3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

メドゥサ、鏡をごらん(井上夢人/講談社) ~ほぼネタバレなしの感想

投稿日:2017年2月25日 更新日:

  • コンクリート詰めで絶命した作家の死の謎を追う
  • 興味深い設定と読みやすい文章
  • ネタバレ嫌いの方は、一切の事前情報を絶って読って読むべし
  • おススメ度:★★★☆☆

導入部はこんな感じの小説。作家である藤井陽造は、木枠の中でコンクリート詰めで絶命していた。ダイイングメッセージとして自筆で「メドゥサを見た」と記したメモが残されている。そこで、探偵役となる娘とその婚約者は、死の謎を探るため、藤井が執筆していた原稿を探す。ただ、何かが微妙にずれている気がする…。

この興味を惹かれる導入部&不思議な導入部、そして読みやすい文章。読み始めると引き込まれることは必至だ。さて、この作品は、いわゆる大仕掛けが仕掛けてあって、それを事前に知っていると面白さがほぼ消滅する。初版が1997年ということで「パソコン通信」が出てきたり、作品がフロッピーディスクに入っていることに時代を感じたりするが、納得できるかどうかはともかく、作品に何か「衝撃」を求めるなら、読んで損のない小説だと思う。

ご存知とは思うが、メデゥサ(メドゥーサ/メディーサとも表記される)とは、頭髪が蛇で見た者を石に変える能力を持つギリシア神話の怪女。ネットで調べてみると、海神ポセイドンの愛人だったということで、本編とは関係ないが、ちょっとショックを受けた。ゴーゴン三姉妹の末娘で、確かドラえもんの道具として「ゴルゴンの首」として出て来た記憶がある。そういえば、映画「魔界大冒険」にもメドゥーサがいたな。

しかし、世の中には色々なことを考える人がいるもので、特にミステリ作家は人間の思考力と常に戦っているような気がする。時に人間の死が「パズル」化してしまうミステリは苦手だが、この作品はありだと思う。何より、ホラーとファンタジー好きとしては「メドゥサ」と来ては読まずにはいられない一冊だった。

(きうら)


メドゥサ、鏡をごらん [ 井上夢人 ]


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

神鳥―イビス(篠田節子/集英社)

「発狂する謎の絵」「過去の惨劇」などの魅力的な設定 個性的なキャラクター造形。好みが分かれる。 オチは賛否両論。文章は読みやすい。 おススメ度:★★★☆☆ 本作品の大筋は、古典的な怨念モノのプロットを …

孤虫症(真梨幸子/講談社文庫)

怖い、エロい、痒い 読みやすいが万人向けなテーマではない シモネタ系悪趣味パラダイス おススメ度:★★★☆☆ 体中にブルーベリー大のコブが出来る奇病が発生。その中には無数の寄生虫が……という設定で「う …

黒いピラミッド(福士俊哉/角川ホラー文庫)※完全ネタバレあり

とにかく強引に黒いピラミッド エジプト周りの描写はしっかり でも、結局…… おススメ度:★★★☆☆ (本の裏から転載)将来を嘱望された古代エジプト研究者の男が、教授を撲殺し、大学屋上から投身自殺した。 …

未来の年表2(河合雅司/講談社現代新書)

「人口減少日本」で起きること 前著の二番煎じでないわけではないが 高齢の方向けの本になっている おススメ度:★★★☆☆ 本書は、昨年度ベストセラーになったとされる『未来の年表』の続編。去年それを読んだ …

ホラー小説大全 ドラキュラからキングまで(風間賢二/双葉文庫) ~内容の紹介

文化論も含む硬質な欧米ホラーの概観 歴史、3つモンスター、おススメ本100冊の3つのパート ガイドブックというよりは、正統派の評論としての性格が強い おススメ度:★★★☆☆ 怖い本の紹介サイトで、さら …

アーカイブ