3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

幽霊人命救助隊 (高野和明/文春文庫) ~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年3月17日 更新日:

自殺者が幽霊となって100人の人間を救助

幽霊という題名だが、ホラーではなくエンタメ小説

まったく怖くはないが、面白い

おススメ度:★★★★☆

この本は上記の通り、設定こそ「幽霊」という単語が出てくるが、ホラーではなく、どちらかというと、ギャグ要素のあるファンタジー・ハートフルストーリーに近い。怖い本を探している方は、スルーして頂いた方がいいと思う。ただ、面白いのは確かなので、紹介してみたい。

あらすじ-受験失敗で自殺した主人公・裕一は、神様から「自殺した命の償いのために、幽霊になって100人の自殺者の命を救え。そうすれば天国に行かせてやる」と、言われ、同じ立場の他の二人と共に、自殺者の救助に奔走するというもの。時間制限つきだ。

まず、3人の幽霊のキャラクターが面白い。大学生、やる気のないOL、任侠ヤクザの親分。主に彼らの掛け合いで小説が進むのだが、純朴な青年Xやる気のない女X下品なヤクザのおっさん、という組み合わせで色んなパターンで笑わせてくれる。感動もする。

次に、多少ネタバレになるが、自殺者を助けるために、形のあるものに直接、触れたりはできない。ただ、自殺者を見分けて、心に働きかけることができる。具体的には「呼びかける」とすこし「反応がある」という程度だが、その力で自殺者を救う。例えば、リストラされて死にたい孤独なサラリーマンなどの対象を。

この小説の面白さは、その助け方に工夫があるところで、思わず笑ってしまうものから、しんみりさせるものまで様々だ。その助け方が面白く、最初の一人を助ける所を観たら、次も読みたくなると思う。全殺しを目的とする「バトルロワイヤル」とは逆の発想だ。

オチなどを期待する小説ではないが、楽しい展開で、非常に面白い。エンターテイメント小説としては完成されていると言っても過言ではない。ただ、何度も書いてしまうのだが、直接的なホラーではないので、ご注意を。

年間の自殺者は近年、2万人以上3万人以下で推移している。一方、先日の「殺人犯はそこにいる」のように、生きたくても理由もなく殺されてしまう人も多い。世の中は一体どうなっているのか、本当に良く分からない。自殺したくなる気分は分かる。誰でも落ち込むものだ。本当にそう思ったら止められない。でも、もし、身近に自殺を考えている人がいたら、何かできるんじゃないか、と思わせてくれるいい小説だと思う。

気軽に楽しんで、ちょっと考えさせられる、そんな一冊だ。

(きうら)


[楽天]


-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

バーナード嬢曰く。<1巻> (施川ユウキ/一迅社)

読書家(ぶりたい人)必読のマンガ。 本を読んだつもりになれ…いや、読みたくなる一冊。 こんな学生は、なかなかいないだろうな。 おススメ度:★★★★☆ このマンガは、去年アニメ化もされ、今さら取り上げる …

夏休みにおすすめする短編〔文学〕(成城比丘太郎のコラム-04)

夏休みによんでみてほしい短編 もちろん夏休みでなくてもよい 小学生から大人まで楽しめる怖くて暗くてイヤな短編 おススメ度:★★★★☆ ラジオの「夏休み子ども科学相談」というオモシロイ番組がある。科学に …

犬の日本史(谷口研語/PHP新書)

「人間とともに歩んだ一万年の歴史」 日本における犬物語 日本人と犬との関わり オモシロ度:★★★★☆ 【はじめに】 秋アニメで、『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』というミニアニメがある。内容は、 …

インスマスの影(H・P・ラヴクラフト、南條竹則〔訳〕/新潮文庫)

「クトゥルー神話傑作選」 妄想体系の始点 翻訳に多少の難点はあるけど、初心者向けのセレクト おススメ度:★★★★☆ ラヴクラフトのクトゥルー神話関係の傑作をあつめたもの。クトゥルー神話が誕生して100 …

水域(椎名誠/講談社)

怪しくも美しい水のディストピア 椎名誠史上、最高の抒情性 美しいラスト、SFファン必読 おススメ度:★★★★✩ この小説を読もうと思った方、それは正解だ。ハルキストがいるとすれば、私はシーナリスト。そ …

アーカイブ