★★★★☆

スターシップ・トゥルーパーズ≒宇宙の戦士〔新訳版〕(ロバート・A ハインライン/ハヤカワ文庫SF)

投稿日:2017年3月31日 更新日:

  • 原作無視の血みどろ本格SFスプラッター映画
  • エロ・グロ何でもありのワンダーランド
  • 同時に何故か感動する魂の一作
  • おススメ度:★★★★☆

のっけから申し訳ないが、タイトル通りこれは「宇宙の戦士」のレビューではなく、それを「原作」としたスターシップトゥルーパーズのレビューである。「怖い本」の趣旨からすると反するが、やはり、この大傑作を紹介せざるを得ない。

前にも書いたが、監督のポール・ヴァーホーベン監督は、オランダが誇る「変態紳士」である。変態にも色いろ種類がある。ロリコン始め、熟女から尻好き、果ては「パソコンのマウスフェチ」まで、フェティシズムの世界は広大だ。人間には必ず醜い部分があって、それを否定するつもりはない。むしろ私は「変態」賛美派と言ってもいい。しかし、その中でも「紳士」を名乗っていいのは、絶対に他人に迷惑を掛けないタイプの人種を指す。現実に誰かを傷つけたりするのは論外だ。それは「外道」と呼ぶ。

そして、ポール・ヴァーホーベン監督は「映画」の世界で、そのエロ・グロ嗜好を極めてカッコよく且つエンターテイメント化できる奇跡の監督である。よって彼は「変態紳士」として世界中の映画ファンの尊敬および侮蔑を集める存在だ。私の知る限り、ティム・バートン監督やギレルモ・デル・トロ監督と比べても、引けを取らない超一流の「頭のおかしい」監督だと思う。

前置きが長くなったが、宇宙の戦士のあらすじは、装着することで凄まじい力を発揮するパワードスーツを着た主人公が、機動歩兵として異星人の惑星へ奇襲攻撃をかける話だ。過酷な経験を通して、主人公は精神的・肉体的に成長をしてベテラン軍人へと成長していく硬派なSF……という、あらすじを全く無視してやりたい放題やったのがこのスターシップトゥルーパーズだ。

そもそも肝心のパワードスーツが出てこない。予算の結果というがそれは嘘だ。絶対に監督がやりたいことじゃなかっただけだ。その結果、ビバリーヒルズ物語もかくやという青臭い青春ストーリーと、敵の昆虫型宇宙人に虐殺されるスプラッターSFと、エロ要素満載のブラックジョークを混ぜた何だかよく分からない滅茶苦茶なシロモノが出来上がった。ハインラインが映画を観て激怒したとか何とか聞いたことがあるが、それは良く分かる。これは「アルプスの少女ハイジ」を「死霊のはらわた」風にアレンジしたようなものだからだ。しかし、困ったことにこれが面白いのだ。

人間が残酷に死ぬシーンはほとんどの人は嫌いなはず。しかし、ここまで吹っ切れると逆に笑えて来る。死ぬのが当たり前なんだから、残酷さを感じる暇がない。というかスカッとする。ここまで、人間の残虐性を「爽やかに」表現できるのは、天才の所業としか言いようがない。とにかく意味もなく人が死ぬ。ヒロインがゲロを吐く。脳みそが吹っ飛ぶ。胴体が千切れる。敵の大ボスが性器の形をしている……等々、その異常さを挙げると枚挙にいとまがない。

ここまで読んで「嫌だわ」と思った方は正常だ。観ない方がいい。そうでない人は、絶対にこの映画を観るべきだ。理由は三つある。

1.笑うしかない残虐描写の連続。しかし、全然怖くない。むしろアツイ。
2.無名の役者を使ってまで、お金を掛けたCG。今見ても通用する無駄に凝った仕様。
3.男女混合のシャワーシーンがあるのだが、女性の役者が脱ぐのを嫌がったところ「俺が見本を見せる」と言って自ら脱いだ監督が撮った(らしい)。ただ本人が脱ぎたいだけだと思うが、その「心の籠った変態描写」は本物だ。

以上、10回程度見直した私が断言するが、女性、子供、残酷シーンが嫌いな方、エロ要素が苦手、デート用の映画として、ファミリーで鑑賞する、親友に薦めるなどの観かたは絶対にやめた方がいい。間違いなく「引かれる」。だまって楽しく「ズートピア」や「モアナ」を観ればいいのだ。

さあ、ここまで読んで、且つまだ、この映画を観たことがないというあなた。今すぐ何でもいいので、この映画を観るしかない。「ロボコップ」の股間の膨らみ具合について、デザイナーと本気で大喧嘩したという素敵な監督の絢爛豪華なスプラッター世界が手招きしている。ちなみに、今からもう一回観るつもりだ。
小説の評価は偉大な原作に敬意を表し★4としたが、個人的な評価は……推して知るべし。

(きうら)


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