★★★☆☆

とんでもない死に方の科学(コーディー・キャシディー、ポール・ドハティー/梶山あゆみ〔訳〕/河出書房新社)

投稿日:2018年7月9日 更新日:

  • 45通りの死に方を科学する
  • ありうるものから想像を絶するものまで
  • ユーモア(ブラック)を含みつつ、まじめに考察する
  • おススメ度:★★★☆☆

本書は、「スティーヴン・キングとスティーヴン・ホーキングを足して二で割ったような本だと思えばいい」ということです。どういうことなのでしょうか。まあ、変につっこむ必要はないでしょうが、科学(や物理学)の視点から書かれたホラーと思えばいいのでしょう。様々な状況に置かれたとき、あるいは自らその状況に飛び込んだとき、人間はどうなるのかどう死んでいくのかを克明に書いたものです。であるので、ときにグロい描写も出てきますが、全体を通しておもしろおかしく読めました。

だいたいにおいて、「死」をどのように迎えるのかに重点が置かれています。「旅客機に乗っていて窓が割れ」てしまったらどのような形で悲惨な状態に置かれるかということから座席の位置によって助かる確率が違ってくるといった常識的(?)なことからはじまり、「世界一音の大きいヘッドフォンをつけたら」どうなるかといった想像もつかなかったことなどまで、まあ時に無理矢理な考察と思わせるものを含む「死なせ方」が目白押しなのです。一番無理矢理だなと思うのは、「この本に殺されるとしたら」の項目でしょうか。

これらを読んでいて役に立つのは(?)、危機回避の方法がのっているということです。この「死のシナリオ」にあるような状況に陥ったとき、そこから無事に脱出するには(あるいは死ぬことを引き伸ばしするには)どうすればいいかを教えてくれるのです。とはいえ、そのほとんどはほぼ不可能なんですがね。一番役に立ちそうなのは、「乗っているエレベーターのケーブルが切れたら」の項目でしょうか。私はエレベーターに乗る時にはこのことが不安になる時もあるのですが、どうやらそのような事故が起こる確率は「10億分の1未満」だそうです(ほんまかいな)。で、もしケーブルが切れて高層階から落下したら仰向けに寝るのがいいらしい(無事ですむ保証はあまりなさそうですが)。間違ってもジャンプしてはいけないとのこと。衝突時の衝撃がほんの少しやわらぐだけであまり意味がないそうです。意味がないどころか、衝突の衝撃で内臓が身体からこぼれだすというとんでもない死に方をすることになるそうです。

「死」は、それをどのように定義づけるかによって変わってくるでしょう。だいたいにおいては普通に暮らしている分だと医師の判断によって「死」が告げられるものでしょう(その実態は措いておかれて)。そして肉体は多くの場合火葬されて灰になるというのがふつうに考える「死」後のありかたでしょう(一応本人は自覚できませんが)。本書では、その「死」後のあり方として人体が「プラズマ」になることがよく記されています(このあたりの原理はよく知りませんが)。例えば、もし私が「宇宙空間から(国際宇宙ステーションから-引用者)スカイダイビング」したとしたらどうなるのか。肉体を構成する原子も大気圏突入時の高熱に耐えきれず、結果的に「輝くプラズマ」となり、最後のきらめきでもって地球上の人々を楽しませることになるそう。そのあとどうなるのか。しばらくプラズマとして大気中を漂っていたのち、私の「孤独な原子核が新たな電子と巡りあい、再び完全な原子」となって地球上に降り立ち、史上最高のダイビングを終えた私(の原子)は誰かの体内に入りこみ、私はその先ずっと地球の歴史を見送ることができるかもしれないのです。こう考えると、私に死が訪れて私が死んでももはや私は死んでいないのです(錯覚)。

本書もワールドカップ観戦中に読むには最適だった。ひとつひとつの項目が簡単に読めるので集中力が続かない蒸し暑い時に読むものとしてはよいかと。ホラー小説のネタとしても使えそう。ただし、ホラーによくある「底なし沼」で人が死ぬ光景は現実では起こらないらしい。頭から飛び込むならともかく、足から底なし沼(流砂)にはまりこんでもヘソのあたりまでしか沈まないらしい。「底なし沼」の恐怖とは実際に沈むかどうかではなく、一度はまりこんだら抜けられず、じわじわと捉えた人を長い時間をかけて恐怖にひたらせるという、そういう装置としてホラーではまだまだ需要(?)はありそうですが。

(成城比丘太郎)


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