★★☆☆☆

危ないお仕事!(北尾トロ/新潮文庫)

投稿日:2018年11月28日 更新日:

  • 実際にあるマイナーな仕事の取材・体験記
  • 軽いインタビューや体験談がほとんど
  • わざわざ読むほどのものでもないが、興味があれば。
  • おススメ度:★★☆☆☆

ここ一ヵ月ばかり、ちょっと幽霊・亡霊・モンスターものを離れて、現実社会にある(かもしれない)出来事を扱った社会的なネタの本を読んできた。今回もその類書で、タイトル通り「危ないお仕事」に就いているヒトビトに著者がインタビューを行ったり、潜入取材を行ったりするというもの。実際は、余り危なくないのが残念だが、一部興味深い職業もあった。

<収録されている職業は以下の通り>

第1章 捜査のお仕事
・万引きバスター ・私立探偵 ・警察マニア

第2章 アタマのお仕事
・怪しいセミナー ・海外移住者をカモにする犯罪者 ・メルマガ・ライター ・フーゾク専門不動産

第3章 エロスのお仕事
・エロ系素人モデル ・ダッチワイフ製造者 ・AV男優

番外編
・新聞の販売促進 ・法廷での変な容疑者

一通り怪しい職業がそろっているが、記事のパターンとしては2つあり、著者が怪しい職業の方と接触して「取材」するパターンと、直接的にその怪しい職業に「なってみる」パターン。両方が混ざっている回もあるのだが、だいたい「取材」パターンは面白くなく「なってみる」パターンの方が面白い。やはりリアリティに差がある。

前者の代表が「メルマガ・ライター」や「AV男優」などで、メルマガ・ライターなるものが今も成立しているとはほとんど思えないのだが(発行が2006年)、その当時、月収100万円というライターの話を収録している。内容は、メルマガでいかに「成り上がって来たか」という話なのだが、まあ、自慢話の類でそれほど面白くもない。「AV男優」はいわゆる「汁男優」という発射する専門の仕事らしいが、ひと月でせいぜい15-20万しか稼げないというのはオモロ哀しいが、これも意外性がなくて、わざわざ読むほどのものでもないと思う。まあ、取材対象が一人しかおらず、それほど鋭く社会問題を追求する意思を持っているわけでもなく、とりあえず「好奇心優先」のB級路線なので、取材が甘いのが原因だろう。ドキュメントとしては致命的だ。

一方、実際に潜入した「超能力開発セミナー」や、番外編だが一番面白かった「拡張新聞団」は楽しめた。

正式には「信じる者は救われない!? 超能力開発セミナー講師」というタイトルだが、人はいかにして簡単に騙されるか? というのが分かる。というより、基本的にこういうセミナーに参加する人間は「今の自分に満足できない」「何か実力以外で幸せになりたい」要するに「救われたい」訳であるのだから、それに合致した「場」さえあれば「皆、進んで騙されるのだなぁ」というのが感想。詳細は本文で、ということになるが、会費も安く、物販も強要しない、奇跡もほどほど、やり過ぎないクリーンなシステムがいかにも現代的洗脳という感じだった。

「新聞拡張団」というのは、あの一軒一軒を回ってピンポンを鳴らし「奥さん、一ヵ月だけでいいから取ってくださいよ! この洗剤とビール券をつけますんで」というあれである。この番外編では、著者が実際に10日間就職しているので、その間の体験記となっている。私の家にも時々やってくるので、その内実は興味深いものだった。ただ、何百件も回って断られるのが仕事のようで、危ないというより苦しい仕事なのは想像通りだった。

そもそも新聞なんてドンドン発行部数が減っているわけで、今も新聞の営業は募集されているのをたまにみるが、さらにやりにくい仕事になっているだろう。ネットのせいだろうが、TV制作にしろ、新聞にしろ、漫画雑誌にしろ、こんな斜陽産業となっていくとは2006年には思わなかっただろう(「この仕事はくいっぱぐれない」というセリフが出てくる)。

総合すると、軽い読み物としてはまずまず楽しめるが、それ以上のものはないので、サラッと流し読む系の本である。

途中、メルマガのことを書いたが、このブログもその系譜で書かれているようなものであり、メルマガの手法を応用すれば「もっと儲かるブログ」を書けるかもしれないとは思った。思ったが、水の浄水器やアダルトグッズをひたすら宣伝して楽しい人生が送れるのだろうか?

うーむ「楽して儲かる」ことはあるかも知れないが「楽して儲ける」ことなんてできないんじゃないかと思うと、暗澹たる気分になる。まあその辺はスルーして、今日もまた「苦しいお仕事!」に精を出そうと思っている。

(きうら)


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