★★★☆☆

病の世紀 (牧野修/角川ホラー文庫)

投稿日:2017年4月10日 更新日:

  • 様々な病気が人を殺すバイオSFホラー
  • けっこうグロイので注意
  • オチはイマイチだが、病気系ホラー好きにはいい本
  • おススメ度:★★★☆☆

(あらすじ)色んな奇病が発生する世界が舞台。人体を発火させるカビ、人間を人肉食にする病気、セックスで殺人鬼に変える謎のウイルス。人類はその病気達によって滅ぶのか、その病気をばらまいたのは誰なのか? 2000年初版だが、なかなか現代の状況を先取りしたバイオSFホラー。

と、聞くとすごく面白そうに見えると思うのだが、どうも印象に残っていない。設定というか、出だしというか、テーマは最高だ。グロ描写もあって、その手の残酷系ホラーが大好きな人は満足できんじゃないかと思う。私もこの出だしが良かったので、新書で買っている。

ざっと再読をしてみたところ、問題点は奇抜すぎる点と、オチが弱いところだと思う。全体的に文章も読みやすいし、凡作とはいえないが、傑作でもない。実際の病気をネタにすると、あまりシャレにならないが人体発火病とか、フィクションとして楽しく読める。

人種者別者の登場人物も出てきて、日本人を思い切り馬鹿にする。日本語を喋られないことを詰問すると、日本人をネズミ例えて、ネズミの言葉を人間が覚えるかね? と、切り返す。なかなか吹っ切れたいい描写だと思う。

昨今、人種差別が世の中を賑わせているが、個人が言う分にはケーベツする部分があっても、自由だと思う。嫌いだったら嫌いでいいじゃないか。私は音楽家のセルゲイ・ラフマニノフが大好きだが、彼が存命していた時代のソ連人は嫌いだ。アメリカの文化やジョブスやゲイツは好きだが、原爆を落とした国として今でも恨んでいる。その口でよく、核拡散防止なんて言えるな。盗人猛々しいとはこのことだろ?

それはともかく、本書は水準以上のグロさと面白さがある。万人向けではないので、星は3つだが、機会があったら読んでみたらいいと思える一冊。蛇足だが、現代日本は本当に「病の世紀」だな、と実感する。

(きうら)

(中古/楽天)


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

ヒロシマの人々の物語(ジョルジュ・バタイユ[著]・酒井健[訳]/景文館書店)~概要と感想

バタイユの「ヒロシマ」論。 ナガサキにも通じるものがある。 後半はバタイユの思想についてさかれている。 おススメ度:★★★☆☆ 本書は、バタイユが、ハーシーのルポルタージュ『ヒロシマ』(1946年)を …

踊る男 (赤川次郎/角川文庫) ~あらましと感想

33篇のショートショートミステリ アイロニーとユーモアに溢れる 一番古い話は1979年に朝日新聞に掲載 おススメ度:★★★☆☆ 軽く洒脱な文章で名を成した赤川次郎による、さらに軽さを増したショートショ …

オブ・ザ・ベースボール(円城塔/文春文庫)

一年に一回人が落ちてくる。それをバットで打ち返す人の話 不条理小説とも単純な人生の比喩とも取れる シャープな文章。怖くはないが少しだけグロイ所も おススメ度:★★★☆☆ 文學界新人賞受賞作、ということ …

夜の夢見の川(中村融・編/創元推理文庫) ~あらましと感想、軽いネタバレ

12編の「奇妙な物語」。 ホラー要素もあるが、どこかとらえどころのない話。 翻訳ものに向かない人には、あわないかも。 おススメ度:★★★☆☆ 『麻酔』(クリストファー・ファウラー)…歯科治療にきた「サ …

とにかくうちに帰ります(津村記久子/新潮文庫)

(小さな)職場という狭い範囲での出来事。 あるフィギュア選手をめぐる話。 豪雨の中で必死に歩く姿が、人生の謂を思わせる。 おススメ度:★★★☆☆ 『職場の作法』……「私」こと、「鳥飼」の視点から職場の …

アーカイブ