
年間の自殺者は近年、2万人以上3万人以下で推移している。一方、先日の「殺人犯はそこにいる」のように、生きたくても理由もなく殺されてしまう人も多い。世の中は一体どうなっているのか、本当に良く分からない。自殺したくなる気分は分かる。誰でも落ち込むものだ。本当にそう思ったら止められない。でも、もし、身近に自殺を考えている人がいたら、何かできるんじゃないか、と思わせてくれるいい小説だと思う。
気軽に楽しんで、ちょっと考えさせられる、そんな一冊だ。
(きうら)
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