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★★★☆☆

MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (内藤了/角川ホラー文庫) ~ややネタバレ

投稿日:2019年4月1日 更新日:

  • 新人婦警のほのぼの事件簿(?)
  • とはいえ、猟奇殺人を扱っている
  • 都会の孤独がテーマか。読みやすい。
  • おススメ度:★★★☆☆

タイトルにある堀北恵平は「ほりきたけっぺい」と読むのだが、女性の新人警察官だ。祖父が付けた名前という設定だが、インパクトの割に深い意味はないらしい。この主人公が東京駅の交番に配属された辺りから物語はスタートする。山出しの真っすぐな女性警官が、東京という巨大な都市の中で、事件を通して少し成長する様子を描いている。

とはいえ、出だしは猟奇殺人事件である。具体的には、箱に詰められた少年の全裸死体が見つかるというもの。これを新人警官が先輩の刑事と追うというバディムービー的な設定になっている。事件だけ見れば完全に変態的だが、実はこの設定には重きを置かれていない。言い方は悪いが、読者を引き込むための撒き餌のようなもので、この後、ドロドロのホラー的展開を期待すると裏切られることになる。

では何が描かれているかというと、主人公の明るく前向きな生きざまである。彼女は交番での勤務を遂行するために、出勤前に東京駅を歩いて地理を覚えるという努力をし、東京駅に頭を下げて一日の勤務の無事を祈るのである。また、ホームレスを見つけては律儀に心配する。それはもう見事なくらい誰もが思い浮かべる真面目な警察官の卵そのものだ。ただ、これといった特技があるわけでもなく、終始この素朴な視点で話が進行するので、プロローグの割に肩透かし気味であるのも確か。一歩間違えれば、どこにでもある平凡な刑事ドラマそのものだ。

作者もそれは分かっていて、何とファンタジー要素を多少混ぜてくるという力業を見せてくれる。とはいえ、ファンタジーと言っても、いきなり駅の中から魔法学園へ向かうという訳ではなく、あくまでも「夢か幻か」の境目をさ迷うのだが、一読してその部分がファンタジーだとは分かる。なので、リアルな刑事ものというよりは、三行の部分に書いた「ほのぼの事件簿」という性格が強い。各章のタイトルもベタ過ぎてどこか脱力させられる。

また、犯人がらみで伎楽(ぎがく/仮面をつけて踊る古代舞踊。タイトルの由来)の説明も入るのだが、正直、これは取ってつけたようなもので、猟奇的な犯人が必要>個性的な動機がいる>では伎楽はどうだ、というような思考で選ばれたものと思われる。と、いうのも主人公の内面には踏み込まれるが、犯人に対しては非常に淡泊な描写しかなく、結局「異常者だから」で収まってしまう。せっかくの素材が生きていなくて勿体ない。少々古いが、例えば「羊たちの沈黙」のように、犯人側に鬼気迫る描写があれば、後半の盛り上がりも違ってきたのではないか。

あと、少々ズルいと思うのは、この小説はこれで完結しているのではなく、明らかにシリーズ化を意図して作られているということ=伏線を本編ですべて回収していない。それはそれで構わないのだが、少々大胆だな、と思う気もした。それも作者は了承済みのようで、何と、2019年夏に刊行される続編のプロローグが、巻末に収録されている。私も結構、娯楽小説を読んだと思うが「続く」ではなく、刊行されていない次の作品の序盤が続けて掲載されているのはサプライズだった。この小説で一番印象に残ったのはここだ。しかも、次の話の方が面白そう。なかなか、策略家ではないか。

総評としては、猟奇殺人事件がある割にホラー的要素は薄い。少年愛を描いているが、ほとんど形だけ。では、全く楽しめないかというとそうでもなく、期待するところを間違わなければ普通に読める。「素朴な女性が東京を舞台に成長する」という朝ドラのようなテーマに興味があれば好感が持てるだろう。靴磨き屋のペイさんはありがちだが味のあるキャラだ。

またもや微妙な評価になってしまったが、タイトルだけ見て読んでいるのでこういう結果になる。続編は読みたいような、そうでないような。もし、気が向いたら夏ぐらいに感想を書いているかも知れない。

(きうら)


-★★★☆☆
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