3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

眼の壁 (松本清張/新潮文庫) ~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年2月17日 更新日:

  • 手形詐欺の真相を探る社会派エンターテイメント小説
  • 流麗な文章できわめて読みやすい
  • ちょっと強引なトリックと時代性のギャップを感じる
  • おススメ度:★★★☆☆

もはや説明の必要のないくらい「砂の器」「点と線」などで著名な松本清張氏だが、私はこの「眼の壁」で初めて氏の作品を読んだ。事前に「社会派サスペンス」等と紹介されていたので、結構気負って読んだのだが、それはあくまで設定の話で、中身は流れるような物語と流暢な語り口のエンターテイメント小説だ。

<あらすじ>銀行で行われた巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺の責任を取って自殺した会計課長。その忠実な部下であった萩崎は、友人の新聞記者の手を借りて事件の真相を追っていく。やがてそれは、強大な組織悪と向かい合うことになるのだが、二人が掴んだ手がかりは次々に消えていく……。

とにかくその文章・構成の流麗さは特筆もので、最近読んだ小説の中で最も読みやすかったと言っても過言ではない。適度に伏線を張りつつ、小さな事件をいくつも起こしながら、決してぶれないストーリー展開は見事だ。「何となく読んでいたら、最終ページになっていた」そんな印象だ。

ただ、不満が無いわけでもなく、特に話の中核となるトリックが不自然だと感じた。私はミステリーマニアではないので断言はできないが、ちょっと強引な気がする。また、事件の起きた年代が昭和40年代なので、その当時の風俗は現代から見ると結構違和感がある。銀行に防犯カメラが無かったり、田舎の道路が舗装されていなかったり、警察の科学捜査力も低すぎるような気がする。流石に時代の流れを感じるが、面白かったので「点と線」「砂の器」等も読んでみたい。

蛇足だが、私の世代ではTVドラマの「特捜最前線」の再放送などをよくやっていた。何となくよく観ていたので、その映像が思わず思い浮かんでしまった。

(きうら)


眼の壁改版 [ 松本清張 ]


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

黒猫・黄金虫 (エドガー・アラン・ポー/新潮文庫)~概要と感想

クラシカルなホラー・幻想譚・探偵小説 名前だけ知っていて読んでいない系作家の一人 後世への影響力を垣間見る短編5つ おススメ度:★★★☆☆ 前日の記事が「乱歩と正史」というのは、全くの偶然だが、江戸川 …

ダークゾーン(貴志祐介/祥伝社文庫) ~感想と軽いネタばれ

人間将棋というトリッキーなテーマ 非常にタクティカルな展開、オチはまあ 貴志作品最強の飛び道具。将棋ペンクラブ大賞で特別賞受賞。 おススメ度:★★★☆☆ 刊行された貴志作品はほぼ読んでいるが、その中で …

最近読んだ本のことと、日本ダービーのこと(成城のコラムー65)

「コラム065」 迷信や俗信についての本。 東京優駿(日本ダービー)について。 オススメ度:★★★☆☆ 【最近読んだ本について】 ・今野圓輔『日本迷信集』(河出文庫) 本書は、1965年に出た本の文庫 …

事故物件7日間監視レポート(岩城裕明/角川ホラー文庫)

手堅い作りのJホラー タイトルまんまの内容 オチはイマイチ おススメ度:★★★☆☆ 為になる小説とそうでない小説は確かにある。その基準ははやり、大多数の人の評価だろう。そして、読みたい作品≠為になる作 …

最近読み終えた作品(2018年4月) ~黄色い雨/戦う操縦士

黄色い雨(フリオ・リャマサーレス、木村榮一〔訳)/河出文庫) 戦う操縦士(サン=テグジュペリ、鈴木雅生〔訳〕/光文社古典新訳文庫) 最近読んだ海外文学の感想です。 朽ちていく村と運命を共にする「私」( …

アーカイブ