3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

日常(あらゐけいいち/角川コミックス・エース)

投稿日:2018年12月22日 更新日:

  • 生粋のギャグ漫画
  • アニメも原作を丁寧に映像化
  • ギャグにかける心意気がいい
  • おススメ度:★★★★☆

アイキャッチからも分かるように、非常にかわいい絵柄。その絵から想像されるような萌え要素は無いとは言わないが、ほぼ全編、熱いギャグが展開される。これは生粋のギャグ漫画。端々にギャグ漫画の先達へのリスペクトも感じる。内容についてはいまさら詳しく説明してもどうかと思うので詳しくはWikipediaでも参照されたし(読まれた方が早いかも)。とはいえ、概要くらいは書いておこう。

主な登場人物は、時定高校の一年のゆっこ、みお、麻衣の女子高生3人と、はかせ(8歳の女の子)となの(はかせが作ったロボット)、阪本(猫)。なのは高校に通う(原作とアニメではタイミングが違う)。ゆっこが主にボケ担当(突っ込みもするが主だって話を進行させることが多い)、みおは突っ込み(時にボケ)、麻衣はジョーカー的。はかせとなの、阪本のやり取りはほのぼのしている。その他、クラスメイトの面々、先生、それぞれの家族、ペットなどで話は展開する。全10巻、アニメは26話(円盤には0話も収録)。

この「日常」のダイナミックなギャグと安定した画力、そして品の良さに魅かれた。タイトルの「日常」は、非日常的なものが実は日常であると言う少しねじれた意味で付けられていると思う。例えばかわいいロボットがいたり、ヤギに乗って通学するイケメンの先輩がいたり。これらを日常と捉えるギャップが面白い。そもそもギャグマンガとはギャップを楽しむ側面が強い。読者の予想をどこまで裏切れるか、なかなか大変なジャンルだ。

メインストリームのギャグは、畳み掛けるようなボケとツッコミが特徴。突然ボルテージが上がって異常なテンションになるのが熱い。シュールなネタもあるが、分かりやすく、且つ、読みやすい。それでも意味がわからない場合もある。ただ、赤塚不二夫やいがらしみきおの様な不気味と思えるほどネタを振り切ることもなく、日常が戻って来るので安心できる。ほとんど下ネタ要素が無いのも素晴らしい。

過去のギャグ漫画……私が理解した範囲では、例えば「つるピカハゲ丸/のむらしんぼ」や藤子不二雄、あるいは「丸出だめ夫(森田拳次)」などの擬音が使われていたりして(一部自信がない/ソースを拾えなかった)、1980年代を小学生として過ごした方にはディティールが楽しめるのではないかと思う。「べーしっ君(荒井清和)」のネタ(だと思う)があるのも笑った。私が気づいていない元ネタも多いと思うので、作者はかなり広範なギャグ漫画に通じていると思う。

腕が千切れたり、首が飛んだり、汚物がブチまけられるホラーに飽きたら、一服の清涼剤として、ぜひご一読を。漫画を読んで久し振りに明るく笑った。

アニメも原作を相当愛していないと作れない様なハイレベルな翻案がされている。構成も含め、原作の分かりにくい部分が整理されていて、本当によくできている。アニメ化されていないエピソードもあるので原作も捨てがたいが、アニメ独自のネタもあり、なんだかスタッフ・キャストもすごく「楽しんで」作ったんじゃないかと思う。最後の次回予告のベテラン声優の方もウキウキして仕事をしているように見える(当時も話題になったはずだが、信じられないくらい豪華)。本当によく動くので、アニメらしいアニメだと思う。

ホラーサイトで純粋なギャグを紹介するのも、どうかなと思うが、読んで/観て損はしないものは紹介したいという方針なのでご容赦を。アニメでも漫画でも、ぜひ一度、ご覧頂きたい。ある種のユートピア的な漫画でもあるので、疲れた方には特におススメ。

以上、ギャグ漫画を極めて普通のテンションで紹介するという謎の回でした。

(きうら)


-★★★★☆
-, , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

統合失調症(村井俊哉/岩波新書)

わかりやすい解説 この病気の特徴について 世間はもっとこの病気について知るべき おススメ度:★★★★☆ 著者は精神科医。おそらく臨床経験も豊富で、なおかつこの統合失調症について長年考えてこられたのでは …

続巷説百物語(京極夏彦/角川文庫) ~(紹介・前編)、あらましと軽いネタバレ

江戸を舞台に怪しい面々が危ない「仕事」を行う 6つの短編集……というより分量的には中編集 前作と合わせて、一応の完結をみる おススメ度:★★★★☆ 前作(巷説百物語)をつい先日紹介したのだが、そのまま …

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(任天堂/Nintendo Switch) ~初代をリアルタイムで遊んだ40代のファーストインプレッション

初代を彷彿とさせる厳しい難易度。死にまくる 再序盤。派手さはないが、物理演算が地味に面白い ゼルダでもあり、ゼルダでもなし おススメ度:★★★★☆ (はじまり)今回のリンクは、どうやら100年の永い眠 …

人体模型の夜 (中島らも/集英社文庫)

ユーモアのある作風が特徴のホラー短編集 豊富なアイデアで読んでいて飽きない オチが滑ることもあるが、よくできた話も多い おススメ度:★★★★☆ 人体のパーツをテーマに18の短編を集めホラー短編集。住人 …

ムーたち(2)(榎本俊二/講談社)

ムー夫の哲学的な疑問。 「サード自分」を発見したムー夫。 「規理野君」の行きつく先。 おススメ度:★★★★☆ 『ムーたち』1巻の続きである2巻では、ムー夫が「セカンド自分」を駆使して自分なりの発見をす …

アーカイブ