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★★★☆☆

最近読んだ本などについて[2018年11月]~読書メモ(022)

投稿日:2018年11月22日 更新日:

  

  • 読書メモ(22)
  • 最近読んだ本について
  • 海外文学から新書まで
  • おススメ度:★★★☆☆

【はじめに】

今回は、穴埋め的なものとして、主に図書館で借りてきた本を中心に備忘録的なものを書きたいと思います。

【海外文学】

今月読んだ海外文学は、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』(新潮クレスト・ブックス)です。最初、この本をきちんと読んで本編記事としての感想をあげようかと思っていたのですが、3分の1くらい読んだところでそれをやめようと思いました。後半は平板で面白く読めなかったからです。なぜ面白くなかったかを考えてもいいのですが、そんな暇もない(もしかしたら怖い部分を無理矢理さがしだそうとしたからか)。内容としては、妄想に生きる「わたし(シェリル)」が、上司の娘を預かることになり、その娘や彼女の友人たちとのドタバタ劇みたいなものが展開されていくところはまあ面白くなりそうだなと思ったのです。まあ、ルース=アンとのやりとりも面白かったです。しかし、肝心のシェリルの妄想度合いがイマイチなのです。「あっ、そう、だからどうした」といった感じなのです。そのせいか、読み終わって1週間しか経たないのに後半の印象が何も残っていない。読後は伸びきったうどんを食べたような感じ。こういった印象は私の読みが悪いからでしょうねぇ。

本書には、日本風のしきたりなんかが出てきます。こういった日本風の習慣みたいなのは海外文学に出てきたりしますが、だいたいが日本の様式美みたいなものを戯画的に書いていたりします(印象として)。この様式美はコジェーヴのいう「スノビスム」の一種を表しているのだろうかと、最近『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(仲正昌樹(Ama))を読んでそう思いました。

【又吉直樹の新書を読む】

又吉直樹『夜を乗り越える』(小学館よしもと新書)を読みました。この前、変な批判記事を書いた時に又吉直樹作品のことをダシに使ってしまったので、なんか悪いと思い、彼の文学観を知ろうと思い読んだ一冊。本書には、彼のお笑い観や文学観が垣間見えます。とくに、芥川賞をとった時の他人の評価に対して彼が反批判しているところが面白かった。彼にとって文学が、いかに大事かが分かりました。本書には書かれてませんが、あまり海外文学は読まないのかな。

又吉直樹が文学好きなのは有名ですが、その中で芥川や太宰など近代文学に救われたというところはなんとなく分かります。私も文学って面白いんじゃないかと思ったのは、太宰治を読んだ時ですし。その太宰に関して又吉は、「太宰を読むと公言するのは勇気がいるし、また太宰好きを公言することには他の太宰ファンから反発を受けることがあるらしい」と書かれているのですが、私個人の経験から言うとそんなことはありませんでした。少なくとも、太宰好きを公言することでバカにされたことはないしその逆もありません。また、他人が太宰治ファンであることを公言し、そのことを太宰作品から貶めようとする人は基本的に文学好きではないと思うので、そんな人は文学を語る資格がないと放っておけばいいのです。

ところで、又吉の祖父や母親はクリスチャンだったそうで、彼もまた一緒に教会に通っていたそうです。又吉が育った場所の隣の市で私は生まれ育ったので、彼がどこの教会に行っていたのか分かりませんが、もしかしたら教会でニアミスしていたかもしれません。

さて、また又吉は、古井由吉の愛読者でもあるのですが、これに関して又吉先生にお願いしたい儀があります。去年放送された「アメトーーク」の「読書好き芸人」で、たしか芸人の光浦靖子が「古井由吉先生の本は難しくて読めなかった」というようなことを言っていたのです。彼女がどの本を読んだのか分かりませんが、是非ともそういう人たちに古井作品の面白さを分かりやすく伝えてほしいのです。

【サイバーセキュリティについて】

先日の報道で、桜田五輪担当相(兼サイバー法案担当)がなした「パソコンを使うことはない」という国会での発言に、野党か誰かの議員が「パソコンをいじったことのない人間がサイバー対策できるのか」とかなんとかいうことを大袈裟にわめいていた。私からすると、まああのくらいの年代なら「いじった」どころか触ったことのない人もいるだろうなと思わないでもないが、しかし、たとえちょっと触ったくらいでも、サイバー空間におけるセキュリティ問題に通じることはできないだろうと、『サイバーセキュリティ』(谷脇康彦・著、岩波新書)を読んでそう思った。というかこの著者は、政府のサイバーセキュリティ問題の責任者をつとめた人なので、何かしらのレクチャーを受けたことはないのだろうか。というか野党の議員もギャーギャー文句言わないで、本書を渡してこれくらいの知識は頭に入れときましょう、もし入れているならまあまだましですが、くらいの対応しとけばいいのに、といった内容の本。

本書には、技術的なことではなくて、サイバーセキュリティに関しての問題点やこれからの課題が簡単に述べられています。災害リスクと同等レベルでの重大インシデントとなりうるサイバー攻撃。これは、個人レベルから、民間企業、はては国家間(国際関係)に及ぶまでにひろがる問題なのです。もうすでにあちこちで問題になっていますが、個人レベルではこれからますますひろがる「IOT機器」におけるセキュリティに気をつけましょう。民間企業へのサイバー攻撃に関する問題。そして、国家へのそれ。いずれへの対処法としても、国際間でのルール作りが大事なのですが、なかなか各国々(各陣営)の思惑もあってうまく調整できるかどうか。その点に関して日本では、やはりアメリカなどとの連携が欠かせないんでしょうねぇ。これからはインターネットの基本精神を引き継ぐ「情報の自由な流通の確保、法の支配、開放性、自律性、多様な主体の連携」をもとにしたサイバーセキュリティ戦略に拠ってサイバーセキュリティ外交をしていかなければならないのですが、国際規範を確立するには難しそうです。個人や民間企業いずれもがサイバー攻撃の被害者となるとともに加害者になされることもあることに注意しなければならないのです。まあ、著者が言うように、いかに個人レベルからのセキュリティ意識を高めていけるかでしょうね、月並みですが。

(成城比丘太郎)




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