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コラム 特になし

進行方向、あるいは信念または正義を感じる通勤

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  • 人間が争う単純な原理
  • イーロン・マスクから国際紛争まで
  • 地下の世界から世界へ
  • おすすめ度:特になし

最近、面白いほど面白いことがない。世間は暗いニュース、賃金は変わらず、年ばかり重なっていく……。

そんな閉塞状況に陥ると、不思議とどうでもいい日常の中に変化を感じるようになる。

私にとって通勤途中での改札へ至る人の流れがまさにそれだった。若い頃は何も考えなかったこと。

退屈な私は通勤電車でいかに効率よく改札を通過するかを考える。どうやったら最短距離で歩けるかを考える。舞台は関西のメトロ。

まず、全体を見渡す。経験則からある程度、人の流れは予想できる。

例えばスマホを見ている人間は前にスペースがあっても歩くのが遅い、柱の影から突然人が飛び出てくる、混雑を避ける為には待つことが有効なことなど。

行動学の初歩だろう。私はそれを考慮に入れて改札口への数百メートルの最短距離を探そうとする。ところがこれほど注意を払っていても、人と接触することもあるし、前後を塞がれて早く歩けないこともある。

なぜだろう?

おそらく、私の予想の範疇を超える思考をしている人間がいるか、何も考えていない異分子がいるか、同じことを考えて衝突するかだろう。

私にとっての最短距離は、誰だか知らない人間の最短距離でもあるのだ。なるほどな、と思う。単なる通勤でさえこのような衝突が発生するのだ。

この通勤の行動原理は、信念と呼ばれるものや、政治や思想と同じだろう。

私にとって最低な「歩きスマホ」は、その人にとっては束の間の安らぎであったり、大切な人の安否だったり、ゲームの時限イベントだったりするのだろう。

私からすればそんな事情は知らないので「歩きスマホ」に一括りにして、避けて歩くのに苦労する。

一方「歩きスマホ」からすれば、私は「最短距離を突進してくるオッサン」であり、「そんなスピードで歩くと危ない」「私には急ぐ必要はないのでスピードを優先されても困る」と思っているかも知れない。

話は一気に飛躍するが、これが立場の違いである。ロシアとウクライナ、中国とアメリカと日本、与党と野党、インボイスをやりたい官僚と個人事業者、自民党と統一教会、イーロン・マスクと従業員、公務員と派遣社員、若者と老人、サッカーファンと野球ファン、撮り鉄と乗り鉄と乗客、うるさいバイクと静かなバイクと関係のない人間……キリがないので止めるが、あらゆる分断は自分の一人称視点が正しいと思うことが起点になっている。要は自己肯定は本能に近い。

人類はこの問題に対処する為に様々な知恵を絞った。民主主義、法律、国際同盟などはその際たるものだろう。

人間は対立するより協力する方がより力を発揮するのも真実だ。アインシュタインが天才だとしてもそれをフォローする人間が0なら何も成し遂げられなかっただろう。

……正直、対立することに疲れてしまった。対立を見るのもとても悲しい。戦争や暴力を見るのは嫌だ。疫病で苦しむ人も見たくない。弱い立場の人がより弱い立場の人間を攻撃している。そういうのはもういいんだ。

とはいえ、私のこの主張が誰かの不機嫌を誘うこともわかっている。世の中に不条理はなくならない。
諦めるか、そうしないか?

アフガニスタンで医療と灌漑事業に人生を捧げ、凶弾に倒れた中村哲医師の言葉を最後に引用したい。

「良心を束ねて河となす」
「命がけで不条理に一矢報いる」

世界の大富豪と企業と国家が「分け合うこと」を一斉に始めたら、世界中の幼い瞳が目を覚ますかも知れない。

(きうら)


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