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★★★☆☆

ELDEN RING(フロムソフトウェア/PlayStation5| 4/Xbox Series X|S / Xbox One / Steam) 2022/6/24Update!!

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  • システム的には完全にソウルライクシリーズ
  • 相も変わらず厳しい難易度
  • 本作のテーマの探索感は中途半端
  • おススメ度:★★★☆☆

本作はソウルシリーズの生みの親・宮崎英高がプロデュースし、脚本(設定の一部)をあの「ゲーム・オブ・スローンズ」のジョージ・R・R・マーティンが手掛けるといういうことで、ダークファンタジーアクションRPGとしては最大級の期待を集めていた作品であった。ただ、ふたを開けてみると、ちょっとフィールドが広い「ダークソウル4」という感想が多く、必ずしも革新的なゲームにはなっていない。

ちなみにソウルシリーズはPS3のデモンズソウルに端を発するゲーム群で、ハードな世界観と雑魚にも瞬殺される高難度のアクションRPGを意味し「死にゲー」と呼ばれる。世界観やシステムが違うブラッドボーン、RPG要素が薄い忍者アクションSEKIROなどの派生ゲームも含まれる。ゲームファンに与えた影響は絶対で、ソウルライクゲームという「暗い世界観と高難度の死にまくるアクションRPG」という新しいジャンルが生まれ、フォロワーが多数発生した。

(一応ストーリー)永遠の女王が持つエルデンリングという偉大な力を持つ指輪が砕け、その破片を持ったマリカの子供たちは暴走し始めた。死に切れぬ人々である褪せ人(主人公)と呼ばれる者たちがリングを求めて世界を巡る。
(指輪物語の持ち主の白黒を入れ替えたような設定だ。多分意識してそうしたのだろうが「ニーベルングの指環」などもあるし……)

本作が過去のソウルシリーズと一線を画するのは、オープンワールドをシステムとして採用している点だろう。これまでは、自由度に差はあるが固定マップの攻略が主な目的だった。基本的にそのフィールドのボスを撃破しないとステージが広がらない一本道のシステムである。

オープンワールドRPGというと、古くはオブリビオン/スカイリム、ウィッチャー3、近年ではゼルダの伝説ブレス・オブ・ザ・ワイルドやHorizon Zero Dawなどをイメージされると思うが全く違う。そういったゲームに見られる「何をしても自由」「どのストーリーを勝手に進めても構わない」というプレイ感を味わうゲームではないのだ。どちらかと言えば、同じく大作の「ゴーストオブツシマ」の方が近いが、あれよりもさらに自由度は低いし、革新的なシステムになっていない。ソウルシリーズには明確な物語がないので、ストーリーを楽しむゲームでは無かった。本作にはその点を期待したのだが、宮崎氏のインタビューでジョージ・R・R・マーティンは本編のストーリーではなく下敷きとなる神話のような部分を担当してもらったとある。私から見ればもったいない。逆に言えば本編は今まで通り宮崎氏のイメージが先行しているということなので、本作の持つソウルシリーズ感に納得した。

誰が何と言おうと、極端に強い敵に意地の悪い敵の配置、それを地道な努力で突破していくプレイ感覚は全くブレないソウルシリーズの新作のそれである。残念なのは同シリーズと比較すると、ブラッドボーンほど突き抜けてもおらず、ダークソウル3の完成度はなく、SEKIROのアクションには遠く及ばないという作品で、宮崎氏の言う「探索感」と引き換えに、ゲーム自体は凡庸なソウルシリーズに戻ってしまったように思える。

確かにどこでも行けるのだが、どこにでも強い敵が居るので、結局、ゲームの動線通り動く方が効率が良くなるというのは残念だ。またフィールドで出来ることは、アイテムの探索か余り役に立たない素材集めくらいしかない。ストーリーに関係のないダンジョンやボスも居るが、何しろ強い敵ばかりなのでウロウロしているだけで死んでしまう可能性もあるのだ。基本はしゃがんでステルスプレイを行いつつ、敵を各個撃破という戦い方になる。SEKIROやゴーストオブツシマで散々やった方式である。本作はSEKIROのアクション性やツシマの豪快さが無いので、ひたすら潜んで背中を刺して、逃げ回ることになる。それがソウルシリーズの元々のゲーム性なので不満はないが、やはり既視感が強い。この辺が本作を酷評している人たちの不満点だろう。

