- 著者が取材した実録系怪談集
- 「呪い」や「憎しみ」が主なテーマ
- 短い区切りがあり読みやすい構成
- おススメ度:★★★☆☆
著者が過去に発表した<「超」怖い話> シリーズ6篇から選んだエピソードに短い書下ろし3篇を加えた実録系怪談集。リンク先の説明を見るとわかるが、著者は基本的に「取材」を行った上で本書を執筆しており、又聞きや創作を行っていないスタイルが「売り」のようだ。タイトルからも分かるように、過去の著作の傑作選なので、新刊として出すのが気が引けるのか、前書きの副題が「本書を買ってはいけません」となっているのには笑った。
さて、内容は実録ものらしく、登場人物や時代設定もバラバラだが、全体的に「呪い」や「憎しみ」といった人間の負の感情がベースになっているものが多い。種類は様々なだが、それらが著者が取材をした人々に災いを為す、という構成の話がほとんど。ただ、実録ベースだけに明確なオチがつかなかったり「これは死ぬな」と思った登場人物が死ななかったり、エピソードはバラエティ豊かだ。その辺をリアルと取るか、物足りないと感じるかは読み手次第だろう。
印象に残ったのは、親友とのトラブルをテーマにした二つの連作、「機縁」から始まる会社の同僚との話と、「穏」から始まる結婚前の女性同士の愛憎を描く話だ。ともに親しい間だからこそ起こる憎しみと切るに切れない「縁」の恐ろしさが描かれている。誰でも起こり得るシチュエーションというのがポイントだ。他にも、この本には連作物も多く、短編と程よくミックスされている。数は少ないが人情話的なものも混じっている。
怖いというより「不条理だなぁ」とか「気持ち悪いことだ」と思うことが多かったが、読みやすい文章で、短い区切りがあるので、こういった怪談集が好きな方なら満足できる内容ではないだろうか。
蛇足になるが、2017年1月15日現在Amazonの「Kindle Unlimited(本の読み放題)」に対応しているので「Amazonプライム」に加入していれば無料で全編を読むことができるので、もし加入している方であれば下記のリンクから気軽に読んでみてほしい。
(きうら)