- パタリロ6世と悪魔の公爵が出てくる番外編
- 権力闘争からパターン化された「仕事人」風の展開に
- パロディ満載の22巻。この後も続く。
- おススメ度:★★★☆☆
「君たちはどう生きるか」などを読めば、ブログ的には話題になるのかな、と思いつつ、そういった世の中の流れに流されることなく、というより最初から船を出していない当ブログでは、なぜかパタリロ、そして、22巻。同じ怪奇+少女漫画+ギャグという構図であれば、仏の漫画賞「遺産賞」を受賞された楳図かずおを取り上げるべきか。しかし、唯一無二という意味では、魔夜峰央は漫画界においてフォロワーのいない(というかしようがない)孤高の存在だと思う。という訳で、徒然なるままに「パタリロ!」の紹介を。
「パタリロ!」は1978年に少女漫画雑誌で連載が始まったギャグ漫画である。マリネラ王国という架空の国の国王パタリロ(8世)を主人公に、MI6のスパイ・バンコランとその愛人マライヒ(男)、パタリロに仕える公務員(?)のタマネギ部隊などが、ベタなギャグを繰り広げる。実はギャグマンガでありつつ、当時としては高度なストーリーも併せ持っており、純粋に物語を楽しめるという点が斬新であった。そして、下書きをしないという恐ろしく繊細な画風。極限までデフォルメされたその絵は、浮世絵などに近いもので、描けと言われてもそうそう描けるものではない。こればかりは文字ではなく、本編を読んでほしい。蛇足だが、大体今回紹介する巻ぐらいまでが全盛期で、この後は惰性感を感じるので、とびとびにしか読んでいない。先日開いた時もノリは一緒だった。
本題。なぜ、パタリロかと言えば、やはりホラー要素を多分に取り入れている点があるからである。初期からもちょくちょくホラー的な要素はあったが、この巻ではホラー要素を前面に押し出して、パタリロ8世の夢という設定で、パタリロ6世が魔界の公爵アスタロトと一緒に、価値の高い魂を巡って、魔界の派閥争いから、ちょっとした仕事人風の「悪が偽善を懲らしめる」的なお話まで、バラエティに富んだ連作となっている。ちなみに、次巻もこの展開は続いていく。基本的にはアスタロトはバンコランと置換可能なキャラなので、基本のフォーマットは同じとも言える。
読み返してみると、まず、実在の悪魔をモデルに、パタリロ風に読み替えた悪魔たちが魅力的だ。ルキフェルやベールゼブブなどのお馴染みの名前から、嘘しか言わない悪魔ベリトや部下の羊顔のブネ、お転婆だが純情な猫娘(!)まで登場する。ベリトは嘘しか言わないという自分のキャラクターを武器に100万回に1回の真実で、アスタロトを罠にはめたりし、その辺が単なるギャグマンガにない面白さになっている。
そして、後半は「ソロモンの指輪」や「やらせに熱心なテレビクルー」などが、アスタロトに懲らしめられるというネタで、この辺は、ギャグテイストのホラーとして十分に通用する内容だ。特にアスタロトに逆らったテレビクルーの末期は悲惨かつ直接的な残酷描写がある。覚えている人も少ないかも知れないが、テレビアニメ版の作風と比べると随分と大人向けなので、ご注意を。さらに男色趣味は相変わらずで、この点は素直にはうなずけないが(少年が犯されていたりする)、時代を先取りしていたともいえる。
あと、おしんからナウシカ、ペコちゃんからマイケル・ジャクソンまで、ありとあらゆるパロディがあるのが、再読しての再発見だった。まさか、こんなにあからさまに描いていたとは。分かる人にはわかると思うが、魔夜峰央が描く「ナウシカ」というだけで、一見の価値あり。ちなみに普段は著作権の関係で、転載は控えているが、元がパロディということもあるので、とくべつに魔夜峰央のナウシカを掲載して終わりにしよう。
うーむ。微妙に似てないというかあってないというか、そもそもネタが滑っている(笑)。小学生の時、私の友人が「風の丘のウレシカ」というパロディ漫画を描いていたのを思い出した。因みにその漫画の登場人物は「よみうり兵」「クールミント爺」など、今思い出しても中々センスのあるネーミングだった。N島君は元気にしているだろうか?
個人的な思い出話をしつつフェードアウト……。
(きうら)
すいません、白状すると、少しも読んでません。