★★★★☆

Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ/PS4)

投稿日:2021年3月8日 更新日:

  • 遊びやすいオープンワールド時代劇アクションアドベンチャー
  • 美しいビジュアルと洗練されたシステム
  • デザインには微妙な違和感
  • おススメ度:★★★★☆

タイトルにツシマ(対馬)とある通り、鎌倉時代の元寇(蒙古襲来)を下敷きにフィクションを交えて描くオープンワールドアクションアドベンチャーゲーム。システム的にはゼルダの伝説・ブレスオブザワイルドやウィッチャー3の系譜だろう。敵を倒したり、イベントをこなすと、経験値に近い「噂」という値が上がり、体力や気力といったステータスが上がるので、RPGと呼んでもいいと思える部分も多い。

歴史に疎いので、元寇を詳しく説明するのは諦めるが、いい加減に言えば、モンゴル軍に占領された対馬を、負け戦の生き残りである境井仁が、敵将コトゥン・ハーンを倒して対馬から押し返すというストーリー。ちゃんと神風も再現されている。

最大の長所はその美しいグラフィックとストレスの少ない操作性の良さでは無いだろうか? 海、森、山、川……ススキや彼岸花の咲き乱れる草原など、幻想的ですらある。ゲームにグラフィックの美しさは不要という人も、思わず手を止めて眺めてしまう景色が必ずあるだろう。ゼルダほどアイテムによる移動の制約もなく、ウィッチャー3より快適な操作性で、愛馬に跨って駆け回るのは、単純に楽しい。それに比べての話になるが、キャラクターの造形は、風景ほど出来の良さを感じない。主人公も一応カッコイイデザインなのだが、ほんの少し違和感がある。叔父である志村というキャラクターもしかり。しかし、男性キャラはまだ小さな違和感だが、女性キャラがあからさまになんか違う。美人・不美人という話ではなく、ほぼ全ての女性キャラクターがかなりの丸顔なのである。ヒロイン的位置付けの「ゆな」にしてもそうだ。狸顔とでも言おうか。製作陣は美人野盗として描いているのだが、どうも「おばさん」ぽいのである。いや、それが狙いならそれでもいい。この世界で変に萌えキャラが出てきたら萎えると思う。しかし、徹底して一般的な美人イメージは排除されている。よく言えばオタクに媚びないデザインとも言えるが、とにかく私の目には泥臭いというか、可愛い要素は皆無に思える。もちろん、海外のスタジオが作ったからかも知れない。ただ、設定その他は非常に日本的だ。日本的過ぎると言ってもいいだろう。

また、ゲームには首が飛ぶなど激しい暴力表現は登場するが、当然あったであろう性暴力は全く表現されない。美学といえば美学。ただ、ここまで徹底していると、むしろ性的要素は一切排除したかったとしか思えない。男というか、戦いのみの世界観で構築されている。血がほぼ泥のような色なので、かなり残酷さは緩和されているが……。

その戦闘システムは割と個性的だ。基本的な切る、避ける、弾くなどの要素は他の剣戟ゲームとあまり変わらないのだが、特定の敵をロックオンしても、その方向を正面にとらえないという点が最初はかなり戸惑う。いわゆる「(Z)注目」という操作である。何しろ前述のゲームや最近やっていた隻狼や仁王2も同様だったので、何か自分の操作ミスかと思った。しかし、これは基本的に大多数の的と「乱闘」する様子をシステムで表現していると思う。極端に言えば主人公一人で全てのモンゴル軍と野盗、悪漢たちを皆殺しにしてしまうゲームなので、薙ぎ倒す感じを求めたのだろう。一騎当千を地でいくような戦い方だ。もちろん、話が進めば、弓やクナイ、爆発物などのアイテムを扱ったり、背後や頭上から暗殺したりするのだが、基本は鎌倉武士よろしく名乗りを上げて戦うスタイルなのである。それだけ書くと無双ゲームのようだが、雑魚でもやられる可能性は常にある。なぜなら敵は、剣、盾、槍、棍棒、弓の5タイプに分けられるが、こちらはそれらの敵に合った4つの型を瞬時に切り替えて対処するというジャンケン的な要素があるからだ。余った弓は必ず味方に向けて避けろと掛け声が上がるので二つのボタンを押して避けるという操作が求められる。しかし、最初はただ切る・避けるしか出来ないので、序盤が最も難しいかもしれない。ちなみに難易度はいつでも変えられるので、行き詰まることはない。中盤はまさに爽快だ。様々な技を覚え、剣や鎧を鍛え、大群の中に飛び込んで、切りまくる。私は結局、使えば楽と知りつつ、サブ武器や暗殺は余り行わず、この「殴り込み」スタイルを貫いた。そして中ボスを倒した時に「お、鬼だぁ」と言われた爽快感は最高であった。「勝った」と思いましたね。補足になるが、もちろんボスはタイマン勝負になるのと、名乗りを上げてボタンを押すタイミングで敵を一撃で倒す変わった要素、クライミングのような要素もある。意外なのは物理演算が最小限で、オブジェクトがほぼ壊れないこと。ゼルダのように地形を利用するようなシーンはほとんどない。

