★★★☆☆

CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(内藤了/角川ホラー文庫)

投稿日:2018年6月25日 更新日:

  • 良くできた猟奇系犯罪捜査モノ
  • どことなくコミック的なキャラクター
  • 貶す要素はないが……
  • おススメ度:★★★☆☆

タイトルからして、本サイトの主旨に合った一冊。Kindleをお持ちなら、サンプルをダウンロードして見られれば分かるが、サンプル内だけでもその猟奇的な描写は垣間見ることができる。ただ、とにかく陰惨なホラー一辺倒という訳ではなく、登場人物に漫画的なコミカルさを加えることで、読みやすいように全体を中和している。この手の小説のプロが、正に読者の嗜好を狙いすまして書いたような小説だ。

(あらすじ)女児が猟奇的な方法で惨殺される事件が起こった。全てはそこが始まりだった。時は経ち、新米刑事の藤堂比奈子は、ある事件に取り組んでいた。それは、殺人犯たちが普通では考えられない方法で死んでいったからだ。一体なぜ、彼らは死んでいったのか。動機は? 犯人は? ホラーとサスペンス、それにちょっとしたコメディ要素が混じったサスペンス・ホラー・ミステリ。第21回日本ホラー小説大賞読者賞受賞。

これは褒め言葉でもあり、若干の皮肉でもあるのだが「良くできている」内容である。導入から途中の展開、登場人物のキャラクター性、娯楽性、そして、ホラー性など適度なバランスで配置されており、読みやすく且つ興味を引く。この先どうなるんだろう? と、いう期待を引っ張っていく技術はなかなかのものだと思う。皮肉というのは、既視感があるためで、これは要するに2時間ドラマのフォーマットなのである。起承転結を綺麗に守った、そして、読者の期待する要素をきちんと開示する「プロ」の作品である。

例えば、主人公の藤堂比奈子の設定も、読者が共感できるようによくできている。かわいい女の子が刑事としての自覚を持つまでの成長物語として読むこともできる。郷里の唐辛子の缶を常にお守り代わりに持ち歩いているという設定は、漫画一歩手前だが、ちゃんと伏線として回収するのはなかなか。その他、解剖好きの死神女史や先輩刑事のガンさんなど「どこかで見たことがあるけど、分かりやすくて親しみやすい」キャラクター造形で、安心して読むことができるだろう。

しかしである。私のような捻くれたホラーファンからすれば「お約束」を悉くきれいになぞっていくこの小説は、途中で興味が半減してしまった。半分くらいで、オチも大体分かるようになる。もちろん、一ひねりされているが、まあ、こんなものだろう。

ただ、捻くれていないホラーファンの方には、このキャラクター造形は親しみやすいと思うし、「ホラーを読みたいけど、あんまり怖いのはいや」という方にはぴったりだろう。そんなジャンルがあるのかは分からないが、これはライトホラーサスペンスと呼べるような作品である。ただし、殺人シーンは結構本格的に猟奇趣味全開なのでそこだけは「ライト」ではないのでご注意を。

私が見たかったのは、このほぼ完成された世界観の向こう側にある、更なる恐怖である。そういう意味では前回読んだ「うなぎ鬼」の方が不気味だったが、どちらがいいか人に聞かれて進めるのはこっちの方だろう。

どうやら、けっこう売れている本らしく、続編もいっぱい発売されている。主人公のキャラクターに依存した小説だからだろうか。何となく、海外ドラマのシリーズものを思わせるような部分もある。

さて、ここまで書いてみたが、ライトなホラーを求めている方には、実に合っている一冊。逆に、個性的で常識はずれの狂気を読みたい方には余り勧められない一冊である。どうぞご判断を。

(きうら)


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