★★★☆☆

東京伝説―狂える街の怖い話 (平山 夢明/竹書房文庫)

投稿日:2020年8月4日 更新日:

  • 少し古いが現代怪談集
  • 幽霊その他が出てこない「人」の怪談
  • 狂気がテーマか
  • おすすめ度:★★★☆☆

サイコホラー小説が大好きという知人に勧められて、とりあえず読んでみた作品。2003年に刊行されていると奥付にあるので、結構古い怪談集だが、あまり古さは感じなかった。

タイトルがあって短い起承転結が続くいつもの実話系短編怪談集だが、大きな特徴として、幽霊・亡霊・呪い・宇宙人など、スーパーナチュラルな要素が全くないこと。逆に言えば、人間の狂気のみがフォーカスされていて、なかなか珍しい作品集になっていると思う。

「まえがき」からも脅かすように、著者が見たという「2Lペットボトル3本を3歳児に持たせる母親」「人を撥ねても自分の車の心配をする男」「婚約者のベッドの下に小学生用のスクール水着を見つけて苦悩する婚約者」などが書かれていて、「このように世の中は狂気に包まれている。始まり始まり」というようなイントロダクションになっている。

以下、ネタバレ抜きで簡単に内容を紹介するが、短い話なので興味があれば、そのまま読んでもとりあえず損はないと思う。個人的に「それは創作か盛ったやろ」という話もあったが、一応楽しめるのではないだろうか。ちなみに、「東京伝説」のシリーズ本は結構出ていて、私が読んだのは2冊目に当たるようだ。

「五分間の人」ある暗がりにいた男は、あることでもう……グロテスクなイメージ「お道具」「イマーゴー」はおクスリ関係の怖い話。やっぱり人間やめますかになるのか。イマーゴーはファンタジー? 「混ざられて…。」のテーマは嫉妬か。まあ結構印象的なエピソード。リア充死ね系。

「あいのり」はある気の毒なタクシーの乗車体験。恋愛は関係ない「男の純情」はちょっと懐かしい感じの猟奇風味がある。風俗が部隊。「出会い系」「おつかれ割引」は頭のおかしい人の話「ハンモック」はよくあるアジア系犯罪物の雰囲気がする。「日本専用」そのハンモックを受けての話だが、ちょっと都市伝説っぽい。「確認」は変になった恋人の話だが、俺はこんな異性と付き合っていたら速攻分かれるぞ。「マザコン」「アベちゃん」は単なる素行の悪い人の怖い話だ。まあ嫌な気分にはなられる。「うれしくて…。」はこのパターン、怪談で何度も使いまわされている。読めば一目瞭然のはなし。

この辺で半分くらいだ。

「首」「家族後」「パンチ屋」「駐車場」「当たられて…。」は全部、ちょっとおかしくなってしまった現代人を風刺しているような感じもするが、創作っぽい雰囲気も感じる。17年前とはいえ、さすがに「パンチ屋」はないんじゃないかな。昭和じゃあるまいし……。「当て逃げ」「踏切」は死にたい人間に道連れにされかける話。

「試されて…。」「犬女」は再びドラッグ系。どうもどこかで読んだような懐かしい感じの作風。関係ないけど、こうやって列挙していると、著者は「…。」が気に入っているんだな。「視線」「右か左か?」は変質者の話、ありそうで「ない」かなと思わせられる微妙な話だ。「壊れるんです…。」は怖くはないが哀れな話。でも、どこか作った臭い雰囲気が話の中にあふれている。多分、アイデアはいいんだけど、ディティールが甘いので「それはないやろ」と思ってしまうのだろう。

「実験」「預かられて…。」は結構な大事件な気がするのだが、結局、何事もなかったかのように元に戻っているのが怖い。「スーパー・エリート」は少し毛色が違って、哀れな妄想家の顛末。うーん、いるかな、こんな人。確かに、東京「伝説」であって実話とは書かれていないから、創作なんだろう。「ATM」「リサイクル」はアイデア勝負のネタで怖くはない。だんだん創作っぽさが濃くなってくる。

「爆弾」は完全にそりゃないだろうという、滑稽な食い逃げ犯罪の話。話としては面白いが、これはさすがにニュースになるだろうし、繰り返しできる犯罪じゃない。「ニューハーフ」「愛されたくて…。」は人間の業というか、そういう部分が強調されている。それにしても作者はドラッグがらみの話が好きだな。私も嫌いじゃないが。最後はけっこうグロい。「夕立」はまあ、こんなこともあるかも知れないという程度の自己の話。「バイト」「卒業旅行」は海外での誘拐・殺人がらみの話だが、こういう映画「ホステル」風の一般人が迷い込んだら、大迷惑系の話も多いね。「同居人」は乱歩の「屋根裏の散歩者」といえばネタバレになるか。

ラスト2篇「プリンのおじちゃん」「万引き屋」は後味をよくするために、人情噺が盛り込まれている。まあ、こんなこともあるでしょう。「プリンのおじちゃん」なんて、いろんな小説や漫画で同じ場面を見た気がするが……。

などなど、どうも批判的になってしまったが、心霊系怪談集に食傷気味の方にはぴったりな清涼剤(?)的な「ヒトってこわーい」というお話の集まりでした。

これを真に受けるような年齢でもなくなったので、妙にほのぼのした気分で味わった一冊だった。もう一冊くらいはシリーズを読んでみたい。暇つぶしにはぴったりだと思います。

(きうら)


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