- 交換殺人がテーマのミステリ
- ホラー要素と呼べるものは無し
- 実態はラブストーリー
- おススメ度:★★★☆☆
アガサ・クリスティーにもひらがなで読むと同名の本があり、内容を見る限り、「自分が誰を殺したのか分からない」部分にかけて、タイトルを漢数字にしたのはないかと思われる。文庫版の初版が1980年とかなり古いので、いま、読んで正当な評価になるかどうかは分からない。ただ、2008年に32版までいっているので、相当売れた本なのだろう。
(あらすじ)医師と謎の女がパリで出会って、ひょんなことから「互いに殺したい相手」を告白し合う。医師はそれを座興と考えていたが、現実に「殺しが起きて」しまう。本当にあの謎の女が殺したのか……という流れで殺人事件が起こる。ごくごくまっとうなミステリ。
話のオチは現代ではよくある手なのだが、出版当時はかなり斬新だったのではないかと思う。偉大な先達ということになるのだろう。怖い要素としては、直接的な残酷描写というよりは「女心」が怖いという感じで、要するに構造はミステリ+ラブストーリーだ。
告白するほどのこともないが、また、蔑視と思われたくもないのだが、いわゆる女性が書いた文章に苦手意識がある。余程巧みな作家でもない限り、文章から「男」と「女」の違いがはっきり分かる。例えば男性作家が全く触れないアクセサリーや心理描写があったりする。この小説も、そう言った傾向はあるが、文章自体は真面目で硬質、読みやすい本だと思う。
いかんせん「旬」は過ぎた感はあるが、それなりに楽しめるミステリなので、それ系がお好きな方はご一読を。
(きうら)
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