特になし

2010年代アニメまとめ(4)

投稿日:2019年10月25日 更新日:

  • 「2012年アニメ」を中心に
  • ホラーアニメについて
  • クレイジーアニメとショートアニメ
  • おススメ度:特になし

【ホラーアニメについて】

綾辻行人原作の『Another(アナザー)』(角川スニーカー文庫)がアニメ化されたうえに実写映画が公開されたのは、2012年でした。アニメでは、原作で少ししか出てこないキャラをうまく活用しているうえに、原作がミステリ寄りなのに対してホラー要素をうまく演出していました。とくにキャラに関しては、「赤沢さん」の造形がよかったです。映画版ではラストの余韻が原作アニメとは違いましたけども、個人的には映画の方は嫌いじゃない。この原作がもっているポテンシャルを考えると続編が作られてもよさそうと思ったのですが、そうなっていないということは、人気が出なかったのでしょう。今ではネットで、「アナザーなら死んでた」とネタ扱いされるだけです。ちなみに、原作を読んで、この『アナザー』の核心部分である「いないもの」である「死者」には存在論的におかしなところがあると再認識しました。それが何かというのはネタバレになるのであまり言えません。ちょっとだけ言うと、「死者」という「現象」が現在に影響を及ぼすとしたならば、なぜ「見崎鳴」の特殊能力にまで影響が及ばなかったのかというのが、すっきりと説明されていないように思うのです。そこら辺が好都合なところだなと思うのですが、アニメ自体はよいホラーアニメなので、ホラー好きなら楽しめると思います。詳しい内容は、2年前に記事として書いたのでそちらを読んでください。

さて、水島努監督は2011年には『BLOOD-C』を、そしてその翌年には『アナザー』という、ホラーチックなアニメを制作しました。『BLOOD-C』は一応『BLOOD』シリーズの後継作といえるでしょうが、別モノとして楽しめるでしょう。というか、以前のものはあまりおぼえていない。『BLOOD-C』の内容について書くことはあまりないですが、とにかく爽快な一面もあるスプラッターアニメという印象でした。2012年には劇場版も公開されていますが、観ていないので分りません。テレビ版最終回の放送では、まあまあの規制が入るほどのグロ要素だったのですが、今考えるとそれほどのものではありません。同じように、『アナザー』に関しても、今観るとそれほどのグロシーンではないように思います。その理由は後で書きます。

この2010年代は明らかにホラーっぽいアニメが衰退した、というかあまり人気にならなくなった感じがあります。たとえばゼロ年代でいうと、『ひぐらしのなく頃に』(2006年~)は男女問わず人気が出た上に、続編では、とある事件の影響から一部地域で放送が打ち切られるほどの影響力がありました(その事件との関わりは直接なかったようですが)。その後もこのシリーズはOVA展開もされるなど、そこそこのブームになりました。しかし、『ひぐらし』の姉妹作品であると思われる『うみねこのなく頃に』(2009)はアニメの続編がなくなったというか、未だに制作されていない(と思われる)ように、10年代からは急激にホラーアニメ人気は下がっていったように思います。

また、クトゥルー神話をモチーフにした『這いよれ!ニャル子さん』(2012~)というものがありましたけども、これは、はじめの「ニャル子」登場シーンだけがホラーのようだっただけで、そのあとは単なるギャグラブコメディでした。これは一種のパロディ作品なんですが、通り一辺倒のパロディではなくて、クトゥルー(ラヴクラフト)へのオマージュがフンダンに盛り込まれた良作でした。さらには、『ニャル子さん』には、過去のサブカル(オタクネタ)へのオマージュも盛り込まれていて、よく観ると、かなり贅沢な作りになっています。このパロディアニメの行き着いた先にあるのが、現在放送中の『のうきん』(2019)でしょう。『のうきん』では、団塊ジュニア直撃のネタだらけで、主人公はきっとオッサン脳の持ち主か、転生前は女子を装ったオッサンだったのでしょう。

その一方で、2018年には、『伊藤潤二コレクション』というド直球のホラーアニメも作られましたし、その他にもホラーっぽいアニメはありましたが、話題になることは全くありませんでした。水島努監督は、『迷家-マヨイガ』(2016)というホラー的なミステリを制作しましたけども、とくに人気にならなかった。『マヨイガ』の導入部はそこそこ雰囲気があって期待できそうだっただけに、きちんとした構成であればもう少しホラー・ミステリとして面白くなっていたかもしれません。

なぜホラーアニメがだめになったかという要因については不詳なのですが、個人的に考えたことはあります。まず言えるのは、10年代からに入ってからは、広義のホラー要素はアニメ制作に関して常態化したということです。つまり、脚本や演出に際して、広義のホラー要素が欠かせなくなったことで、純粋な(?)ホラー作品よりも面白いものがいくつも制作されたのではないかということです。『まど☆マギ』がよい例ですが、これなんかは並のホラー作品よりも怖さを感じさせてくれます。この後、追随するように、『魔法少女育成計画』(2016)や『魔法少女サイト』(2018)や『魔法少女特殊戦あすか』(2019)といったアニメ作品や、他にもあらゆるメディアで「魔法少女もの」と暴力表現を含む作品がつくられているようです。もちろん魔法少女ものだけに限りません。