20時間くらいやった実際の感想としては、過去最高とは言わないがかなり難しい。特に最初の大ボスとなる忌み鬼、マルギットが無闇に強い。遭遇時に調べてみるとまだ5割の人しか突破していなかった。素早く重い攻撃を持っているのはもちろん、ガードしてもダメージを受ける反則技を連打してくるのである。私も数時間やっても半分も体力ゲージを削れず一旦諦めた。

仕方なくフィールドを回ってレベルを上げ、補助アイテムも手に入れるなど数時間ほど増強に努め再戦。マルギッドとはまた3時間近く激闘を繰り返し、何と最後は「相打ち」で倒した。どういう状況かというと、マルギッドをあと一撃で終わりというところまで追い詰めながら反撃を受け、画面には赤い「YOU DIED」の文字が表示された。しかしこのゲームはそこから本当のゲームオーバーになるまで何秒間かのラグがある。その隙に私が召喚していた仲間が生き残っていてマルギッドに止めをさした。画面には「GREAT ENEMY FELLED」の文字と実績解除の音がした。しかしその余韻を味わうこともなく敢えなくゲームオーバー。再開してみると確かにマルギッドを倒していて安心した。この形の相打ちは初めてだが、死闘感はソウルシリーズの醍醐味で、しばし感動したのも事実である。決して下らないゲームでは無い。

ただ、このボスに直線的にたどり着いても、回避を100%決められるごく一部のプレーヤー以外は挫折することも多いだろう。これはボスのみを追うなというメッセージだろうが、それにしては余りスマートでは無い。ストーリーラインは明確にこのマルギッドを指しているのだ。あとほぼ最初に出会うツリーガードという騎乗した騎士の敵が居るのだが、こいつもマルギッド級に強い。腹が立つのでマルギッドを倒した勢いで討伐に出かけたがそれでも簡単には勝てなかった。

そして今、城の攻略が続いているが、こうなるとオープルワールドでも何でもなく、ひたすら辛いソウルシリーズ特有のダンジョン攻略ゲームだ。敵の配置が最悪に意地が悪い上、無駄に強い敵が徘徊していてどこに行ってもビクついてしまう。実際殺される。フィールドは確かに広いがそのせいで迷いまくる。レベル上げは苦しい。

以上、任天堂系が得意とする「敷居は低いがやり込み要素もある」ゲームデザインとは対局で「敷居は高くやり込み要素は充分あるが序盤も中盤も終盤も苦しい」というマゾヒスティックなゲームであることには間違いない。RPGなのでほぼアクションゲームのSEKIROほどの絶望感はないが、そんなにウキウキして遊ぶゲームでもない。全シリーズをクリアした私は知っているが、この陰鬱な世界を踏破した時、喜びよりも「もうやらなくていい」という解放感の方が大きい。とはいえまだまだ何かあると思うので、そこはネタバレなしで自力で楽しみたい。ソウルシリーズの入門としては決してオススメしない。PS5を持っているなら爽快感も数段上のブラッドボーンあたりはどうだろうか。ただ、年齢的にもそろそろ重たいジャンルになってきた。最後までいけるか?

※その後さらに12時間以上プレイした現在でも進行度は16%となっている。恐ろしいことに「大ボス」はこのマルギットしか倒していない。このペースでいけば完全攻略には250時間以上必要だ。メインストーリーのクリアだけでもたぶん100時間はかかるだろう。基本的にシングルプレーが前提のゲームでは異常な物量と言える。私が放浪に目覚め、あちこちウロついては強いのか弱いのか分からない中ボス狩りに熱中したかも知れない。ただ、マルギットは一番弱いボスだと作中で脅されるので、本音を言うと先に進みたくなくなる。世界の放浪はそれなりに楽しい。突然、絶対倒せないボスが雑魚と一緒に配置されていたりするので油断はできない。システム的によく分からないことも多い。助っ人を召喚できるアイテムがあるのだが、それが使用できるシチュエーションがどういう基準で選ばれているのか非常に悩む。このゲームシステムで、被攻撃対象が一人増えるというのは体力が2倍になるより何倍も価値があるのだ。魔法や信仰といった要素も使い辛い。キャラクターデザインも退化しているように思う。そんなことをウダウダ考えながらおなじみの「ねずみ」という雑魚に簡単にやられて笑う。これはある種の宗教の進歩的な表現であり、私はその教徒かもしれないと考えたりもしている。

