3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

ナイトランド(ウィリアム・ホープホジスン/原書房)※絶版本~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年4月9日 更新日:

  • 長編ファンタジーにホラー要素の加わった冒険譚
  • 得たいの知れない怪物のオンパレード
  • 愛する女性をおもいやる男の一途な想い。いい意味で
  • おススメ度:★★★★☆

イギリスの怪奇小説家ホジスンの最高傑作。舞台は未来の地球。愛妻を失った男が百万年後の地球に転生し、妻のイメージをもつ女性を救うために、化物どもが跋扈する「ナイトランド」へ一人足を踏み入れる。はたして女性を救出し無事帰還を果たせるのか。

百万年後の地球は滅亡の危機にあり、化物から身を守るため人類はピラミッド型の建造物に引きこもり暮らしている。主人公の男はテレパシーで交信した女性のいる、もうひとつのピラミッドに赴こうとするわけだが、ピラミッドの外は危険地帯。魔獣や魔人や悪霊や巨大ナメクジなど、不気味な生物がうようよ。

男は単身それらに立ち向かうわけだが、マンガアニメの『進撃の巨人』でいう壁外調査を一人で行うようなもの。それがどれだけ恐ろしいか分かるだろうか。分かったならいいけど。(この作品にも巨人が出てきますが、そいつらはあまり動くことなくじっとピラミッドを見張っているのみ。こっちの方が不気味だ)

男をそこまでさせる動機は、ただ愛する女性に逢いたい、救い出したいという思いのみ。読者は、襲いかかる脅威の連続に立ち向かう男と共に、あやうい冒険へとひきこまれます。
しかし、後半は愛する人を思いやるシーンの連発、ラヴロマンスに次ぐラヴロマンス。これが書きたかったのかよ作者は。私は後半部分を読んでいる間、頭の中で下世話ながら「Feel like makin’ love」の曲が流れまくってました。

残念ながら絶版なので、図書館などで借りて読んでもらうしかないです。ちょっと冗長な所もありますが、大作ファンタジーが好きな人には是非ともお勧めしたいです。

(成城比丘太郎)

編者注:絶版本なので中古が高すぎるのでご注意を。本当に図書館で探してください。~「営利誘拐なら協力せんぞ」「商売抜きだぁ」(カリオストロの城「ルパン」と「銭形」の会話より抜粋)


-★★★★☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉 (スティーヴン・キング (著)/風間賢二/角川文庫)

相変わらずの超展開ファンタジー ロクでもない仲間ばかり集まる 物語の行方は全く見えないまま おススメ度:★★★★☆ 第1巻では、西部劇風の架空の世界を舞台に、華麗にガンマンとして活躍するローランドの姿 …

拝み屋郷内 花嫁の家拝み屋(郷内心瞳/MF文庫ダ・ヴィンチ)

「拝み屋」を営む著者の実話怪談集 魅力的な登場人物と秀逸なストーリー 単なる実話系会談集の枠を超えた傑作 おススメ度:★★★★☆ 憑き物落としや安全祈願などを生業とする拝み屋を営む著者が、自らの奇怪な …

杳子・妻隠(古井由吉/新潮文庫)

世間から閉じこもりがちの、一組の男女の奇妙な恋愛。 病の物語といえる。 匂い立つようなエロスが少々。 おススメ度:★★★★☆ 『杳子』は、古井由吉の芥川賞受賞作品です。粗筋としてはこれといった複雑なも …

忘れられた巨人(カズオ・イシグロ[著]・土屋 政雄 [翻訳]/ハヤカワepi文庫) ~あらましと中程度のネタバレ

竜も騎士も出てくる正統派ファンタジー 戦争と平和、死と復讐への意味深な警鐘 スロースタートだが面白い読み物 おススメ度:★★★★☆ 世の中には「にわかファン」という言葉があって、例えば本のジャンルで、 …

老人と海(ヘミングウェイ/新潮文庫) ~ややネタバレ

老人の孤独と葛藤と後悔 残酷で痛ましい それでも人間の生命力を感じる おススメ度:★★★★☆ 先ごろ、何かのネットニュースで「読まなくてもいいアメリカ文学」という恐ろしく下らない企画で腐されていたのが …

アーカイブ