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セメント樽の中の手紙(葉山嘉樹/ちくま文庫)~あらすじとそれに関するネタバレあり、感想

投稿日:2017年4月5日 更新日:

  • 文庫6ページ分で読めるプロレタリア文学の傑作
  • 身を粉砕されてセメントと一体化した男の話。
  • 怖さより労働者のかなしみがメイン
  • おススメ度:★★★★★

どうも今回からちょくちょく投稿させていただくことになりました成城比丘太郎と申します。以後お見知りおきを。最初にとりあげるのは、小林多喜二(wiki)に影響を与えたといわれる作家、葉山嘉樹の名短編。いや掌編ともいえるほどの短いものです。プロレタリア文学の面白さが詰まっています。

話の筋は簡単です。「セメントあけ」の仕事をしている「松戸与三」が、セメント粉の入った樽の中から「小さな木の箱」を発見します。彼は仕事終わりに、その木箱を鬱憤を晴らすかのように踏みつけて壊すと、中から「女工」からの手紙が出てくるのです。その内容は「女工」の「恋人」が、石を砕いて粉々にする破砕器(クラッシャー)に吸い込まれ、身体も骨も何もかも砕かれセメントと混じりあってしまったというものでした。ここからが何か異様で、彼女はセメントになった「恋人」がどんな場所でどんなことに使われているのか知りたいと訴えかけ、自分に返事をくれたら「恋人」の仕事着のぼろ切れを上げるというのです。

切々とした恋人を思う彼女の訴えはかなしくもあるのですが、「恋人」がセメントになる描写などはホラーと言うより詩的で幻想小説のような筆致でもあり、どこかエロティシズムすら感じさせます。(私は何故かここで安部公房の「詩人の生涯」を思い出した。)

よく考えると実際そんなに簡単に人間の身体が粉々になるか疑問だし、そんなセメントが使用されることもないでしょう。これが意味するのは、いわば建築に利用されるセメントに生まれ変わるということ、つまり社会のインフラとしてその身を捧げるということ、人々の労苦がこの社会をつくりあげているということなのでしょう。

作品の最後で、セメントまみれになって働いた「松戸与三」が自らの境遇や生活への嘆息で終わるのところは、「女工」やその「恋人」に彼がどう感じるかということより、労働者の辛い状況を作者は書きたかったといえるのではないでしょうか。さらに彼の台詞に対しての「細君」の突っ込みが秀逸なのですが、それは実際に読んでみてください。

何度も読むことで味わい深くなる作品だと思います。現代のブラックな労働環境にある人にはきついかもしれませんが。蛇足ながら、この先の展開をミステリーとして妄想するのも一興でしょう。

(成城比丘太郎)

補足:青空文庫で丸々読めます「セメント樽の中の手紙
補足2:私も読みましたが、なかなかの哀切具合と残酷さ、そして、現実の厳しさが「セメントのように」ぐっと詰まったいい小説ですね(きうら)。


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