それらの作品には当然ある程度以上のグロ要素が含まれます。上記の魔法少女ものには必ずといっていいほど暴力表現や人体欠損シーンが含まれますが、『ひぐらし』よりかは控えめでありつつもそれでもある程度の衝撃的な場面が演出されています。まあ言うならば、制作者側と視聴者側に、これくらいの表現ならば放送コード的に大丈夫だという暗黙の了解みたいなものがうまれて、それを基準にホラーっぽい演出がなされるようになったのかもしれません。たとえば、『エルフェンリート』(2004)ではそれなりの残虐表現だったものが、『極黒のブリュンヒルデ』(2014)の再放送では無修正版が放送されたものの、そこで描かれたグロ表現はどちらかというと原作のテイストに近くて、視聴者(=私)が受け入れるのには抵抗感はありませんでした。

また、『PSYCHO-PASS(サイコパス)』での、「犯罪係数」の基準限度を上回った者に対してなされる排除の方法における表現と演出は、明らかに『北斗の拳』を意識したかのようなものになっているのですが、そこにはなんというかスタイリッシュさを感じもします。『北斗の拳』では隠されていたものが、30年経って演出次第では、きちんとその光景が描かれるようになったということなのでしょう。というか、明らかに暴力シーンに対する敷居が低くなったような気がしますが。海外では、日本製アニメの暴力表現が問題になることがありますけども、これは日本と海外での視聴者層の違いによるものでしょう。日本では大人もアニメを楽しむという風潮が強いためだといえます。

というわけで、その『サイコパス』などを含む2012年アニメについて振り返りたいと思います。

【2012年アニメについて振り返る】

2012年は、個人的には、『アナザー』にはじまり『ガールズ&パンツァー』で終わった年でした。厳密に言うと『ガルパン』は残り2話が来年に持ち越しとなって、年内に終わりませんでしたがそれが人気に影を落とすことはなかったようです。そして、その勢いは今でも続いています。同じ水島努監督でも一方は人気が出ず、一方は今でも大人気と両極端の結果になりました。もし『アナザー』が人気になれば、続編が作られるくらいのポテンシャルというか創作者の想像力を刺激するだけの余地はあったと思うだけに、それを考えるとホラーというジャンルはアニメでは受けないということなのでしょう。ちなみに、同監督の『じょしらく』もこの年の作品でしたが、とくに続編を望む声は聞かないように思う。

ホラーというと『さんかれあ』というゾンビものを入れこんだ作品もありましたけど、これはゾンビになったヒロインの置かれていた家庭環境、というか父親との関係に怖い部分があっただけに、ホラーというよりも、なんだかゾンビに生まれかわってよかったねといったかんじでした。『さんかれあ』ではヒロインを内田真礼が演じていて、彼女にひそかに以前から注目していたので(オタリーマンあたりから)、ようやくいいヒロインができるのかといった感じでした。この頃はまだ新人声優に注目していたかと思うと、昔のことのような感じがします。

声優というと、『キルミーベイベー』の「やすな(赤崎千夏)」の声を聞いた時には、「この狂気さはこの声優にしかできない」と思ったものです。その後、赤崎は『ウィクロス』の「あきらっきー」や『女子無駄』の「バカ」などを演じていて、微妙なさじ加減でしか表現できない狂気っぷりを演じてくれている貴重な声優になったような気がする。とくに「やすな」は、他の人にはなかなかあのようには演じられないだろうと思う。内田と赤崎がこの後、2012年に『中二病』で共演した時には面白くなりそうだと思ったけれども、それほどの狂気さはありませんでした。ちなみに、ここ5年くらいにデビューした声優に関してはよく分からないことの方が多い。

さて、2012年は、その後シリーズ化されたヒット作が生まれました。『ソードアートオンライン(SAO)』や『サイコパス』、そしてなにより『ジョジョの奇妙な冒険』。『ジョジョ』は、初アニメ化ではないけれども、これは完全に新シリーズといっていいでしょうというくらいのよい出来でした。少なくとも『ハンター×ハンター』のリメイクよりかはよいものでしょう。『SAO』に関しては、シリーズが続きすぎて、もはや何を目指して制作されているのか分かりません。とにかく言えるのは、そのネームヴァリューはスゴイのである程度の集客は見込めるというコンテンツになりました。『サイコパス』は1期にはそれ程目立たなかった粗が、以降のシリーズから目立つようになったという感じです。

