- 時事ネタ+猟奇的描写のコミック
- 題材はファンタジーから風刺まで様々
- 現代版「カストリ雑誌」的漫画?
- おススメ度:★★☆☆☆
久しぶりにホラー的な漫画を読んでみた。理由は簡単で、Kindle Unlimitedで配信されていたからだ。Unlimitedで配信されるホラー漫画というのも珍しいので、興味本位で選んだ。ちなみにカストリ雑誌とは戦後に勃興した質の悪い大衆雑誌で、主にエロ・グロをテーマにしている。今で言えばゴシップ週刊誌の劣化版というところか。
短編集とある通り、全部で13編の漫画が収められている。その前にわざわざ「エクスタシー」と足しているのは、内容に多分に性的描写が含まれているからだ。表紙を観ても分かる通り、細い線で描かれた割と緻密な絵柄だが、要所要所でエロティックな描写を挟んでくる。と、いうわけで、文学的ホラーや感動作品を期待している方にはこの時点で読書候補から外れる。
とはいえ、それでは成年雑誌のように性描写に熱心かというとそうでもない。これは邪推だが、ショッキングな絵柄にエロ要素を足せば売れるだろうという、何となくそういう商業的に狙って入れた要素に思える。よくスマホの漫画などにある「設定はショッキングで興味は引くが、読んでみると割とどうでもいい」を地で行くような内容だ。
たとえば、第1話「小人の靴屋」は、童話風である。夜中に原料の皮を用意しておくと、勝手に上質な靴を作ってくれるという魔法の時計がある。これを性悪な靴屋が、ライバルの靴屋から、奪ってくる。当初はうまくいくが、ある夜、原料をわすれて寝てしまうと、彼女の妹が原料にされて靴が……という設定。話はここで終わらず、その妹の靴が売れたことから、靴屋は女を次々とナンパし「人皮靴」を製造するのだが、ある夜、その原料に……というお話。
ナンパシーンにエロティック要素があるが、まあ正直どうでもいい。リンゴの皮をむくように人の皮をむくという絵的なインパクトで勝負しているので、筋も読めるし別に面白くもない。
「芸人地獄変」は、売れない女落語家があからさまに島田紳助をモデルした悪の(?)漫才師のパーティに呼ばれ、家電芸人として「肉体改造」されかけるというお話。猟奇的ではあるがリアリティはなく、どちらかというとブラックユーモアに近い。さらにもう一段オチがあるが、これも別に視覚的なインパクトだけで落とすので、基本的に物語的面白さはない。
はっきり言えば、全体的に発想が安直で、漫画としての面白さには昇華されていない。一方で画力はそれなりにあるので、読めないこともないという中途半端さ。むかし田島昭宇&大塚英志による「多重人格探偵・サイコ」という漫画を読んだが、絵だけで言えばアレに近い。ただし、前述のサイコほど話が練られていないのが残念だ。有能な原作者がつけばもっと売れるんじゃないかと余計なことを考えたりした。
もし、それでも興味が湧いたら、休日の朝から読むような内容でもないので、夜中にでもこっそり読んでみて欲しい。
(きうら)