だだ、後半になると主人公のレベルがカンスト(上限値に到達)するのが後半の初めのほうと、割と早い。これが割と痛い。こちらが優勢になると、一部のボス戦を除くとルーティンワークになってしまうからだ。

一応、装飾具のようなものを集めたりも出来るが、必須というわけでも無く、やり込み要素が少ない。一つレベルを上げるのにあれこれ素材を集めさせらることもないので、これも狙ったゲームデザインかとも思う。アクションはほどほどに緊張感を持たせ、RPG部分も大らかにする。その代わり、風景とストーリーを楽しんでもらう、そんな製作陣のこだわりか。

その肝心のストーリーは、個人的にはよく出来ていると思う。基本的に遊び要素は無く、程度の差はあれ、ほとんど悲惨な話だ。それも裏切り、復讐などをテーマにしている。特にメインストーリーが切ない。主人公の境井仁は、基本は孤独な侍で、人々のために絶対悪の蒙古軍に孤軍奮闘する。しかし、叔父であり父親代わりの志村からは「侍の道に逸れるな」と、暗殺や暗器の使用を咎められる。彼が強くなればなるほど、侍の本道(正々堂々と一騎打ち)から離れて行く。人々からは冥人(くろうど)と呼ばれ、尊敬もされるが半ば恐れられている。やってることは正義の味方であるのに、本物の侍では無いという自己否定と戦わなければならない。この辺は充分に共感できるテーマで哀切極まるラストまで楽しめるだろう。

サブストーリーも弓の師匠との因果な関わりや女傑や僧侶の復讐劇の手伝いなど、重たいテーマばかりだ。ただ、弓の師匠はあからさまにウザいことを言ってきたりして、ここはちょっと笑える。たまに仲間と共闘する時は、イベント戦のようでとても楽しい。基本はやはり真正面討ち入りスタイルだが、待ち伏せされて弓を一斉に浴びせられた時と、50、60人にも上る敵が画面内に表示された時は大袈裟でも無く感動した。これぞ令和のゲーム、と思わないではなかった。

思えば完成されたオープンワールドゲームとして一斉を風靡した「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」から何年経ったのか。かのゲームと比べるとかのゲームと比べると、本作は進化した部分も多いが、革新的とまでは感じなかった。しかし、比べるのは酷というものだろう。調べると15年も前のゲームだった。しかし、当時において、すでに自由に歩き回れて360度見渡せる世界と独自の思考を持った住人とストーリー性を併せ持ったオーパーツのようなゲームだったのだ。話は逸れるが、それまでドラクエなどで、創造で補っていた風景が全て見えた。城に入る時門を見上げること、洞窟から逃げたのに敵が洞窟から飛び出して来たこと、さらにその敵に囲まれて苦戦していると、旅の騎士が加勢して戦ってくれたこと、それにも関わらず、ゴブリンに刺されて横倒しになり、画面も横になった中で、なお戦っている騎士がゆっくりフェードアウト……。本作はオープンワールドであるが、そういった偶発的な要素は排除されている。これは意図的なもので比べるべきでは無いが、全編に漂う孤独感は、ちゃんと会話が成立するのが、ほぼ5人くらいということに起因するかも知れない。

とびきり美しい挿絵にある程度介入できる時代劇ゲームというのがまとめになるかもしれない。

なお、共闘できるオンライン要素もある(追加された)が、個人的に対人ゲームは極めて苦手なので、それを含めると評価が変わる可能性がある。

とりあえず、PS4ないしは5をもっているなら、遊んでみてもいいゲームであるのは間違いない。

(きうら)

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