『サイコパス』の内容は、まあ簡単に言うとディストピア近未来SFものです。「シビュラシステム」という統治システムにより管理された未来の世界(日本)が舞台です。治安や福祉など様々な分野で下される「シビュラ」の託宣という名目により、主に市民の「犯罪係数」を基準にした管理統制がはかられています。何らかの精神汚染により心理的に偏向をきたしたものや犯罪傾向の高くなったものは収容されるか、もしくは文字通り排除されます。「ドミネーター」という銃の形態を装ったものによって物理的に対象の身体を無きものにすることができるのですが、執行対象の処分方法の有様は先に書いたように『北斗の拳』の未来ヴァージョンのようです。
ここで疑問なのが、健康な市民はあらゆる犯罪傾向からまぬかれているのですが、なぜ劇中で描かれるような公開処刑シーンを公然と行えるのでしょうか。市民があんなの見たら「色相」が濁ると思うのですが。それと、この「シビュラシステム」自体が、その成立基盤に「免罪体質」というシステム管理に背反するものを取り込んでいるので、一種のマッチポンプといえるのでしょうが、ではいったいどういった経緯でこのシステムは構築されたのでしょうか。
システムはそのシステム自体を測ることができないものを取り込むのだとしたら、システムはいつまでも不完全のまま不断に更新されていくでしょう。このシステムはいつからあのような集合体の意思決定をとるようになったのか。もし「シビュラ」の裁定規準が民主主義的な手続きによる一種の法令として、法に変わる新たな秩序として措定されるならば、それを行う主体を、集合化した「免罪体質」およびそれに準ずる者たちに委ねられることにはどういった意味があるのだろう。簡単にみるならば、「シビュラ」の不備をそれに反する者を取り込むことによって補完していくことは、手続き的には、今の法令の改正(サイバー犯罪などに関する)とあまり変わらない気がする。というか、「シビュラ」自身が裁定できない存在には「シビュラ」は処罰を下さないという意味では、「シビュラシステム」とは罪刑法定主義的なシステムだなと思うのですが。
それと、『サイコパス』ではサイボーグ技術がそれなりに進んでいるようですが、『攻殻機動隊SAC』のようにはまだ完全義体化には至ってないようです。『サイコパス』での日本の社会システムは中国の「社会信用システム」を思わせるのですが、何だか不備だらけに見えます。さらにいうと、公安があれだけ日々大っぴらに活動しているのになぜ「常守朱」が公安の仕事について何も知らなかったのかも疑問です。まあ、いずれにせよ、第二シーズンまでしか観ていないので何とも言えない。

他にも、この年は、一応ホラーに分類されそうな作品がアニメ化されていました。『新世界より』はホラーと言えそうではありますけども、どちらかというとわけのわからん超能力バトルものでした。ラストにむかうに従って、とある人物の行動に関して疑問が湧いてきたのですが、それについてはここでは書きません。『新世界より』について言えるのは、ヒロイン役の種田梨沙はまだ少し下手で共演していた遠藤綾との差があるなと思ってたら、翌年の『ゆゆ式』ではなんかおもしろい役をやっていて成長したなという感じでした。それと、『BTOOOM!』というアニメもありましたけど、これはバトルロイヤルみたいなものなのでした。

【クレイジーアニメとショートアニメ】

さて、先ほど『キルミーベイベー』の狂気さについて書きましたけども、2012年にまた違うベクトルのクレイジーアニメが制作されはじめました。それは『てーきゅう』なんですが、これはこの後第9シーズンまで制作されました。ショートアニメだからこその良さが存分に発揮されていました。てーきゅう監督はこの後『コップクラフト』(2019)で、てーきゅうに似た作画演出法をとっていたのですが、さすがに30分アニメにすると、変な感じが目立ちました。

この『てーきゅう』はクレイジーアニメの中でも五本の指に入りますが、これ以上だったのが『あいまいみー』(2013~)でしょう。『あいまいみー』に関しては表現というよりネタが狂ってるのが多いので、観てもらうしかありません。『てーきゅう』の一挙視聴と、『あいまいみー』の一挙視聴を繰り返したらどうなるのか、試したいものです。まあ、ショートアニメはだいたい5分弱なので簡単に視聴できます。

10年代は比較的短いアニメ(5分から15分くらい)がいくつも制作されました。こういったものの大量製作にはいくつもメリットがあると思います。まず制作費が少なくていい。ある程度の販促が見込める。視聴する側も楽でいい。他にもあると思いますが、表現方法としても冒険しやすいと思います。こういったショートアニメに関しては詳しく書きませんが、表現方法で言うと『Gdgd妖精s』(2011)が際立っていると思います。他には、たくさん作られたショートアニメから、『ヤマノススメ』(2013~)のように15分枠へ拡大されたものもあるし、また、30分枠アニメのスピンオフ的なものとしてショートアニメが大量に作られてもいます。いずれにせよ、ショート枠はうまくいけばいいものができると思います。個人的には、今の30分枠を20分枠にしたら、一時間で三本放送できるのでいいかなと思いますが、これは業界的にどうなのかわからない。

【まとめ】

2012年というのは、画期となったアニメがいくつか登場したという印象です。『ガルパン』や『SAO』といったものがその代表格ですが、なんというか、ここから派生したような似た作品がこれから出てきたような感じがします。『ガルパン』は『ストパン』と名前の響きが似ていますが、『ガルパン』のほうがよりミリタリ志向でマニアにも受けているようです。ミリタリというと、女子高生たちがサバゲーをするアニメもいくつかあります。『SAO』が及ぼした影響については、ここで書く余裕がなくなりました(たぶんこれからも書かない)。

(成城比丘太郎)


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