- 遂に妖精の王と謁見。キャスカの運命は?
- 完全にファンタジー回帰、しかも穏やか
- 内向的なストーリー展開
- おススメ度:★★★☆☆
(あらまし)数々の脅威を退けて、ガッツたちはついに妖精たちの王の住む島に上陸。敵と勘違いされて、様々な妨害を受けるが、ついにその島の最奥部に進み「花吹雪く王」との謁見へと臨むが……。キャスカが記憶を失ってから、恐ろしく長い時間が経ったが、ようやくその回復が望める所までやってきた。あんまり長すぎて、みんな目的を忘れているが、ガッツの目的は「キャスカの記憶の回復」と「グリフィスへの復讐」だ。この先どこまで続くかわからないが、とりあえず、この巻で最初の目的の目途が見えてくる。
前回、13巻までは傑作ダークファンタジーと評したが、その後、どうなったかと言うと、3巻程度はそれまでの余勢を駆って、魔物(使途)狩りが行われ、単純にアクションとしては面白いお話だった。潮目が変わるのは16巻で、その後のキーキャラクターの一人となるファルネーゼが登場する。彼女は最初は完全に敵として登場するのだが色々な変転を繰り返し、ファルネーゼの部下のセルピコや盗賊のイシドロなども加えて新たな仲間になっていく。そして、24巻でいわゆる「魔女っ子」シールケが登場して、漫画の雰囲気はダークファンタジーから「やや」ダークファンタジーへとトーンダウンする。
特にシールケが登場する辺りから、本来の持ち味だった「エログロ要素」は控えめになり、通常の冒険ファンタジー物の様相を帯びてくる。もともとパックという妖精が、コミカルなシーンを担当していたが、その雰囲気が全体に広がっていく感じだ。そして最新刊では、それらのキャラクターに加え、人魚や船長、貴族などガッツの仲間は「鷹の団」の頃に引けを取らないほどに増えている。しかも、作中でキャラクターが語っている通り、実に穏やかなストーリーラインになっているのである。
そこで問題としたいのは、もう一回どんでん返しである「蝕(しょく)」を行うつもりなのかどうか、ということだ。
13巻までの面白さは、まさに緻密に作り上げた世界をぶち壊すカタルシスにあった。その後は、そういった大きなカタルシスはない。あの時の衝撃がもう一度戻ってくるのかどうかが、今後最大の焦点となるだろう。ただ、心配なのは、作者にそういった「殺意」が薄れている気がする。現在登場しているキャラクターには、普通の漫画家が抱くような愛情を注いでいるし、もう一度、同じ場面を再現させるとは思えない。もっとはっきり言えば、ガッツに恋心を抱くファルネーゼとシールケを殺せるのかどうか? ということだ。この39巻だけではその辺は全くわからない。何か危うさはあるものの、そういう方向には進まないとは思うが、もしかしたら本当にやるかもしれない。
前回例えに出した「グインサーガ」と同じく、今のところ話の行く先は全く見えない。完全に予想になるが、作者の構想の三分の一程度しか消化していないのではないか? と、なると本当に完結しない可能性もあり、それだけが心配だ。お遊びシーンが多数あったので、今回の評価は★3としたが、ここまでの巻では★5や★4の巻も多数あるので、気長に物語に付き合える方は14巻以降も読んでみてはどうだろうか?
(きうら)