前置き
選挙と台風で始まった一週間。私の郷里では、川が氾濫したが、昔から「氾濫慣れ」している地域なので、実家の母に聞くと「いつもの所に水が突いただけ」とのことで、却って落ち着いていた。子どもの頃は、車が通られるような橋が洪水で破壊されたり、家の前の道に濁流が流れたり、中々スリリングな地域だったが、ダムができてからは酷い被害はないらしい。確かに、上記の惨状は小学校時代だけだった。普段降らないところに大雨が降ると危ないのだろう。それでも、被害にあわれた地域も多いと思うので、心より早くの復興を願いたい。
そう言えば、昔住んでいた家は川(一級河川)から直線距離で50mもなかった。堤防もなかった。自転車で川を渡ろうとしたり、河原に子供の身長くらいの落とし穴を掘ったり、ダムを作ったり釣りをしたり、楽しい思い出しかない。そう、私は川の民と呼んでいい(?)のではないか。今でも川の流れる音を聞くと、気持ちが落ち着くのであった。
などと、またもや脇にそれた前説は置いておいて本編へ。
先週の記事
2017年10月
22日 谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 ★★★★ S
23日 この一週間を振り返って(2017年10月15日~10月21日)
24日 メイド・イン・アビス ★★★★ K
25日 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(12) 評価不能 S
26日 忘れられた巨人 ★★★★ K
27日 タタール人の砂漠 ★★★★ S
28日 ヒストリエ(1) ★★★★ K
総評
先週もホラーというよりは、ファンタジー要素の強い一週間だった。アニメが1本、漫画が1本、小説が4本だが、全体の評価は高く、評価不能を除けば全部★4つなので、ホラー要素が薄くても良ければどれを読んでも(観ても)損はしないはず。その中で異彩を放つ、耽美主義派の谷崎潤一郎から一週間はスタートした。マゾヒズム作品集というだけあって、強烈な印象を残す一冊。耽美とは何たるかを感じられるのではないだろうか。その他、ラノベや文学、岩明均の歴史漫画もあったが、旬という意味ではカズオ・イシグロ氏の忘れられた巨人か。これは今週の一冊で取り上げてみたい。成城氏の読んだ作品は深い作品が多いので、タタール人の砂漠などもおススメ。ラノベは興味があればというところ。
今週の一冊
忘れられた巨人(カズオ・イシグロ[著]・土屋 政雄 [翻訳]/ハヤカワepi文庫)
ノーベル文学賞の波に乗って(調子に乗って)読んでみた一冊。恥ずかしながら、初めて著者の作品に触れた。率直に言うと、ど真ん中直球の重いファンタジー小説を読んだという深い感慨。まさか、ここまで完璧なファンタジーだとは思わなかったので、むしろ意表を突かれたような気分だ。いわゆるハイ・ファンタジーに興味がある方には一読の価値あり。逆にハリー・ポッターなどの楽しい現代ファンタジーを期待されると重すぎるかもしれない。ファンタジーと言っても様々なジャンルがあり、この作品はファンタジー文学でもあるので、単純な娯楽性だけを追っていない。だからと言って身構えるほど読みにくくもない。凡庸な感想だが、色々と考えさせられる物語の展開をする。ファンタジー好きなら、霧に包まれた幻想的で怪奇な世界の旅へ、ぜひ、一度旅立ってみて欲しいと思う。私はもともとファンタジーで読書に目覚めたので、大変楽しい読書体験だった。また、自分でもファンタジーを書いてみたいと思った。
(きうら)