※2022/5/6追記 GWを利用してこのゲームの苦役から解放されようと目論んだのだが余りに甘い塩梅であった。大ボス2体を撃破してすでに70時間弱。あと4体……この間に倒した中ボスらしきものは数知れず。一体いつになったら終わるんですかね。さっきも雑魚のネズミにやられましたよ。美少女剣士が針を胸に差して病気を治すのは杣(吐)燎へのリスペクトは考えすぎか。インディゲームならマルギットが大ボスでもおかしくないボリュームだ。ゼルダの伝説BOWでも感じたが、いったいどれだけの異能者が集まればこんなゲームを構築できるのか。もっとはっきり言えば、このゲームが私の40年以上に渡るコンピュータ―ゲームの終焉であっても構わないくらいだ。強いボス相手にレベル上げ数時間なんてドラクエ3か。ダークソウル4なんて心無いことを書いたが、下手したらこれまでのシリーズなら2周していてもおかしくない。マリオカートやどうぶつの森、種々のスマホゲーと比べると、住む世界が違う。あちらはあちらで色々おかしいと思いますが、こっちもこんな感じ。

この圧力はドラクエ2、スーパーマリオブラザーズ2、バイオミラクルぼくってウパ(かな表記は適当)、ザ・スーパー忍 、いや、半分くらいのファミコンゲームと同じ感覚だ。密度はそのままに幅が広がった感じか。ドルアーガの塔は攻略本を見ないと解けない理不尽な謎だらけだった。このゲームは時間さえかければ、きっとだれもがクリアできるだろう? ん? クリア…………………。

2022/6/14 などと書いていたのは1か月以上前。まだやっている。プレイ時間は135時間を超えた。過去、超大作と呼ばれる作品は数えきれないほど遊んだが、これほどのボリュームを持ったゲームを私は知らない。ようやく本質が見えてきたが、これはオープンワールド風のボス連撃アクションRPGだ。広さだけで言えば、それほどでもないのに、ボスと呼べる敵だけで100体以上いるらしい。通りで、倒しても倒しても新しいボスが登場するハズだ。その辺のちょっとした地下に強烈なボスが潜んでいる。苦労して倒すとその後そいつが2体になって襲ってくる……。こちらも十分レベルは高いはずなのだが、常にちょっと自分より強いボスと遭遇する。さすがにこのレベル(130)くらいなってくると、こちらの打てる手も増えてくるので、行き詰まるという感じはない。ただ、果てしない。終わる気がしない。最初の更新が3月だし。
ゲームってなんかこんないつも苦しい感じだっけ? それでもいい気がしてきた。何か目の前で、キラキラしたものを口からノヴェールしてくる木の根っこの竜みたいな奴がいるけど、ここ、ただのマップの端っこだよ。あーまたキラキラしている。はい良かったよかった。

※2022/6/24追記 ついにラスボスを倒した……というか倒してもらった。レベルは160あったが、ラスト4,5匹のボスは強すぎてアウト。ネットワーク越しに助っ人を呼んで、ただ、倒されない様にしているだけのラスボス戦だった。占めて148時間。「この支配からの卒業(卒業/尾崎豊)」が頭をよぎる。十分過ぎるくらい楽しんだ。じゃあ次は何をするのかと言われると困るが、もう「このゲームをしなくてよい」というのは最高だ(誉め言葉)。さぁーて、Xboxのゴールドパスに入るか、やり残しているフォートナイトを遊ぶか、リングフィットアドベンチャーでも買うか。

とりあえず、ゆっくり寝たい。そして、エルデンリング以外のゲームが存在する世界に戻ってきたことを実感したい。たとえ、それがすぐに戻りたくなるところだったとしても。

(きうら)



-★★★☆☆
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