- 気持ち悪いとはこういうことだ
- 貴志作品で二回読みたくないのはこれだけ
- 意外に読みにくい文章が惜しい
- おススメ度:★★★✩✩
(あらすじ)主人公の北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医だ。その恋人で作家(!)の若者が新聞社が主催したアマゾン調査隊に参加してから、性格が変転し、死への恐怖を忘れたようにふるまい自殺。さらに、調査隊にいたメンバーも次々と……。いったいアマゾンで何があったのか? 「天使の囀(さえず)り」とは? ジャンル的にはバイオ・ホラー系統に位置すると思うが……。
とにかく気持ち悪いの一言に尽きる。こんなネタを考えるのもどうかと思うが、それを「作品」にしてしまった貴志祐介には脱帽する。もし、自分が読書を「清らかなもの」と信じていたら「何なんですかこれは!」と怒り狂っていたかもしれない。最悪のオープニングからどんどん悪化し、あらぬ方向へ展開する物語。そして、ラストの狂気。未来永劫、教科書に載ったりはしないでしょう。
ただ、気持ち悪いといっても様々な気持ち悪さがあるが、この本の場合、
生理的にくる
のである。「黒い家」も「クリムゾンの迷宮」もその手の描写は多々あったが、前者のメインは人間の悪意、後者のメインはゲーム的サスペンスで、今回のようにメインディッシュに「生理的嫌悪感」を持ってきていなかった。だから、貴志ファンでもこの本だけは駄目だという人も多い。
欠点としては、冒頭からメールの内容で始まったり、途中で視点が入れ替わったりし、物語にダイナミックな切れがない。作者も色々考えたのであろうが、その読みにくさも「気持ち悪さ」を助長しているようにも思える。話としては面白いので、それでも読む価値はあると思うが。
ちなみにこれに匹敵する生理的嫌悪を味わいたい奇特な方は「お初の繭」か「孤虫症」を「おススメ」しますので、ぜひどうぞ。
(きうら)
![]() 天使の囀り [ 貴志祐介 ] |