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コラム

本当にあったやや怖い話 〜02ホワイトアウト

投稿日:2018年11月24日 更新日:

その時、私はある小売系の職場にいた。忘年会をしようという話になったのはいいが、職場での飲み会というのは、やたら疲れるものである。何せ話すことといえば結局仕事の話、しかも上司同席では気を使うことこの上なく、実態はまさに仕事そのもの。そこで私は、一人黙々とウイスキーを煽っていたのである。
やめておけば良かった……と、その時は思わないのが酒呑みの悲しさ。2時間程度の飲み会で、気がつくとビールを数杯、焼酎を数杯、更に恐ろしいことにウイスキーを一本(720ml)空けていた。計算すると純粋なアルコールで400ml近い。適量が25-35mlと言われているので、そのざっと10倍だ。
しかし、その時の私はまだ若かった。それだけ飲んでも、まだ普通に電車に乗って家に帰った。
ただ、家に向かった記憶はあるが、次の光景は家のリビングの天井から始まった。その間は全く覚えていない。それにつけた記憶のないテレビで深夜放送の映画をやっている。それが「ホワイトアウト」だ。あと胃の痙攣具合から、盛大にリバースしたのも間違いない。

で、興味のないホワイトアウトを別の番組に変えようと思ったのだが、全く体が動かない。首と視線は僅かに移動できるが、全身が麻痺しているのだ。
状態としては「金縛り」となんら変わらない。僅か30センチ先のリモコンが掴めない。とにかく全身隈なく痺れてるので、頭痛や吐き気もほとんどなかった。
あまりのことに呆然としたことを覚えている。そのまま、映画は無事ラストまで完走した。
翌日(というかその日の早朝)にどうにか、体が動くようになったが、今度は「普通の」酷い二日酔いが襲ってきて吐き気と頭痛で皆さんは酒を飲まれるだろうか? 今回は深酒の話である。飲まれる方なら二日酔いを経験された方は多いと思うが、私の場合三時間ほどで襲って来た。状態はこう。
翌日まで苦しんだのであった。
思い返してみると、あれはいわゆる急性アルコール中毒そのものでは無かったかと思う。ネットで見た急性となる条件に「1時間でウイスキー1瓶を飲む」とあるのでほとんど該当する。正に死にかけたのである。

この話には続きがあって、私はこれに全く懲りず、その後も1.8L入りの安ウイスキーを買ってきて、なぜかポケット瓶(200mlぐらい入る)に入れ替えて飲むという、その破滅的飲酒を毎日毎夜せっせと続けた。その結果、見事に痛風を発病した。

痛風というのは俗に「風が吹いだけで痛い」と言われるほどの激痛が主に足の指に生じる病気で、発病(発作と呼ばれる)した時は、自分で運転して病院に行ったが、原因不明だが絶対に骨が折れたと信じていた。どこかに足をぶつけ、足の指を挫くという状況があるでしょう。あの瞬間の痛みが一昼夜続くという恐ろしい病である。後にも先にも痛みで眠れないと言うのはあの時だけだった。まあ痛風そのものは、その後にやって来る肝硬変や肝臓ガンの警告の様なもので、それ自体に痛み以上の害はないのだが、とにかく痛い。

それから十余年、酒はさすがに飲まなくなった……などど殊勝なことは全くなく、未だに毎日痛風の薬(尿酸値を下げる)を飲みつつ酒も飲むという愚かしさ。さすがに飲む量は減ったが、自らの肝臓の限界を試しているようなもので、早死にするのは間違いない。

以上、酒は飲んでも飲まれるな、と言われるが、依存度で言えば、あのヘロインに次いで強いと言われる立派なダウナー系ドラッグ。辞めようと思うと辞められる、と思える気軽さと大量のコマーシャル。依存性は身に沁みて感じている。飲むなとは言わないが、もはや昭和でもなく平成も過ぎ去る時代。酒は文化だが、それは時代と共に変わるもの。アルコールへの認識も変えるべきなのかも知れない。個人的には何とか友人と「たまに楽しむ程度」に抑えたいものである。

ちなみに映画版「ホワイトアウト」。これは酷い映画だ。泥酔前にも観たことがあるのだが、原作の汚れシーンーー例えば人質のヒロインがトイレに行かせてくれと言うシーンなどーーを一切やろうとしないヒロインはどうか。いや、やらせようとしない監督が悪いのか。同じ系譜の傑作ダイハードと比べると、全体的に覚悟のない腰の引けた演出だ。ご都合主義も多数。織田裕二もあれだけ演技にこだわるなら、もっとカッコ悪く演じるべきだった。ダイハードがあれだけ面白いのは、人間臭さを感じるキャラクター造形や身近な痛みの描写など徹底的に主人公を虐めた上での逆襲のカタルシスがあるからだ。原作もそれなりなので仕方ないが、上滑りするヒーローものにしか見えない。

ま、そんな映画を映すテレビのチャンネルすら変えられない人間に言われたくない、と言われればまさにその通り。うーむ、面目ない。

(きうら)


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