- 発売は2020年11月のスマートバンド
- 唯一無二の発想
- スマートウォッチを凌駕するか
- おススメ度:★★★☆☆
私の心の中の悪魔が時折「新しいスマートウォッチを買え!」と命じてくる。AppleWatchはSeries3の時点で購入したし、スマートウォッチはフォッシルのHR FTW7010で決着がついたと思っていた。そんな私を誘惑する製品があった。それがSonyのwena 3である。
伏線はあった。職場では基本的にスマートウォッチが持ち込み禁止。必然的にアナログ時計が必要になる。とすれば、常にデザインに優れた腕時計を探すようになる。
これを見つけてしまった。昭和レトロ、あるいは医院の計器なようなアナクロさ。ロレックスやシチズンのグランドセイコー、オメガなどの高級腕時計も眺めているが、あの現象を感じる。それらの高級時計のデザインをパクったリスペクトしたデザインが溢れていて、魅力を感じない現象だ。とはいえそんなものを買う余裕は無いので、高級車を眺めるような感覚だ。
余談だが、レクサスやアウディ、なんならポルシェも見かけるが、どんな生活をしていたら車に1,000万以上払えるのだろうか。制限速度は同じ。乗り心地? 加速感? 先の時計と同じくデザイン的な魅力は模倣品によって消失している。エンブレムのみに価値があるのか。性能も500万を超えたらあまり変わらないだろう。経営者の税金対策なのか。私はそれを見て憧れることはない。あっちの世界も大変だろうな、と思うだけ。駐車場の収入で生活できているならおめでとう。ただ、それも主観的な幸せとは無関係なのだ。レクサスに乗っている人間が全てに満足している訳ではないだろう。
話がズレたが、持たざる者の僻みを書きたいわけではない。ガジェットファンとして、このwena 3にはいたく感銘を受けた。時計のバックル部分にスマートウォッチの機能を持たせようという発想は他に無い。AppleWatchは模倣品が溢れているが、未だにこの製品の模倣品はない。それだけ特殊な製品なのだ。
まず、価格が高い。本体のアナログ時計を必要とする割に、3万円以上の価格設定だ。できることは、アクティビティトラック、メッセージの確認、Suicaなどの決済機能など他のスマートウォッチでも可能なことばかりだ。ただ、それを全てバックルで完結させようという発想がいい。その結果、時計部分を付け替えるという独特のスタイルになったのだ。
とはいえ、HR FTW7010で決着はついたはずだ。2週間のバッテリー、通知、音楽のコントロール、睡眠トラッキング機能を備えて完璧だった。wena 3はバッテリーで半分、音楽コントロールは退化、メタル素材のため装着感が凄いと、明らかに劣っている部分が多い。ところが、唯一優っている電子決済機能は最高だ。
誰が流行らせたいのか知らないが、2次元コード決済は面倒くさい。やたらとこれが持ち上げられていたが、普及したのはIT的にローテクノロジーだからだ。SuicaなどのNFC(Near field communication)は決済する側に導入にコストがかかる。対して2次元コードはバーコードスキャナーさえあればいい。つまり貧乏な技術なのだ。実際に使ってみると分かるが、決済の時間が段違いである。わざわざスマホを開かなくともNFCなら一瞬で決済が完了する。スマホを開いてバーコードをスキャンさせるなんて、スーパーの擦過作業以下の非効率さだ。この利便性を捨てて、わざわざレガシーなバーコードに戻る意味を感じない。そのNFCを搭載したwena 3はHR FTW7010にないアドバンテージを持っている。
とはいえ、NFCはiPhoneやAppleWatch、その他スマホやスマートウォッチでも対応しているし、何なら300円で買える本家のSuica(ICOCA)でも実現可能なのである。そんなものにこだわる必要があるのかと言われれば、確かに疑問だ。コンビニならセブンイレブンのnanacoを使った方がポイントも溜まる。
が、しゃらくさい。200円で1ポイント、還元率0.5%、100万円nanacoで払っても5,000円の還元率である。カスみたいなポイントだ。ならば、時計のバックル部分で1秒未満の決済を使った方が断然便利だろう。ただ、これをチャージする時は結構間抜けな姿勢になるが、楽天Edyやidにも対応していてネットからチャージも可能なので、利便性を最大級に発揮したい方はこちらを利用されたし。
AppleWatchに魅力を感じなくなったのは、使っている人を頻繁に見るようになったからでもある。単純に時計として見れば、不格好でかなり格好悪いデザインじゃないか。結局「ナニコレ!? スゴーイ」という段階では魅力があるが、メトロに乗っているサラリーマンが着けている時点で優越感はない。そうなると18時間しか使えないバッテリー問題を考えるとイラナイ。実はミュージックコントロールも音楽アプリを開いてから竜頭を回すという設定なので、かなり面倒くさいのである。防水機能は評価できるが、やはり風呂では使えないし、アクティビティを気にする人以外には不満点が多いだろう。だが、18時間。睡眠トラッキングができないのは致命的だ。お風呂に入っている間に充電できます? うーん、もっと省電力にできないだろうか。FitbitやGarminはこれをクリアしているので、単にAppleの技術力に問題があるか、そもそも理想とするスマートウォッチの終着点が違っているか、そんなところだろう。
ようやく本題だが、wena 3はそのオリジナルティ以外特別に優れているわけではない。何しろ、バンドの調節には専用の工具か時計店への来店が必要なのだ。私は安い工具を買って調整したが、ちゃんと調整できるまで半日かかった。楽しいと言えば楽しいが、これを標準的なユーザーが好むとは思えない。ミュージックコントロールもフォッシルより劣る。音量調節が面倒なのだ。さらにメタルバンドになったことで、手首への負担が凄い。私のように10年来、腕に何かを巻き付けて寝ている人間でも時々重く感じるほどだ。
ただ、コンビニでの決済は快感である。店員さんが袋詰め(私はレジ袋を買う派)しているより早く決済が終わる。基本的にSuicaなのでAppleWatchのようにボタンをダブルクリックする必要すらない。また、睡眠トラッキングはフォッシルより緻密で、アプリもカッコいい。ストレスレベルとかVO2の計測とか、何を基準にしているのかよく分からないが、見ていて楽しい。この辺がガジェット好きの心をくすぐるポイントだ。
総合的に見て、AppleWatch Series7よりよりマニアックで、ディープな楽しみ方ができる。腕時計にステータスを求めない、かつ、オリジナルティを求めたい派には満足できるだろう。とはいえ、時計とセットで5万円程度かかる。メカニカル・ソフト両面で初期設定も相当面倒なので、こういうことが好きな人間以外に勧められるようなものでもない。とはいえ、今年に入ってもまだコラボ商品を出したりして、Sony的には相当気に入っている製品と見た。
結果、私は満足しているが単純にスマートウォッチが欲しいなら他の製品の方がいいだろう。いわゆるただの趣味なのである。ホラー小説サイトの趣味の記事をここまで読んで頂いた方はかなりの同士だと思います。
(きうら)